Bの定義:2話「毎日がつまんねーな〜ってさ・・・」
球技大会のメンバーが決まってから2、3日が経っていた。
その頃には地元でも既にセミが鳴いて如何にも夏だな〜と思わせる季節になっていた。
昼休みになると、それぞれの種目のスタメン勢がこぞって練習しにいく。
リョータは最初の2、3日は球技大会に向けてと意気込んで練習に参加していたが練習の内容はスタメン勢を中心とした実践練だけで、補欠はただの駒扱いになっていた。そのうち、リョータは昼休みの練習が面白く感じなくなり、いつしか校舎裏にある今は使われなくなった用務員専用作業小屋の軒先に行くようになっていた。
「よっ!」
「おう、よっ!」
リョータが軒先に着くなり声をかけると返事が返ってきた。
そこにいる面子はクラスの中でも5軍中の5軍。
彼らは『最も冴えないグループ』と自分達のことを呼んでいる。
「最も冴えないグループ」の面子は最初は一人ひとりが「ぼっち」だった。それがいつの日かぼっちはこの先の高校生活を生き抜くには不利だと判断してかぼっち同士が話すようになり意気投合したりしてぼっち同士が固まったグループが出来上がった。
リョータもそのグループの一員である。
「今日も練習か?」
グループの1人がリョータに聞いてきた。
「うん…今日はバスケ。面白くないから抜けてきた。」
「ホント、よくできたな。」
「簡単だよ。スタメンで出る奴、補欠には興味ないから。」
「それは間違いない。」
『最も冴えないグループ』のメンバーはほとんどが補欠枠にも入れてない。
補欠枠に入れたのはリョータ含めてたった2人だけだった。
そのもう1人も最近は昼休みに練習に行かずこの軒先の下でグループの仲間とクラスの愚痴をこぼしていた。
「球技大会なんて意味あんのかよ。」
「意味あるもなにも僕らほとんどメンバーにすら入ってないから意味すらないと思う。」
「けど、いいよな。2人は補欠に入れて。」
「おいおい、補欠も居心地いいわけじゃないぜ?」
「そうなの?」
「そうだよ。試合や練習の中心はスタメンの奴らだ。補欠枠はその脇役って立ち位置なんだ。補欠枠はスタメンより運動神経鈍い奴が多い。だから、スタメンの奴らは実践練習相手ぐらいにしか使ってくれないんだ。なっ、そうだろ?リョータ。」
会話の流れが急にリョータに振られた。
「あ、うん。そうだな。」
ボーっとしていたリョータは返答するのに遅れた。
会話の内容が頭に入ってきてなかった。
「何ボーっとしてんだよ。」
「あー、なんかね。毎日がつまんねーな〜ってさ・・・。」
リョータの頭の中は自分でもよくわからない虚無感で満たされていた。