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消化できない記憶の私

記憶喪失になればいいのに。苦い記憶を思い出すたびに、それをどう取り扱えばいいのかわからずに持て余してしまう。

作家の尹雄大さんにインタビューしてもらいながら、谷中の街を歩くという体験をした。なぜ谷中を選んだかといえば、私の記憶とは何の関係もない街だからだ。晴れて暖かい秋の日で、根津神社では子どもたちが遊んでいた。いま働いていないこと、働きたいという気持ちが湧かないことなどをぽつぽつと話した。

それと、自分の記憶をどう扱ったらいいかわからないということ。20歳の頃から鬱の時期が長くて、その間は辛い思い出が多くて、薄ぼんやりしている。その合間に時々衝動的に行動するので、その度に住んでいる土地や仕事、関わる人たちが変わってきた。その後何年かはその土地を歩くことができなくて、自分の居心地の良い場所がどんどんなくなっていくような気がしていた。消化できない記憶がどんどん積もって、塊になってゴロゴロしている。

何かやりたいことはあるか聞かれたとき、棚を借りて本を売ったり古本市に出たいと思っていることを話した。でも自分にはテーマがないこととか、何かハードルを感じていた。自分の中の誰かが、「そんなことやってどうするの」とか突っ込みを入れてくるのだ。尹さんは、その人と対話したり、あるいは自分の中のやりたいと言ってる人の話をよく聞いてみたらと言ってくれた。突っ込みを入れたり止めたりしてくる人の話ばかり聞いて、やりたいと言ってる人の話はちゃんと聞いたことがないんじゃないかと。

またしばらく歩いて、喫茶店に入って、話をしていた。古くからありそうな、レコードがたくさん並んだ喫茶店。もう約束の時間が終わりそうなときに思いついた。この「消化できない私の記憶」をテーマにして本を並べたらいいかもしれない。どうせ消化できないなら、その時その時に自分の読んだ本をそのまま並べたらいい。その棚を見たり、本を手に取った誰かが何か感じてくれるかもしれないなと思った。何か書いてZINEも作ってみたら?とも言われた。

一見関係ないような2つの悩み事が、この喫茶店でふっと繋がって、答えが天から降りてきたような感じだった。1ヶ月後、ツイッターでつぶやいたことで古本市に誘ってもらった。寒くて古本市には行けなかったし、冬の間は中止になってしまったけど、今月わたしは棚を借りることができた。

相変わらず、積み重ねてきた記憶は消化できないまま、岩のようにゴロゴロと転がっている。
それでも本をそのかわりにして、棚に入れてとりあえず収めてみようと思っている。いつかこの文章もまとめてその棚に入れるつもりだ。

西荻窪のBREWBOOKSに棚を借りました。
いまは私の読んだ本が中心ですが、紹介したい新刊も並べる予定です。
よかったら立ち寄ってみてください。

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#古本屋さん

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