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【山歩き】あのモデルはどうなった?モンベルのレインウェア再編成を整理する
ここ最近、界隈をにぎわせているのが、2025年春夏での、アウトドアブランド・モンベルのレインウェア再編成です。特に、フラッグシップモデルであった「ストームクルーザー」の素材が、世界的に有名なゴアテックスから、モンベル独自素材であるスーパードライテックに変更されたことに衝撃を受けている人が多いようです。
それで調べてみると、ストームクルーザーに限らず、いろんな名前のレインウェアが一斉に再編成されているとわかりました。
僕は旧「レイントレッカー」を愛用しているのですが、仮に買い替えるとしたらどれになるんや・・・という疑問が浮かんできます。また、こうした背景があってか、過去に旧レイントレッカーをレビューした記事がここ最近もっともビューを稼いでいるのですが、申し訳ないことに、そちらは旧レイントレッカーの内容なのです。
こういったことを踏まえ、アウトレット商品としてオンラインショップに旧ラインナップの情報が残っている今のうちに、旧モデルの後継と言えるものはどれか、を整理してみたいと思います。
なお、今回の整理に当たっては、モンベルのオンラインショップやカタログの情報をもとにしており、新製品の実物を見たわけではないことをご承知おきください。また、僕が男のため、製品価格や重量は男性用のものを記載しています。
総評
今回の整理を通じて持った全体的な印象です。
1. 値上げ
近年モンベルの値上げ傾向が顕著だと思っていますが、ここでもそれがはっきり表れています。例えば、話題のストームクルーザーについて言えば、同名の新製品は約6000円の値下げですが、同じゴアテックスを使った、後継と呼ぶにふさわしい「テンペスト」と比べると、約7000円の値上げになります。
僕が山歩きを始めた約5年前には、モンベルはほかの著名なアウトドアブランドと比べてほぼ半額!すげー!と思っていたわけですが、最近は多くの製品でこの半額の公式が崩れていっている気がします・・・。
2. スーパードライテックの本格投入
もともとモンベルは「ドライテック」という独自の防水素材を展開していましたが、去年かおととしぐらいから(←正確に覚えておらずすみません)、透湿性を大幅に向上させた「スーパードライテック」を導入し始めました。これが売れる見込みが立ったのか、この2025年春夏のタイミングで、スーパードライテックを本格投入してきた印象です。
モンベルによると、ドライテックの透湿性は5000-20000g/㎡*24hrs、スーパードライテックの透湿性は20000-60000g/㎡*24hrsとなっています。スーパードライテックにしろ、ゴアテックスにしろ、製品によって透湿性に差があるので一概には言えませんが、スーパードライテックの透湿性はゴアテックスと比べても遜色ないレベルに到達していると思います。
唐突に他社製品ですが、防水素材で最近衝撃的だったのが、ミレーのティフォン・ファントムです。
50000mmの耐水性がありながら、透湿性は60000g/㎡*24hrs、ジャケット重量は132gと、驚異的な数字を出してきています。我々一般人が使うレベルの防水透湿素材においては、モンベルやミレーの例から察するに、ゴアテックスの優位性は薄れてきているのかもしれません。
3. 独立したレインパンツ
これまでモンベルは、他社と同じように、ジャケットと同名、同素材のレインパンツを展開していましたが、今回の再編成を受けて、まったく別名のレインパンツに置き換わり、種類も減りました。再編成の対象外だった入門モデルはそのまま残りましたが、こちらもいずれ名前を変えてくるかもしれません。
実は以前から、モンベルはカタログなどで「上下別売り」を明記し、「別サイズ」「別素材」「別カラー」といった買い方を提案していました。それが今回の再編成により、「強制上下別売り」になったということです。再編成対象のレインウェアでは上下セットアップができなくなるということで、見た目を気にしない、機能極振りのモンベルらしいとは思います。
新旧レインウェア比較
ここから、新旧レインウェアの比較です。比較に当たって、次の項目を抽出しました。
重量:カバンにしまっておくことの多いレインウェアにとって、重量は極めて重要です。
防水素材:いくらスーパードライテックが優れているとはいっても、今回の騒ぎから分かるように、ゴアテックスかどうかは気になるポイントです。
表地のナイロンのデニール数:重量、耐久性、柔らかさ等に影響します。これにより、どういった位置づけのレインウェアなのかが推測できます。
ポケット(ジャケット):雨天時にはザックカバーをかぶせ、また、レインパンツにはポケットがないことを考えると、ジャケットのポケットの有無は重要なポイントです。
価格:言わずもがな。なお、旧モデルの価格は、2024年秋冬のカタログに基づいています。
フロントジッパー(パンツ):あなたも男性ならば。ジャケットのポケットとともに、軽量化を突き詰めると省略されがちなパーツです。
フルジップモデル(パンツ):後継の比較とは直接関係ないですが、購入の際には考慮するポイントになるでしょう。
以上をトータルで勘案し、これが後継と呼べるのではないか、自分がそのモデルの旧バージョンを持っていたら最初に手に取るのはこれだろう、というものに向けて、僕の独断で矢印をつけました。
なお、農作業やサイクリング用のレインウェアは対象外としています。
レインジャケット
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まずは旧ストームクルーザー。これと重量、防水素材、デニール数、ポケット数で一致するのが、テンペストです。ストームクルーザーと言えば、モンベルの最高級レインウェアという印象で覚えている人も多いと思いますが、テンペストは価格帯としてもそれに合致します。逆に新ストームクルーザーの方は、オンラインショップでは「フラッグシップモデル」という説明書きが引き続きついていますが、価格帯からは最高級とはとても言えません。実物を着たら、着心地とか違うのかもしれませんが。
つづいて旧レインダンサー。こちらは、50デニールナイロンを使用した、耐久性の高いゴアテックスレインジャケット、という印象です。これに合致するのは、新レイントレッカーでしょう。
つづいて旧トレントフライヤー。こちらは、ゴアテックスを使用した最軽量モデルという印象です。これに合致するのは、新ピークシェルでしょう。
つづいて旧スーパードライテックレインジャケット。こちらは、旧スーパードライテックピークシェルと同じスーパードライテックを使ったレインウェアの中で、デニール数が高いモデルという印象です。これに合致するのは、新ストームクルーザーでしょう。ここだけ値下げが発生しているのが興味深いところで、これをきっかけにスーパードライテックを体験してほしいと思っているのかもしれません。
つづいて旧レイントレッカー。こちらは、旧バーサライトと同じ「ウィンドストッパーファブリクス バイ ゴアテックラボ」(以下ウィンドストッパー)という防水素材を使っていますが、旧バーサライトと比較して生地が柔らかく、ポケットがついている分、少し重いモデルです。ウィンドストッパーは、ゴアテックスより耐水性に劣りますが、それでもモンベル基準のレインウェアには十分で、なにより透湿性が極めて高い素材です。これがスーパードライテックに置き換わったと考えれば、後継としてふさわしいのは、新トレントフライヤーでしょう。
つづいて旧バーサライト。こちらは、とにかく軽い、最軽量モデルです。新モデルでも、防水素材こそ変わりましたが、同名の新バーサライトが同じポジションになるでしょう。
旧スーパードライテックピークシェルは、先述の通り、スーパードライテックを使った中での軽量モデルでした。バーサライトの素材がスーパードライテックに変わったことで、素材も、軽量という方向性もかぶったため、バーサライトに統合されたと見ることができるでしょう。
ドライテックを使用した入門3モデル、コンバーチブルレインジャケット、サンダーパス、レインハイカーは、作り、お値段とも、据え置きとなっています。(サンダーパスのみ、500円と微妙な値上げ)
レインパンツ
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レインパンツは、レインジャケット以上に、大きく様変わりしました。
まず、ゴアテックスを使用したレインパンツは、GORETEXレインパンツのみになりました。旧ストームクルーザーと旧トレントフライヤーを使用していたゴアテックス派の方は、GORETEXレインパンツを見ることになるでしょう。
スーパードライテックを使用したレインパンツには、30デニールのスーパードライテックレインパンツと、7デニールのスーパードライテックU.L.レインパンツの2種類が出ています。
スーパードライテックU.L.レインパンツの方は、旧バーサライトの素材がウィンドストッパーからスーパードライテックに変わったものと言えるでしょう。
一方で、スーパードライテックレインパンツが旧レイントレッカーの後継かと言うと、そうは言えないような・・・。旧レイントレッカーは、旧バーサライトより少し重いけど、生地がしなやかで、フロントジッパーなどの便利機能がついている、というものでした。スーパードライテックレインパンツは194グラムもあり、「少し」重いでは済まされない重量増です。
価格設定からも察するに、旧レイントレッカーの後継はなし、スーパードライテックレインパンツは(ジャケットの新ストームクルーザーのように)スーパードライテック体験版という位置づけなのでしょう。
旧レインダンサーも、ジャケットの新レイントレッカーに相当するような直接的な後継は見られません。ゴアテックスがお望みならGORETEXレインパンツを、50デニールの耐久性がお望みならサンダーパスを見ることになるでしょう。
ジャケットと同様、ドライテックを使用した入門3モデル、コンバーチブルレインパンツ、サンダーパス、レインハイカーは、作り、お値段とも、据え置きとなっています。ただし、サンダーパスのフルジップモデルは(執筆時点のオンラインショップのラインナップを見る限り)なくなりました。
整理してあらためて思うのは、なぜ違う位置づけの製品に同じ名前をあててしまったんでしょうね。僕の旧レイントレッカーのおすすめポイントは、軽くてしなやかであるところなのですが、新レイントレッカーはその真逆の方向性ですから、「レイントレッカーがいいよ~」と言うと、とんでもない誤解を招く可能性が出てくるわけです。
5年10年と経って、新モデルだけが存在する世の中になれば解決するのかもしれませんが、それまでは、この記事の僕が作った表などを活用していただければと思います。