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対談:見えないものを探す
対談人物(F:俺、A:安部ちゃん)
F:この対談も二十夜目になるんで、第1シーズンは今夜で締めたいと思うわけよ。
A:あら、そうなんですか?そろそろネタが尽きる?
F:うーん、それと他のこともしなきゃあってのが半々かなあ。あと、考えられるネタ群が、どーもマイナス方向になりそうなのばかりで、それもみんなの精神衛生上良くないなあ、って思ってね。
A:意外に常識的ですね。例えば?
F:流行りのSDGsって、今の快適生活の持続可能性を前提にしてて、本当に大丈夫?贅沢すぎねえ?とかね。
A:確かにマイナス方向になりそうっすね。難癖っていうか。
F:ただまあ、人間の妄念なんてまたすぐに溜まるだろうからな。数日後に第2シーズン開始なんてこともあるかもしれないな。まあ、惜しまれている時に、一旦、閉じるのはありかな、と。
A:誰か惜しんでいるんすか?
F:分からんよ(笑)。世の中、変わった人は一定の割合でいるからね。そーゆー人は、ひそかに惜しんでないで、コメントをしてほしいけどね。
A:いないでしょうね(笑)。で、「見えないものを探す」って、何すか?思わせぶりな感じがありますが。
F:俺は大学時代、専門の学業に励むかたわら民俗学とか神話学とか心理学とか色々読み漁ったんだけどね。大学図書館や部室に住んで。君、岩田慶治さんの本とか読んだ?
A:何か読んだ気はしますが、あんまり記憶はないっすねえ。アニミズムがどーとかですよね。
F:ざっくりした記憶だな。年齢的にボケが来てんじゃねえの?
A:あなたに言われたかないですけどね。で、岩田さんの話なんすか?
F:そーでもない(笑)。てか、岩田さんの本の中で、東南アジアのピーっていう神様っていうか、精霊っていうか、そういう存在がいることを前提にした生活とか祭りとかの話があったのよ。
A:アニミズムど真ん中、って感じっすね。
F:そうそう。で、日本だって、擬似西洋でございってお澄まししてても、そういう文化圏内だよな?地域的なグラデーションはあるかもしれんが。
A:そういう感覚にうなずける部分はありますよね。
F:うん。で、考えたのが、こういう地層が重なったような感覚って、そうそう消滅するもんじゃあないよなってこと。じゃあ現代日本人は、こういうカミ感覚に、どのような形でつながっているのか?ってことだ。目に見えるものばかりじゃなく、目に見えないものにつながってるって感覚、必要でしょ?そういう感覚は、精神生活に厚みとかパワーを供給するもんだしね。
A:なんか面倒くさそうな話っすね。
F:第1シーズン最終夜だからね(笑)。格調高く行きたいわけだ。
A:目に見えないカミ的なものたちが実在する、って感覚っすよね?世代にもよりますかねえ。
F:世代はあるとは思うよ。ポケモンとアニミズムがどーとかいう記事は読んだことがある。
A:それ、私も読みました。まあ、普通にアリな論理展開でしょうね。ざわざわいる聖霊的っていうか。
F:君、ポケモンGoって、やったことある?
A:やりましたけどね、すぐ飽きちゃってアンインストールしました。
F:あの頃、やたらスマホ持ってうろついたり立ち止まったり、集まったりする人々っていたよな。俺はやらなかったけど。今でもあるんだっけ?あれ。
A:あるみたいっすね。
F:何が面白いんだろうね?
A:何か、レアなキャラをゲットした、みたいな高揚感、すか?
F:ふーん。それってアニミズムなんだっけ?
A:イコールじゃあない気はしますが、アレが成り立つベースとして、カミ感覚みたいなものはあるかもっすね。
F:目に見えない世界があって、そこからポケモンっていうカミたちが立ち現れてくる。それを自分のスマホに招来する、って感じか。
A:電子的な話で言ったら、Webへのアクセス自体にも、そんな感覚が弱く働いているかもっすね。
F:いるよねえ。高校生くらいが坂道の途中で自転車とめて、スマホ見てるのって。あれも、この退屈な空間ではない「ここではないどこか」にアクセスしたい感みたいなのが働いているのかもしれんね。おじさん悪かったなあ、「ああ、不憫な子だな」って横目で見て通り過ぎて。
A:Web広告とかは、さしずめ神社の祭りに出てくる的屋さんみたいなもんっすね。
F:おっ(驚)。
A:何すか?
F:いや、考えていたわけだ。若い人たちはポケモンとかゲームとかでカミ感覚につながってる、と。お年寄りは、こう言っちゃあなんだけど、「もうすぐ向こう側に行く」っていう自覚で、カミ感覚への通路が開いてる、と。
A:また怒られそうなことを………(困)。
F:じゃあ壮年の人たち、ゲームとかにはハマらない、死期を実感するほどの年齢でもない現代日本人たちは、どんな形でカミ感覚につながっているんだろうってな。そこで、だ。仮想通貨なんてのはどう?
A:そー、来ましたか。
F:俺は投資とかに疎いし、胡散くさそう面倒くさそうで手を出してないけど、あれって大人のポケモンGoみたいなもんじゃね?どっかの対談でも話したけど、こっちとあっちを行き来する「何か」って、貨幣なんかモロ、そういう存在なんだよな。だから一部の大人は仮想通貨ポケモンをゲットして喜ぶわけだ。どっかのタレントが大損こいたって話あったよね。祭りのときのいかがわしい店で騙される残念な人っぽくね?仮想通貨が機能する場には、古来からのカミ感覚が働いていると。おっ、「カネ=カミ」か。
A:(笑)それはさすがにこじつけでしょう。
F:分からんよお。語源とか調べていったら、案外、「カネ=カミ」てな関係を掘り当てたりするかもよ。
A:でも、善かれ悪しかれ仮想通貨にも手を出さない、Webにはまらない、ゲームもしないっていう大人は、どうやってカミ感覚につながっているんでしょうね?
F:昔ながらのつながり方をしている人もいるんじゃない?神社とかパワースポット巡りとか、家庭菜園とか犬猫飼うのだって、ある種、カミ感覚とのつながりになるんじゃないの?で、そういう趣味自体ない人って、ちょっと危うい気がするなあ。元気のない中高年は、積極的に「見えないものを探す」べし、だな。
A:我々みたいっすね。