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【シリーズ1】ドクター・フー感想:5話目【9代目】

初めに。この記事はとにかくドクター・フー 新シリーズ1の感想をゆるっと語るだけのものです。深い考察や裏情報・昔からの根強いファンが書いたものではありません。『ドクター・フーおもしろ!他の人の感想も読みたい!』と思ってググってみても、なかなか探し当てられずもやもやして、仕方なく自分の感想を吐き出すことにした次第です。どこかにシリーズ1の感想を書いておられる方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください。読ませてください。よろしくお願いします。 

・World War Three
 邦題「宇宙大戦争の危機」

 絶体絶命の前回の引きから、後編の始まり。
 宇宙人専門家の皆さんと密室で謎システムのIDカード経由で謎の殺人波動を浴びるドクター、首相官邸内でスリジーンに襲われるローズ&ハリエット、自宅のキッチンで追い詰められるジャッキー……と、三者三様に大ピンチ。
 しかしドクターは人間(地球人)ではないということで、ビームも何とか耐え凌ぎ、なぜか動きもせずにその場に突っ立っていた(たぶんドクターが死ななかったから驚いて戸惑ったとか?)スリジーンAにIDカードをお返し。結果、自らが用意した兵器でめちゃくちゃダメージを受ける羽目になるスリジーン一家。ここでめちゃくちゃ謎というか意味不明で笑ってしまったのが、一人がダメージを受けたら残りの二人も同じようにびりびりしちゃうこと。なぜ!?(笑)その場にいるもう一人はまだしも、同じ邸内にいるとはいえ離れた場所にいるマーガレットにまで効果があるという驚き。スリジーン一家は感覚共有しているの?何のために?突然やらしい要素出してこられても、あのビジュアルで興奮できるほど上級者じゃないんだ勘弁してくれ。
 後のシーンで、仲間が死んでもそれがわかるという描写があるので、本当に感覚共有がなされているよう。ということはこの攻撃を受けた瞬間、各地に散らばっているその他大勢のスリジーン一家も全員びりびりなっていたのかと考えると、もうさらに面白い。

 この冒頭から前半はずっと、ちらちらユーモラスで思わず噴き出してしまうようなシーンが散見される。大慌てで脱ぎ捨てた人間の皮膚を着直そうとあたふたするスリジーンたちや、反撃に転じようと声をかけて招集してきた軍人さんたちが結局一斉に敵に回るドクター、官邸内でのモンスター鬼ごっこなどなど。真剣なシーンなのにくすっとしてしまう。山ほどの銃に囲まれてもあの胡散臭い笑顔を保ったままのドクターは、さすがドクターとしか言えない。
「誰だ?」
「ハリエット・ジョーンズ議員!」
「よろしく」
「こちらこそ」

 この、緊迫した場面でのドクターとハリエットの妙に軽やかな会話とか、実に小粋でアメリカーンなやり取り(アメリカじゃないけど)で楽しくて好き。

 しかしこの絶体絶命の段で、ハリエットが咄嗟にローズを庇って『殺すなら私を!』と飛び出すのが、彼女の人間性、心の気高さを表していて凄く好き。とてもできないよこんなこと。


 場面変わってタイラー家。
 間一髪のところでジャッキーを助けるミッキー最高~~~!!!娘を殺した犯人だと一年間も疑われ憎まれ誹謗中傷され続けていた相手を咄嗟に助けるあたり、やはり彼も心根が強く高潔ということが窺えます。本人は自分のことを『(ドクターやローズのように)タフじゃない』と評しますが、そんなことはないんですね。ミッキーには有事の際の行動力がありますし、精神的にも肉体的にもどんどんタフになっていく。このミッキーの成長譚が、シリーズ1以降の展開も含めて魅力なんですよね。

 さて、逃げ込んだ閣議室で状況の打開策を探すドクター&ローズ&ハリエット。このトリオは、緊急事態ということもあってか実にチームワークが良くて、打てば響くようなキレキレのやり取りを交わすのが視聴していてとても気持ちがいい。
 その際、死んでしまった秘書官に対して『すまない』と謝るドクター。その点に関して彼に非はないはずなのに、物言わぬ亡骸に向かってそれでも謝罪をするところに、ドクターの情の濃さが見える。
 『宇宙人のスリジーン一家』という非日常の極地に位置する存在・単語も、あっという間に受け入れて自ら口にしてしまう自分に呆れるハリエットだけども、彼女のこの柔軟性と度量の大きさあってこそ、後の首相という立ち位置があるのだなあとしみじみ思う。

 後編はスリジーンの正体や目的、散りばめられていた謎や伏線がスピーディーに回収され、首相官邸に閉じ込められたドクターチームと、民家である自宅でパソコンを使って最大限のサポートをするミッキー&ジャッキーチームの連携がとても面白い。心象最悪のドクターが二人に助けを請い、またドクターの信念や行動力・有能さを電話越しのやり取りではっきりと確認したミッキーとジャッキーが、相手への印象を少しばかり変える流れも美しい。自分の意思に関わらず、共に力を合わせピンチを乗り越えれば、どうしたってある種の一体感と仲間意識が生まれるもので、それが絆になっていくんだなあ。その関係が後々にドクターを救う一助にもなるわけで。この積み重ねがとても尊い。


 スリジーンの目的は核ミサイルの発射で地球をバラバラにして、そのショーを見学。さらにはそのピースを燃料にして大セール。大儲けうはうはやで!
 地球に対する軽視が止まるところを知らない!

 この危機に対して、打つ手はあるもののローズを危険に晒すかもしれないと躊躇うドクター、絶対にやめてと懇願するジャッキー、やってよと命運を託すローズ、そして私が決めます(責任を取る)と言い切るハリエット……。役者さんの演技も相まって、それほど激しいシーンではないはずなのに緊迫感が凄い。
「やってよ」
「……何をするか知らないのに?」
「やって」

 言葉少なくとも、ドクターとローズの信頼関係の強さ、言葉にせずとも相手を信じている様が如実に伝わってきて、数度の冒険で如何に二人にとって互いが特別な存在になり始めているかがわかる。
 またこのシーンも含めて、有事の際に決断し、自らが損をすることも厭わず、生き残った後もすぐさま『なにか手伝えることがあるかも!』と勇んで駆け出していくハリエット、人間的に素晴らしくて堪らない。

 最終的に、ミッキーに一生分の犯罪を犯させてなんとか核ミサイルの発射を防ぐことができました。
 生きて戻ってきた娘を抱きしめるジャッキーの目が、涙でもううるうるきらきらしてる。ローズの命が失われていても全くおかしくない場面だっただけに(ミサイルを首相官邸にぶち込んでスリジーンを一網打尽にしようぜ!とか、横で聞いていたら頭おかしくなる)、本当に生きた心地はしなかっただろうな。もちろんそれはミッキーも同じ、むしろ発射ボタンを押す超絶嫌な役回りを充てがわれた彼のほうが、不安と恐怖で死ぬ思いだっただろうな。一歩間違えば恋人も大勢の人間も殺したテロリストになるわけで。その仮定だけでぞっとするし、ローズを死に追いやったという一生消えない重責を抱えるところだったわけで。これをやり遂げただけでも、ミッキーの胆力がわかるってもんですよ。

 ターディスからのコールはきちんとブルーボックスのマークが出るの無駄に細かいこだわりで好き。

「嫌なら残れ、君が決めろ」
 9代目がしばしば口にする、かなり突き放したつっけんどんな台詞。キラーワードというべきか、これを言われるとローズもなかなか反論できないので、酷くて狡い言葉だと思う。ぽいぽい言うんだもんなあ。おまけに今からまた超スリリングで魅力的な冒険に行くんだぜとにおわせるところも狡い。
 しかしそう言って電話を切った後、ほんの一瞬ではあるけども眉をぐっと上げて考え込むような表情を見せたところに、ドクターのローズに対する特別な親愛と執着が見える。一生懸命、あまり情を移さないように・肩入れしないようにと一線を引こうとしているのは窺えるけど、もうすでに彼女を手放したくない・離れたくはないと思っているんだよな~(意識・無意識かはともかく)

 ドクターの狡い手に抗えず、再び冒険の旅に向かう準備を始めるローズに、行かないでと懇願するジャッキー(号泣)そりゃそうだよ、つい数時間前に生還した娘を、誰がまた危険な世界に送り出したいと思うのよ。
 それでも、どんなに心からの言葉でも、一度冒険を知ってしまったローズを引き止めることはできない。それだけターディスとドクターの旅が刺激的で魅力的ということだろうけど、彼のパートナーとなるコンパニオンたちはみんなその輝きに心を奪われ、そしてどこかで別れてしまうんだなあ。寂しい。

「要するにみんなバカなんだ」
「……単なるバカ?」
「例外もいるさ」

 9代目からすると、恐らくミッキーに対する最大級の褒め言葉。ターディスでの旅に誘うあたり、今回の一件でミッキーへの印象も大きく変わったんでしょうな。文句なしのMVPだよミッキー!!!
 あとここのドクターの台詞は、前編でのローズの「すごい体験をしても誰にも言えないんだもの。エイリアンとか宇宙船とか、実在するって私しか知らない」という発言にかかってくる部分もあるのかな。実際に凄い体験をして、エイリアンの存在を知っても、それを見ないふりをする人間は山ほどいて、実際に受け入れて向き合おうとするのはとても希少な存在……つまり、ミッキーやジャッキー、そしてハリエットは、自覚のあるなしに関わらず得難いほど凄い人間で、ドクター・フーという物語に深く関わるにふさわしい存在ということかな。


『これはタイムマシンよ?10秒後には会えるわ』
 しかし、10秒を数えてもブルーボックスが現れることはなく、ジャッキーは悄然としてその場を後にする。この寂しさ、悲しさよ。
 出だしのコミカルさ、中盤のスリリングさと快活さ、そしてラストは切なさと寂しさを滲ませながら次回予告に繋げるのが堪らない。2話前後編でたっぷり尺もとってボリュームのある展開を描いたわけなのだから、そのまま爽快感と勢いのある終わり方をしても良さそうなところで、このビターなエンディング。この温度差がドクター・フーといった感があって好き。


 さて次回はみんな大好き(回を重ねるとごとに『また出てくんのかよ!!!』と言われる)ドクターの宿敵・ダーレクの登場。

 エクスターミネイト!エクスターミネイト!!!


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