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【シリーズ1】ドクター・フー感想:2話目【9代目】

初めに。この記事はとにかくドクター・フー 新シリーズ1の感想をゆるっと語るだけのものです。深い考察や裏情報・昔からの根強いファンが書いたものではありません。『ドクター・フーおもしろ!他の人の感想も読みたい!』と思ってググってみても、なかなか探し当てられずもやもやして、仕方なく自分の感想を吐き出すことにした次第です。どこかにシリーズ1の感想を書いておられる方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください。読ませてください。よろしくお願いします。 

・The End of the World
 邦題「地球最後の日」


 今回の邦題は普通。私は仮面ライダーゾルダのファイナルベントを想起しました。

 記念すべき宇宙と時の冒険の旅・一発目で、にこにこしながら地球人のローズを、地球が爆発四散する瞬間に連れてくるドクターのデリカシーなさすぎ問題。このうっきうっきしたドクターの満面の笑みよ。ドクターは本当にデリカシーがない。復唱しておきましょう。ドクターは、ほんとうに、デリカシーがない!
 現代イギリスを舞台とした1話からの世界観の違いに、SF慣れしていない自分は果たしてついていけるだろうか、楽しめるだろうかと次回予告の時点で若干の不安はあったのだけど、普通に面白くて一安心した回。まさに勝負の2話目。CGも特に多いし、製作費もかなりかかっているそうな。

 しかし、自分もタイム・ウォーにて同族も故郷も全て失っているくせに、ローズにも遠回しに同じような光景を見せるドクターって何を考えているんだろう。いや特に何も考えてなかったのかな。『ようし、ローズは初めてのタイムトラベルだ!とっておきのところに連れて行ってあげよう!』とか、それぐらいの気持ちだったのかもしれない。普通にローズを驚かせて、ついでに感心させようとしてたんだろうな。この辺は地球人とガリフレイ人の違いというより、単純にドクター個人の気質のせいだろうなと後々察することができるようになるのが何ともおかしみを感じる。多種多様な宇宙人の中にいてもだいたい浮いてるドクター。唯一無二の変人。
 深読みというか単なるこじつけの妄言だけど、帰るべき場所を失ったばかり(前身であるウォー・ドクターから9代目がローズに出会うまでにいったいどれほどの時間が経過したかはわからないけど、とりあえず直近の姿なので)の9代目が、新たに知り合った友人に自分の経験と少しばかり似たようなシーンを呈示するのは、自らの痛みを共感させているような感じもして、なんて身勝手なと思う反面ちょっと寂しくなったりもする。考えすぎだとは重々承知しているけれど、まだまだばりばり感傷ど真ん中な頃の9代目ですし、相手に一切説明せずに自分の希望を通したり強行するのは、ドクターが結構やりがちなことなので。実際ローズも、爆発四散する地球になんとも言えない複雑な気分になってるし。まあそりゃあ、いくら星の寿命だとしても、自分の故郷が滅ぶ瞬間を娯楽にされていたら面白くもなかろうて。

「30分後に地球は丸焼け」
>はいここ『ドクターデリカシーなさすぎポイント』加点でーす。

 勝手にターディスに脳をいじらせるんじゃない!
 そしてそれを嬉々として語るんじゃない!!!

 初めての冒険の熱がじわじわと冷め、冷静になり、周りは知らない人間どころか人間ですらない宇宙人ばかり(地球人だって宇宙人ですけど)。おまけにここは50億年後で、頼れる相手は本名も何もかも明かされていない謎の男だけ……。この辺のローズの、すうっと興奮が引き、徐々に不安が募っていく様子はとてもリアルでぞくりとする。初回からの流れで『わくわくの冒険だ!』という高ぶりをずっと引っ張らずに、2話目にしてするりと音もなく脇腹のあたりを刺すように、現実的な目線を入れてくるのがとても上手い。
 そんなキャパがいっぱいいっぱいになったローズに詰め寄られてすぐ激昂しちゃうドクターに初見の際はかなりびっくりしてしまったけれど(怒鳴る男性がめちゃめちゃ苦手)、色々と不安定な時期だったのかと思うとちょっとしんみりしてしまう。あと『今ここにいる僕がすべてだ!』という台詞は、リジェネレイトを繰り返すドクターが言うにはあまりにも切実だなあ……。
 それでも、風貌だけ見ればずっと年上の大人の男に怒鳴られた直後に『……いいわ』と取り直すことができるローズは大人すぎない???ドクターが精神的に揺れている時、譲歩し歩み寄るのはローズなんですよね。このバランスがすでに確立されている。
 あとこのすぐ後のシーンで、ドクターが改造してくれたケータイを用いてママに電話をかけるローズがまたいい。孤独感に苛まれていたローズの心を即座に癒すジャッキーとの何気ない日常会話と、その会話を繋いでくれたドクターという構図……素晴らしい。また、ローズの声色の些細な変化にさっと気づいて『何かあった?』と訊くジャッキーは、やはり娘のことが大切でよく見ているんだなあ。

 これは9代目に限った話じゃないけれど、たいていドクターは異常事態が発生しても(したからこそ?)いつもにやにやにこにこしているので、胡散臭さが倍増して、9代目はそれが特に顕著だと思う。ハプニング最高!Fantastic!!とか思ってそう。実際ジェイブにも指摘されているし。視聴者と心が一つになる瞬間。

 あなたももっと薄くなったらどう?という、最後の純然たる人類()であるカサンドラのアドバイスに対しての、以下ローズ・タイラーのお返事
「やめとく」
「死んだほうがマシ」
「トランポリンみたいな姿はゴメンだわ」
「あんたは皮膚と唇だけの化け物よ!」

 ローズ!ローズ!!!ローズちょっとお口を慎もうか!!!国際問題とか星間戦争とかに発展しそうだから!!!(初見はマジでひやひやした)
 この怒涛の暴言も『生意気ね』とは言いつつも一応静かに受け止めているカサンドラ、実は度量が大きいのでは?

「トラブルを楽しめるのは、全てを失った人」
 恐ろしいほど鋭くドクターの核心をつく、ジェイブの一言。彼女の謎めいた言動が視聴者の『ドクターはいったい何者なの?』という関心をぐいぐい引っ張るニクい構成。それでも、彼女の心からの同情と哀切の言葉に涙するドクターの姿にはっとさせられる。本当にこの人は何か大切なものを失ったんだ、と痛感させられる涙である。ローズ以外で9代目の心に触れた唯一の女性ではないだろうか。

 最後に、爆発してその命を終えた地球を眺めた直後に、50億年前の、多くの生命と人生に溢れる地球に戻り、その様をじっと見つめるドクターとローズのシーン。二人の眼差しが切ない。
 カサンドラの最期(仮)に『助けてあげて』と望んだローズに対して『生き物には死期がある』とあくまで慈悲は見せなかったドクターは、もちろん怒髪天を衝くほど頭にきていて助ける気なんてさらさらなかったこともあるだろうけど、死期を迎えた存在を不自然に長らえさせるのは間違っているという気持ちもたしかにあるのだろうな。
 命を終えた50億年後の地球。滅亡したガリフレイ。そして、まだ力強くエネルギッシュに生き続けている『今現在』の地球。いつまでも続くように思えて、そうではない。

 そして最後の最後で自分の出身と、故郷と仲間の全てを失ったことを打ち明けるドクターよ〜〜〜!一人だと言う彼に、咄嗟に(しかし即座に)『私がいる』と返すローズ。たとえそれが長続きするわけではないと、きっと誰よりもドクターがわかっているだろうに、彼女のその心遣いに本当に嬉しそうに笑うんだもんな〜〜〜。
 気休めでしかない言葉だけれど、気休めで救われることはある。

「チップスのにおい」
「ああ、本当だ」
「食べたい」
「僕も」
「買ってくる。あなたのおごりよ」
「金がない」
「サイテーね。私がおごるわ」

『閉店まで50億年しかない』

 そう言って、顔を見合わせて、肩を並べて歩き出す二人よ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!(拍手喝采)


 2話目で新規視聴者に対して『ドクターって何者?』とこれでもかと興味を掻き立てた後に、その回の中である程度の情報を開示してローズとの絆を深めた描写を最後に持ってくるの、物語として実に絶妙な塩梅でとてもいい。少なくともあと2、3話くらいは引っ張ってもおかしくなかったと思うけど、2話の中で明かしてしまうのはスマート。もちろん絶大な人気を誇るシリーズだからこそ、旧シリーズからのファンにはタイムロードの存在やドクターの出自は既出の情報で、あんまり長々と引っ張っても具合が悪くなる可能性も高いから、すぱっと序盤で出しちゃおうぜってだけの話かもしれないけど。でも、ドラマ作品として凄くいい構成だと思う。

は〜〜〜〜〜楽しい!!!

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