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Photo by
koro333
雪の日
雪が降った
少年は
まだ誰も踏み入れていない
未開の地に出会ったかのような
興奮を味わいながら
雪一面の原っぱに
足跡をつけた
サクッ サクッ サクッ
心地良い足音
寒さに震えた子犬は
そんな少年をよそに
暖炉を探した
おやじは明日の会合を心配して
気もそぞろに雪道を歩いて
毛糸の手袋を
道端に落としたまま
帰路についた
それは
おやじにとって特別な存在だった
雪はロマンチストだった
午前零時を過ぎると
雪はしんしんと降り積もり
昨日までの風景と
まるで違う
白銀の世界へ
おやじが落とした手袋を
連れ出した
手袋の中にいた
少年の心は
幻想的な雪景色に感化され
子犬の足跡を追って
一目散におやじに会いに行った
僕はキミの心の中にいた
少年だ
鏡越しに映るおやじに
少年は問いかける
少年?
そんなの
とうの昔に忘れちまったよ
いや誤魔化さないでほしい
色褪せて映る記憶の中に
キミが君らしくあるための
ほんものの心が
そこに…
おやじにそう 語りかけると
心の映写機は
カタカタ回り出した
真っさらな雪の上で
はしゃぎ回る少年と愛犬コリー
無心で雪の中を駆け回り
未来は果てしなく
少年に優しかった
それは紛れもなく
子どもの頃のおやじだった
おやじは
少年の頃の自分と再会した
とめどなく溢れる涙
生まれたてのツグミが
ふたりの再会を祝福した