生き物触るの苦手な話
私は猫派である。
もふもふした動物はみんな可愛いと思うのだが、やっぱりどうしたって猫が可愛い。
鳴き声からして良い。にゃーおってなんだ、可愛いな。子猫がミーミー鳴いてるのも良い。なーおって低めに鳴く貫禄のある猫も良い。
ギロりと睨む目も可愛い。首元を掻かれてうっとりと目を閉じているのも可愛い。なんなんだ、あの表情……
尻尾のふんわりとした動きもいい。パタパタ動くのではなく、しなやかにゆらゆらとしているのを見てると「ぐぅっっっ!!!」って蹲りたくなる。もはや病気だ。
そこら辺歩いてたと思ったら脚に体を擦り付けてくるのもいい。
すました顔してたのに、ちょっとおもちゃを振っただけで飛びついてくる姿もたまらない。
ふわふわした毛並みも……とにかく良さを挙げ出したらキリがない。
ただ、私はどうにも動物に触るのが苦手だ。こんなに好きなのに、いざ触るとなると心臓がバクバクする。
少しでも強く触ってしまったら内蔵吐き出しちゃうんじゃないか…とか思ってしまう。逆に落としてしまったら……とか考えてしまったりする。どの程度の力加減がいいのかさっぱり分からない。世界がこうなる前に何度か猫カフェに行き、かろうじて撫でることは出来るようになったが、抱えるのは絶対に出来なかった。この手に命が預けられているのだと思うと恐ろしくてたまらない。
私は人に触れるのも苦手だ。潔癖とかではないし、ましてや猫のように「壊しちゃうかも!」とか思うわけではない。触るのがあまりにも申し訳ないと思ってしまうのだ。
申し訳ないってなんだ?と言われたら私にも分からないのだが、とにかく「私に触られるなんて嫌だろうなぁ」と思ってしまうのだ。ほとんど確信と言ってもいいぐらいの強さで私はこう思っている。
多分、子どもの頃にそういうようなことを言われたことが後を引いているのだと思う。普段はそれを意識してはいないのだが、人に触れなければならない時にほとんど自動的にその光景が頭に浮かぶ。フラッシュバックほど強くはないが、嫌な顔をした同級生の顔は鮮明に思い出せる。
食べかけのアイスを交換し合いっこしてる時に、私のだけその子がやたらと嫌がった、という記憶なので触れたわけじゃないのだが、「私って汚いんだろうな」と思った。当然、食べ物の分け合いっこは今でも苦手だ。(私が自分の頼んだもの全部ちゃんと食べたいというのもあるけど…)
とにかく私は未だに人に触るのは苦手で、女の子特有のベタベタした感じで来られるとほとんど息を止めてるみたいな状態になる。頭の中が「ごめんなさい」でいっぱいになる。人を触る資格のない者、と思っている。家族ですら、たぶんいま触れと言われたら心臓が痛くなる。
ただ、夫は別だ。触っても受け入れてくれる存在だとちゃんと認識している。他の人に触れない分必要以上に触ってる気がする。ムカつくことは沢山あるが、私が気兼ねなく触ることの出来る人間というだけでもう特別なのだ。無条件で受け入れてくれるだろうと思える人がいて良かった、と思う。
なんで急にこんな話になったのか自分では分からないけど、とにかく私は生き物に触ることが苦手である。だから、私は頭の中で1匹の猫を飼っている。真っ黒で、足元だけが白い靴下にゃんこだ。「なーご」と低めの声で鳴くので「なご」という名前をつけている。家の中を走るのが好きで、気まぐれに足にすり寄ってきたり、丸まって眠っているのが可愛い。……実体はない。
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