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241013-19 ハローノーマン グッバイイーニド

子どもらしくね 簡単ですぐ人にわかる
よろこびの言葉でいてね

素直/柴田聡子(アルバム”Your Favorite Things”収録)

日曜日
朝、かさかさ動く気配を察知し目を覚ますと、昨晩脱ぎっぱなしにしていたTシャツをまさにいま咥えて去ろうとする犬と目が合った。しっぽをぶりんぶりんに振っていたが、「コソ泥犬!」と糾弾すると「ウゥ……」と唸って走り去っていった。彼は毎朝忍び足でなにか拝借できるものがないか嗅ぎ回っているらしい。恐ろしい犬である。
両親とモーニングを食べに出た。父親は1度ひとりで行ったそうだが、なぜかまた行きたくなったそうだ。アイスコーヒーと一緒にでてきたトーストをぜんぶくれた。ラッキー。
家に帰って少し勉強。9月に受けたけれどもおそらく落ちている資格に11月に再チャレンジする。息抜きにRubyで遊んでたりもする。最近はメルカリ用に組んだExcelにちょこちょこ自作でマクロを書いたりもして、これではまるでパソコンオタクではないかと思う。
昼前に母方の祖母の家にこの間買った照明器具を取り付けに行った。約4000円の照明器具が驚くほどよくて「ほんまにお値段以上やん」とひとりほたえていた。いやお値打ちですよ、マジで。おすすめ。
祖母宅から帰ると妹が来ていた。このあいだ一緒につくったExcelに新たな機能を追加してほしいとのことだった。おなかがいよいよ誰の目にも明らかなぐらい大きくなっていて「腰が痛い」と言っていた。母が「とりあえずごはん食べなさい」と言って白ごはんや肉じゃがを食べさせていた。私の食べているシラスを指して「これ食べてもいけるんかな?」と言うので「釜揚げやし、茹でてるからいける」と言って少しだけあげた。
Excelのやってほしいことを少しずつヒアリングする。先日は従業員個々の売り上げや成績をわかりやすくまとめ、それを給与明細として転用できるように作成した。今回は、その個々の成績を1つのシートで確認できるようにしたいということだった。私はここぞとばかりにINDIRECT関数を使った。妹は関数やマクロなどはまるでわからないのだけれど、その代わり困ってることをちゃんと言葉にして「だからこういうものをつくってほしい」と自分の考えを踏まえて伝えることができていた。「いつのまにそんな立派な大人になったのよ」とお兄ちゃんは感動しました。
夕方に出掛けた。大学生からフリーター時代、かれこれ10年前ぐらいによく通っていた映画館が今月閉館するのに際して、私の超絶フェイバリットムービー"ゴーストワールド"が上映されると聞いたのだ。去年の今頃にリバイバル上映があったのだが、それに行けていないのもあり、これは行かねばということだった。ゴーストワールドTシャツを着ていくかめちゃくちゃ悩んだが、やめた。外に家用の黒縁メガネをかけて出たのはひさしぶりで、というか普段あまり外でメガネをかけないから少し遠近感が狂ったような感じがあり気持ち悪かった。しかし今日はかけなければならなかった。イーニドポイントが高いから。Tシャツを着る勇気がない私のせめてものオシャレである。映画館のスタッフさんが青いラプトルのTシャツを着ていて「俺もそれ持っとるで!」と心の中で勝手にハイタッチをした。でかいスクリーンとでかい音で見るゴーストワールドは最高でした。いまはシーモア、あんたの気持ちが痛いほどわかるぜ。ただ、男としてはダサすぎると思うで。ええ人どまりや、あんたは。映画が終わったあと、誰かが拍手をしたけれど、まったくそれは続かなかった。だってそういう映画じゃないだろうし、わざわざこれを観に映画館に足を運ぶやつらが拍手なんてするわけないし。ぼくらほんとはレベッカに、もっと言えばメローラにならなきゃなのに。拍手ぐらいすりゃいいぜって思うけど、まあ無理ですよね。だって好きな映画を観に来るのにその映画のTシャツを着ていけない輩だ。劇場内をぱっと見渡したけれど、だれひとり着てなかった。
帰りにエモが非常にエモーショナルになり、たばこをひと箱買った。道のはじっこで深く吸い込んで、それから家路についた。

月曜日
祝日でやることがない。ほとんど8時間座っていただけのような気がする。もちろん手は動かしていたし、人とも話すのだが、まったく脳を使っていない印象がそうさせるのだろうか。不思議なもんで、そういう日はいつも夕方ぐらいにはひどい頭痛になっている。アイドリングが過ぎてエンストしたような感じ。耳が遠くなるぐらいの音量で音楽を聴くと少しマシになる。

火曜日
職場の先輩に「仕事においてわからないことや面倒なことが起こったとき、きみはなんだかんだワクワクしながらやってる。そこがとても好きだけど、仕事以外の話においては、なんかちょっと普段のきみとは整合性がなく、心配である」と言われた。なにもかも見透かされていて、驚いた。私はかなりわかりやすい人間なんだろうか。
近所の味噌ラーメンがめちゃくちゃうまい。小さい頃、スイミングスクールの帰りにたまに母親が連れて行ってくれたラーメン屋の味噌ラーメンに似ており、とても懐かしい。スープを完飲し、夜は喉がすごく渇き、寝付きと悪いかった。けれど、あのスープはやはり今後も飲み干すだろう。

水曜日
「やる気は結果であり、原因ではない」という一文を目にし、鱗がボトボト落ちましたよね。すごくいい文章だと思う。
先週、働いているビルに来客があった。怪しい二人組で、さながら地面師のような二人組で、どことなく胡散臭い。そんな彼らがまたやってきて「ここに壁を建てて、ベッドを置いて……」など、まるでわからない話を繰り広げていた。さすがに気になり、彼らが去ってから社長に電話をして聞いた。「そこ、年末には引き払うんよ」ということだった。なぜそういうことを決まったときに連絡できないのか、とてもうんざりしてしまった。だいたいベッドなんか置いてなにするつもりなんだろう。おおよそヘルスやメンエスなんだろうが。せっかく環境を整えたのにこんなのはちょっとない。「ぼくらはじゃあ一度そちらに戻るんですか?」と聞くと「そうそう」と言っていた。モノで溢れ返って場所なんかどこにもないのにどうするつもりなんだろう。会社って、会社員ってなんなんだろうかと本当に最近よく考える。

木曜日
休みなのでのんびりした。progateに登録してHTMLとCSSを遊んだ。一度勉強したことがあるから復習という感じで楽しかった。講座を進めるごとにレベルが上がるのが学習の動機づけになっている人はいるのかは少し疑問ではある。
昼頃、働きに出ている母親から「祖母から連絡があり、湯沸かし器からお湯が出ないみたいだから少し見てあげて」と連絡があった。犬に番犬として家を守ることを命じて祖母宅へ。ガスの元栓がしまっているのを開けてあげて「お湯が出たよー」と給湯器から出る湯に触ってもらって納得してもらった。ほっこりヘレンケラーですね。
祖母が「お昼たべよ」と言うので、ご馳走してもらうことにした。弟の店に行きたいというので、のんびり歩いて出かけた。認知症が徐々に進行している祖母だけれど「外行くなら着替えないとダメだから、下で待ってて」という。その美意識の高さは死んでももっててねって思う。いつまでもパンクな祖母でいてくれ。

金曜日
父方の祖母が死んでちょうど1周年。あまりに時間の経つのがはやくて、現実味がない。まだどこでで生きてるんじゃないかなとか思ったりもする。ふと道端で会ったりとか。焼き場で骨だけになって完全に死んだのを確認したにもかかわらず、人間の認知はいい加減である。周年キャンペーンでお供えにとおいしいものが方々からやってくるのでうれしい。おさがりをもらいまくっている。ばあちゃんっ子だったから許してほしいぜ。家に帰ると、近所のコロッケ屋のコロッケが山盛りになって供えられていて笑った。こんなに食えるんだろうか。
夜は職場の人たちと弟の店でごはんを食べた。みんないろいろ思うところはあるみたいだけれど、やっぱりたまにはこうやってわいわいするのがよい。職場の女性陣たちにいろいろ聞いてもらい、ダサいやら頑張れやら次行けやらいろいろご意見をいただいた。「受け止められん事実でも、のめ。かっこつけんな」と念押しされ、煙草を吸う手が止まらなかった。効くぜ。

土曜日
出勤してすぐ雨が降ってきた。1人しかいない職場で黙々と作業をこなした。夕方ぐらいに仕事のできない人が半分嫌味のような内容のクレームを入れてきたので、暇つぶしに正論で返した。退勤してからきた返信を見ると、明らかにその人の文章でない文章が書かれていた。売ったケンカも自分でできないのなら、黙って仕事をしてればいいのにと思う。それと同時に、大人気なくそんなやつの土俵にあがった自分が情けなく、改めようと思った。
夜は、母親が焼きそばをつくってくれた。食べながらいろいろ愚痴を聞いては相槌をうった。それからふと「ただ話を聞いている」ことが自然とできている自分に気付き、ちょっとうれしかった。

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