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【山歩き記録 第79歩 1日目】那須岳 茶臼岳・朝日岳・三斗小屋温泉(2023年5月25日)【意外と怖くない絶景火山から、歴史深い温泉宿へ】
前回から少し間が空きましたが、この間、那須岳に1泊で行く機会を待っていました。
下調べで、那須岳で障害となりえるのは、大きく次の二つ。ひとつは風、もう一つは雷雨です。
風は西高東低のときに西風が猛威を振るうらしい。雷雨は盛夏の時期に多い。それから、那須岳に限らず、2000m近い山なので春や秋は寒い。梅雨に入ると連続して晴れることは少ない。
…と考えると、狙うべきは、梅雨入り前の時期に、東西に長い高気圧の中心が東に抜けたタイミング!となるわけです。本当は金土か日月で行きたかったのですが、もう梅雨に入りそうな気配があったので、意を決してこの日に行くことにしました。(この前日、高気圧がまだ西にあって、強風でロープウェイが止まっていました!)
ところで、那須岳、特に朝日岳に登るのは今年の大きな目標のひとつと考えていたところでありました。どういうことかと言いますと、朝日岳への途中に崖をトラバースする狭い道があると地図などに書かれており、ネット上の写真とか見るとけっこう怖そうなわけです。一方で「初心者でも行ける」と書かれてたり、ヤマノススメでもひなたが一人で往復する山として描かれておりまして、それならば、なんとなく「怖そう」なままではいけない、自分で行って、見て、乗り越えなければ、と思っていました。
そこでついに行ってみたのですが、結論としては、思ったほど怖くなかった、行って良かった、という感じです。怖さというのは「落ちそう」と「落ちたらやばそう」から来るのですが、「落ちそう」については、思ったより道幅が広く安定していたのと、鎖がしっかり固定されているので頼りになります。「落ちたらやばそう」については、谷側の傾斜がそれほど急でなかったですし、落ちた先の見晴らしも良いので、なんか落ちても大丈夫そうと思える感じでした。これまで低山でもはるかに「落ちたらやばそう」なところを何度も経験してきましたので。
ということで、他に岩場をがんばって登るところなんかもあるので「誰でも」とは言えませんが、少し経験のある方ならば問題なく行ける山だと思いました。もちろん風次第ですが。
コース概要
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那須ロープウェイを使って山頂駅まで上がります。まず茶臼岳に登り、軽くお鉢回り。峰の茶屋跡まで下り、剣が峰を巻いて朝日岳に登ります。北に清水平、三本槍岳へと続く道を分けて西の熊見曽根に入り、隠居倉を越えたあと標高を下げて三斗小屋温泉に着きます。当地には大黒屋と煙草屋の2件の宿があり、今回は大黒屋に泊まりました。
記録
那須塩原駅西口9時20分発のバスに乗車。富士山麓のバスに乗って遅れたのは記憶に新しいですが、このバスは遅れるどころか快調に飛ばし、何回か時刻調整のため停車するレベル。これぐらい余裕持って時刻表を組んでくれるとこちらも助かります。那須ロープウェイバス停にも予定(10時37分)より数分早く着いたおかげで、10時40分のロープウェイに乗ることができました。
ロープウェイでは、車掌さんが「茶臼岳または朝日岳・三本槍岳を含めた那須連山の別称として呼ばれることもありますが、那須岳という山はありません(断言)」という感じで話していまして、そのときは「ふーん」と聞いていましたが、今思えば「富士山は無くて、剣が峰しかない」「水は無くて、水素と酸素しかない」レベルの爆弾発言ですよね。地形図にも「那須岳」と堂々と書かれております。
それはさておき、ロープウェイ山頂駅には展望テラスやトイレがありますので、落ち着いて準備できます。風がややあったので、モンベルのレイントレッカーを着て、代わりにフリースは脱ぐことにしました。
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茶臼岳山頂まで、およそ35分。登り切ったと思ったところからお鉢回りの火口の反対側に山頂があるところとか、その途中に鳥居があるところとか、一部の岩の色味とか、スケールは違えど、去年登った富士山に似ているなーと思いました。
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お鉢回りを終えたら、峰の茶屋跡まで下りになります。ここも岩がコロコロしていて、ちょっと苦手な道です。下っているうちに少し日が差してきただけでなく、南風が茶臼岳にブロックされる形になって風も感じず、暑くなってきたので、レイントレッカーは下りの途中で脱ぎました。
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峰の茶屋跡の小屋は休憩所として使えますし、周りにもベンチが複数あります。ここから山麓駅までの下山路があり、幼稚園か小学校かのグループがなんども「ヤッホー」と叫んでいました。朝日岳(上の写真で一番右のピーク)までは、まず手前のピークを右から巻き、少し尾根を伝って、赤っぽい岩山は左から巻きながら、山頂を目指します。
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朝日岳への分岐まで来ると、それまで見えていた「岩の尖塔」から、緑の穏やかな山という見た目に変わります。面白いですね。
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13時5分、朝日岳。
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真の360度ビューとはこういうことを言うのです。山頂が広すぎたり平らすぎたりすると、手前の地面や構造物に視界がさえぎられることがあるので。
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ではいよいよ三斗小屋温泉に向かいます。先ほどの西向きの写真に見える、右手の小高い丘が分岐になっていて、そこから左の熊見曽根へ。その先に見える隠居倉を越え、下っていきます。この熊見曽根、道が比較的平らで歩きやすいのは良いのですが、一部これまで歩いてきたどの道よりも幅が狭く、崖側の高度感もあったので、正直、「怖そう」と思っていた朝日岳への道よりも怖かったです。怖くない箇所は両側に低い草木があるせいで熱気がこもりやすい構造になっており、まさかの「暑い」という感想を持ちました(僕が勝手に名付けたところの「谷川岳現象」!)。
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隠居倉から先は森の中を歩くようになり、黙々と標高を下げます。途中煙が上がっているところがあり、「着いたか?」と思ったらそこは源泉で、宿はそこからさらに15分ぐらい先にありました。硫黄の匂いがしっかりする煙だったので、これぐらい離れているのが妥当といえば妥当ですね笑。
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15時、大黒屋に到着。
お部屋の案内を受けたら、温泉が大風呂と岩風呂の2種類あり、1時間ごとの男女交代とのことでしたので、さっそく大風呂へ。その脱衣所の壁に、あの、といっても知る人ぞ知るぐらいの知名度だと思いますが、日本の近代医学と科学に多大な貢献をしたベルツの文章の木彫りが飾られていました。超絶意訳するとこんな感じ。
「三斗小屋温泉はあれやこれに効いてすごい。似た泉質の温泉に、日本のあそこやドイツのあそこがあるけど、その中で一番すごい。明治22年ベルツ。連れの日本人訳」
飾られている文章とは違うけど、だいたい同じ内容の文章が宿のHPでも紹介されています。
ベルツをググると、草津温泉を世界に紹介したというのもあったりして、かなり温泉に精通していたみたいですね。
少し時間を空けて、今度は岩風呂へ。こちらはぬるめのお湯で、無限に入っていられる気持ちよさ。時計が脱衣所にしかなかったので、気を抜いたら男女交代の時間を過ぎてしまいそうで、完全にくつろげないのが少し残念。
ちなみに、僕はタオル持参でしたが、小屋名入りのハンドタオル300円です。それから、露天風呂ではありません。隣の煙草屋さんの方には露天風呂があるそうですが。
食事は美味しすぎて感動します。というか、味噌汁が美味しくて本当に涙出ました。
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その後、暗くなって星空とか見えないかなーと思って外に出てみましたが、残念ながら曇り空で星一つ見えませんでした。
ということで、この日はここまで。明日は那須岳の最高峰、三本槍岳を目指します。
各種情報
コースタイム:3時間30分
標高:1680m(那須ロープウェイ山頂駅)~1915m(茶臼岳)~1725m(峰の茶屋跡付近)~1896m(朝日岳)~1460m(三斗小屋温泉)
眺望:隠居倉までは常に開けているのでなにかしら眺望あり。特に朝日岳は完璧な360度ビュー
トイレ:那須ロープウェイ山頂駅・山麓駅
危険個所:熊見曽根の道の狭さに少し冷や冷やしました。他は多少の急坂も岩場もそれほど問題なし。むしろ強風をいかに避けるかが大事でしょう。
アクセス:那須塩原駅西口から那須ロープウェイまで、関東バス。1時間に1本以上出ているのがありがたいです。
周辺情報:那須ロープウェイのHPはこちら。
また、那須ロープウェイは、ツイッターで毎日の風状況や運行状況を報告してくれています。僕はこれと過去の天気図を見比べて、どういう日に運休になっているかを調べていきました。
三斗小屋温泉大黒屋のHPはこちら。
煙草屋のHPはこちら。
大黒屋は、ひとりでも必ず個室になるのが特徴。一方で、煙草屋には談話室があり、HPにも「登山者同士の交流はすごく大事にしています。」と書かれております。個室で静かに過ごしたいか、他の人と交流したいか、好みで選ぶと良いのではないでしょうか。
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