4ハウスの概要 ー全てが生まれ、帰る場所ー
こんにちは、変化球ホロスコープリーディングへようこそ。このアカウントでは初心者が占星術を勉強する際の「なんでそう解釈するの?」という疑問点を元に、王道とは少し違うホロスコープの読み方について深掘りしていこうと思います。
初回は4ハウスの基本的な仕組みと概要を説明しようと思います。占星術を勉強していくと、1ハウスから始まって右回りに12ハウスで終わると習うことが一般的ではないでしょうか。これは個人の人生サイクルをホロスコープにまとめた結果と言えます。1ハウスで個人がこの世界に生まれ、2ハウスで生きていく上での道具を得、3ハウスでその使い方を細かく学ぶということです。ただここまではいいのですが、4ハウスで何故突然、深層心理や内省を表す領域が出てくるのか___。
疑問に思い調べてみた結果、ハウスの流れは人生のサイクルが元になっていると考えるよりもむしろ、古代の人々が観察する中で生まれた自然サイクルが発端になっていると考えた方が理解しやすいことが分かりました。
始まりは地中の最下層
現代社会において、私たちは一日の始まりと聞くと、イメージとして夜明けを思い浮かべることが多いでしょう。昼と夜は交互に訪れ、永遠に昼のままでなければ、夜のままでもない___。言わば、その連続性を微塵も疑いません。しかし古代の人々は必ずしもそうは考えませんでした。
昔の人々にとって夜は人間の世界でなく、神々や死の世界でした。昼とは別個のものであり、当たり前に訪れるものではありません。ギリシャ神話では太陽神であるヘリオスが4頭立ての馬車で毎日太陽を引き上げるという話もあるくらいです。太陽とは神の象徴であり、神が円を描くように旅をすることで、昼と夜が交互に訪れる。その旅の終着点であり、始まりだとされたのが『天底』(太陽が地中の真下に沈む点)です。
太陽に限らず、月も、星々も地平線から昇っては沈んでいきます。私たちはそれが地球の自転によるものだと知識として知っていますが、古代の人々からすれば、地中から毎日生まれ出てくるように見えたのではないでしょうか。天体だけではありません。草木は土中の栄養を糧に大地から生えてくるし、それを食物として生きる動物や私たち人間は死ぬと腐って大地にかえります。全ての出発点は日の出ではなく地球の奥深くから始まる、というのが昔の人々のもう一つの共通認識だったようです。そしてその天底に位置する4ハウスこそが、本来の意味としての出発点であり終着点なのです。
アセンダントとの違い
天底を表す4ハウスが全ての始まりだとすると、ではアセンダントは何を示すのでしょうか?ホロスコープリーディングを勉強する中で、アセンダントは個人の誕生を意味すると一度は習ったことがある方が大半だと思うので、混乱するかと思います。
おさえるポイントとして現代で使われる『誕生』と『始まり』という用語は、必ずしも同じではないということです。4ハウスは物事の始まりであり終わりとなる、言わば円を描く際の起筆と終筆のような場所だとお伝えしました。太陽は天底であるICで生まれ、東のアセンダントから姿を表します。4ハウスで生まれたものがこの世に姿を表す地点がアセンダントということになります。
私たちが『誕生日』という用語を使う時、その人がこの世に出現した月日のことを指します。人の形をして母親の胎内から生まれてきた瞬間ですので、あたかもその人がこの世に存在し始めた最初の時点のような印象を受けます。しかし実際には、母親が受胎した瞬間が物質世界における人間としての始まりなのです。肉体がこの世に出現する以前は直接その存在を目で見て確かめることはできませんが、『誕生日』というのはあくまで直接目に見えるようになった瞬間のことであり、肉体の生成の始まりははるか以前から既に始まっているのです。そしてこの『誕生日』をアセンダント、母親の妊娠を4ハウスと捉えると分かりやすいでしょう。4ハウスはあくまで目に見えることができない根本原理、対象を直接認識できるようになるのはアセンダントからです。そう考えますと、4ハウスの象意は物質的であってはなりません。
4ハウスの象意は本当なのか
太陽がこの世に姿を現す場所がアセンダントであると説明しました。アセンダントとは光が漏れ出る場所、光を発する場所です。そんなアセンダントとスクエアを形成しており、なおかつICに接している4ハウスは個人にとって非常に重要な意味を持ってきます。ホロスコープ全体を一人の個人に例えれば、4ハウスはその人の根っこの部分、価値観、無意識の領域であると言えるでしょう。同じく人間の一生に例えれば、両親、肉体的な死を表すと言えます。一日のサイクルに例えれば、家、帰る場所と言うこともできます。いずれにせよそこに共通するのは、ホッとする感情。慣れ親しんだ環境、安定した環境に身を置くことで外部からの危険がなく、自分が変化し対応する必要がない状況です。
これはあくまで個人的な意見ですが、現代の占星術では4ハウスについての説明が非常に具体的で陳腐なものになっているような気がしてなりません。上記でお話ししたように4ハウスは隠されたハウスであり、簡単に物質的なものに置き換えてはいけないのです。以下で一般的によく説明される4ハウスの象意を説明しますが、個人的に違和感の残るものについては△をつけました。あくまで筆者独自の考えですので、ご注意ください。
①潜在意識、無意識、抑圧された才能や資質。またそれが現れる場所。
ホロスコープは地球から見た主観的な空の様子です。地球全体を一人の個人だと考えると、4ハウスはその人の一番奥深くにある感情や考え、またそれにアクセスできる場所だと考えます。ここには根本的に持ち合わせている価値観なども入りますが、それと同時に抑圧されて意識にのぼってこない無意識の領域も指します。
私たちは社会の中で生活していく上で、生まれ持った才能や資質、幼少期に培った思考方法を元に、その社会の意向に沿うように自らを発達させていきます。極端な例ですが、理不尽な上司を前にして「こいつを刺し殺したい」と思うことは社会的に認められることではありません。実際に行動に移さずとも、言葉に出さずとも、「刺し殺したい」と思ったのを知っているのが自分だけだったとしても、私たちは無意識のうちに自分が生み出した感情に抵抗感を感じます。それが社会的に到底受け入れられるものではないと知っているからです。
コミュニティを成り立たせるためには、多かれ少なかれ個人の意思や行動を縛る必要が出てきます。自分が所属する集団の中で受け入れられなかった思考や感情は無意識として抑制され、影の存在として未発達のまま心の奥深くにしまいこまれています。これを目に見えるような形で取り出す時、社会的には到底認められるものではないので、大きな苦痛感を伴います。私たちにとって、無意識とはある意味閉まったままの方が都合がいいのです。
人間は一見自発的な意思決定により日々行動しているように思われますが、最近の研究で人間の行動の9割以上を無意識によって行なっていることが分かってきました。無意識の力は強大であり、私たちは知らず知らずのうちに影(シャドウ)の存在に支配され、それが求める通りの行動をとるのです。
最初に4ハウスのキーワードは『ホッとする』だとお伝えしましたが、それが必ずしもその人にとっていいことだとは限りません。無意識が私たちに求めるものと、私たちが現実社会でとれる行動が必ずしも一致するとは限らないからです。社会的に受け入れられない、または本人が見たくないと思っている影の存在を意識的に注視し、ありのまま認めることは決して簡単なことではありません。認めて受け入れることができれば楽になるのですが、それは同時にとても大きな苦痛を伴うものであり、大半の人が日々の生活を送る上で無視をしてその存在を認めようとはしない。代わりに手っ取り早くてより苦痛の少ない解決策に出るのです。大衆の気を引く言動を取る、ことあるごとに友人との絆を確かめる、破産するまでブランド物を買いまくる、といったことはあくまで無意識の要求を直視しないための表面的な解決策に過ぎないのです。つまり無意識との一体化を目指す代わりに、一時的に『ホッとする』行動をとっているのです。
4ハウスは安定と安心のハウス。しかし真の意味でこのハウスの恩恵を受けたいと思った時、生皮を剥ぎ取られるような感覚へと変わるでしょう。
②家庭、帰る場所
①ではホロスコープを一人の個人だとした時の心の様子について解説しました。他にも一日のサイクルに見立てて解釈するという方法があります。
私たちの一日は家に始まり、家に終わります。4ハウスが家庭を象徴する場合、このハウスは目に見えない領域を指しますので、社会的に見えにくいプライベートな空間を意味すると考えます。
ペルソナという単語を今では誰しも聞いたことがあるかと思います。社会で生きていく上で設定する仮の自分のことですが、それは何も会社の上司や同僚の前だけで使うものではありません。家庭でも同じことです。家庭とは自然体の自分に戻れる場所という認識が一般的ですが、実際は一人暮らしを除き、夫や妻がいれば配偶者としての役割が、子供がいれば親としての役割が、兄弟がいれば兄弟姉妹としての役割がそれぞれあります。寧ろ社会的な場面とは違い特定の相手と長い付き合いをしていく中で、役割としての人物像が固定化され、容易に脱ぎ着できない状況に陥っているかもしれません。そうなれば仮面としての自分と素の自分との間で同一化が進み、「本当の私はどんな人間だったんだっけ?」ということになりかねません。家という場所は容易には変化しない領域なので、(それは4ハウスのナチュラルサインが蟹座ということからも分かりますが)自分を状況によって変化させなくていいという意味では確かに心安らぐ場所だと言えるでしょう。しかし安心とは得てして呪縛に変わることもあります。4ハウスは安心感を人質に取られることで容易には向き合うことのできないハウスとなり、私たちの殆どがこのハウスの真に意味するものを有効活用できていません。
これは個人的な意見になりますが、家というものを段々と縮小していくと、個人の始まりは布団の上からと言えます。眠りから目覚め眠りに落ちる日々のサイクルを考えれば、4ハウスが睡眠や夢に関係すると解釈をしてもいいような気がします。しかし占星術の本や記事を読んでも、4ハウスが睡眠に関係していると書かれたものはあまり見かけません。
ただ実際の話、4ハウスのみが睡眠に関係しているのかどうかは疑問です。睡眠と一言で言っても、寝落ちの瞬間、目覚めの瞬間、夢の内容、生活習慣など日々のあらゆることに関連しているからです。ホロスコープ上での太陽の動きは、アセンダントからのぼりディセンダントへ沈む時計回りです。24時間を二つに分ける時、夜の時間は下半球のハウスが担当しますから、目覚めと寝落ちの瞬間だけでも1と6ハウスの二つに分けられてもいいのです。あるいは昨今の世の中では睡眠時間も極端に減ってきていますから、1から4ハウスぐらいが妥当かもしれません。
ホロスコープは天空の星々の動きが元になっていますから、物理的な太陽の動きをどこまでリーディングに落とし込むかは占星術の系統でも異なってくるかと思います。いずれにせよ、時代による生活リズムの変化でホロスコープの解釈が変わるか否かはとても興味深いです。皆さんはどう考えますか?
③両親
4ハウスを家庭と表現することができるとすると、自ずと『その人が育った環境』についても言及しなくてはなりません。
幼少期の体験が個人の人格形成に大きな影響を与えることは、心理学の研究により広く認識されるようになりました。人格の土台は10歳前後までに決まると言われていますが、一般的にそのくらいの年齢までは家庭こそが生活の大半を占めています。そして生まれ育った環境で初めて接する大人とはすなわち両親であり、精神的にも物質的にも制約を受けるのは決まって両親(もしくは祖父母)からなのです。4ハウスが個人の土台を表現しているならば、『両親』が含まれることは自明のことであると言えるでしょう。
しかしここで注意していただきたいのが、4ハウスが優先して父親を示すという考え方についてです。これは家庭における家父長制度の名残であり、家系において母親よりも父親が重要視されていたためです。今ではこのような認識も大分薄まりましたが、それでも家計の収入は依然として父親が担うことが多かったり、苗字も父親の姓を名乗ることが多いのが一般的です。このハウスが特に父親との関係性において強調される理由は依然として有効なままでしょう。
一方で、4ハウスが反対に母親を示すという考え方もあります。これは4ハウスのナチュラルサインが蟹座であり、その支配星が月だからです。月は母性と結び付けられます。現実においても、乳幼児期に母親と接する機会が多いことも根拠の一つになっています。
4ハウスとその対抗である10ハウスが、それぞれ両親のどちらを指し示しているかは依然としてはっきりしていません。しかし元来母親と父親は独立した存在ではなく、相互に影響しあった『両親』という枠組みの中で語られることが多いです。特別な理由がない限り、4ハウスがどちらか一方だけを指し示しているとは考えず、二つをセットで考えるべきでしょう。
④不動産、土地 △
この考え方については慎重に吟味せざるを得ません。4ハウスは非物質的なハウスであると最初にお話ししましたが、それはこのハウスが物質世界に入る以前の領域だからであり、ある意味『隠されたハウス』だからです。不動産は土地や地域と密接に結びついたものですし、親から子へ代々受け継がれる物でもあります。しかしそれだけの理由では4ハウスに入れる根拠が薄いでしょう。家を財産として扱うなら寧ろ2ハウスの領域であり、相続ならば8ハウスの方が適切です。『家庭』から連想した結果、住む家自体を4ハウスで扱うようになったという解釈も出来ますが、連想の糸を再現なく広げていってしまうと、やがてはハウスという境目自体がなくなってしまいます。
確かに『家族』と同じように、生まれ育った場所や物質的な環境は人格形成にも多少影響を及ぼします。アパートか一軒家か、部屋は一人部屋だったかどうか、緑豊かな場所で育ったのか、はたまた都会の喧騒の中で育ったのか___。家は人を作るとよく言いますが、それは物理的な環境自体が単独で個人に影響を与えるのではなく、その環境の中で親からどのような教育を受け、どのような行動パターンを強いられてきたかの方が遥かに重要だからです。例えば戸建ての家という生育環境を選ぶ際、価格、立地環境、部屋の数、近所の人間関係など思いつく限りでも様々な理由があります。全てを優先するわけにはいかず、何を捨て、何を選ぶのかは買手の価値観によって異なります。しかし子供はその時親がどのような選択をしたかを逐一覚え、経験として取り込むのです。住居に限らず日々の食事、身だしなみ、生活リズム全てにおいて、子供はその背後にある親の意向を無意識のうちに学び取ります。環境とはあくまで人間の思考の反映物にすぎません。住居とはあくまで両親という大元を具現化した枝葉の一つに過ぎません。子供は両親のあらゆる選択と行動に影響を受けます。そしてあらゆる生育環境が親の思考の具現物である以上、結局は両親という存在に行き着くのです。
幼少期のあらゆる体験・刺激が無意識のうちに性格形成に影響を及ぼしますが、その全てを4ハウスに集約することはできません。あまりにも情報量が膨大だからです。ですので個人にとって、特に影響の大きい事柄だけをこのハウスでは扱います。それが最初の他者である『両親』なのです。
⑤鉱山、鉱物、宝石、石油 △
不動産と同じく、これも一考を要する事柄です。不動産が家庭から派生したとしたら、鉱山・鉱物・石油などはホロスコープを地球全体として見た時の大地の恵み、資源を表すということでしょう。客観的判断を基準とする伝統的占星術には度々出てくるようですが、現代占星術ではあまり見かけません。というのも宝石や石油は客観的な価値基準があるために、必ずしも個人の価値判断や趣向を必要としないからです。
砂漠ではダイヤモンドより水の方が価値が高いという話がありますが、日々の生活もままならない人にとって、宝石はただの石ころに見えるでしょう。「宝石を売ればお金になるのだから欲しい」という人もいますが、それは宝石を手放すことによって得られる金銭、さらに突き詰めれば金銭と引き換えに得られる食べ物や洋服、ひいては生活の余裕、それによって得られる幸福感にこそ価値があるのです。宝石とは一見人類平等に価値の高いもののように思われがちですが、その普遍的な価値基準ゆえに石自体の魅力によって意味付けしているのはほんの一人握りの人間だけです。殆どは「売ればお金になる」「優越感を満たせる」などの間接的で社会的な価値によって値踏みされているのです。客観的な価値判断を持つ物質は、しばしば誰にとっても直接的に価値あるものになることができません。
こんな説明の仕方をすると、この世にあるあらゆる物質はそれ単体では意味などなく、そこから得られる感情的な安心感や満足感のみに価値があるのだと主張したくなるでしょう。それはとても正しい理屈です。しかし宝石や石油などお金にすれば儲かる物質と、食べ物や住居という生理的欲求を満たす物質の間には大きな違いがあります。
マズローの5段階欲求を聞いたことはあるでしょうか?人間の欲求を5段階に分けて説明したものであり、ピラミッドの底辺には食事や睡眠など生命維持に必要な最低限の条件を満たそうとする欲求、『生理的欲求』があります。現代日本では生活水準が飛躍的に上がり、食事と聞けば楽しむためのものという印象を持つ方が多いですが、元来食事とは栄養を摂取するもの。生理的欲求に入ります。
一方宝石や石油は同じく生理的欲求を満たすために使われる場合もあります。お金に換えて食物を買う、などが典型的です。しかしそれ単体では生理的欲求を満たせるものではありません。あくまで社会的な取引が成り立つ前提の話であり、生物の持つ根源的な欲求を間接的にしか満たすことができないのです。ここに両者の違いがあります。4ハウスは根源的なハウスであり、着飾ったり見せびらかしたりするようなハウスではありません。客観性とも相容れない領域です。社会的な基準や覆いを剥ぎ取り、自分が持つ本来の欲求へと回帰するのです。
もちろん占星術家によって考え方は多様にありますが、現代占星術において4ハウスは客観的な価値基準とは無縁であるということを覚えておいてください。
⑥死のプロセス
ホロスコープが円形であることからも分かるように、始まりの場所は終わりの場所でもあります。物質的な個人としての終わりは死を意味します。ホロスコープが個人の一生を表すとすると、これは自我の喪失を意味する精神的なものではなく、現実的な肉体としての死を指します。また広義の意味では晩年、晩年の生活スタイルを扱うこともあります。
しかしこの解釈では色々と違和感が残ります。何しろ占星術では死というテーマを含むハウスが多すぎるのです。真っ先に思いつくのは8ハウスでしょう。これは肉体としての死ではなく、強制的に外部からの力に飲み込まれることで個人としての自我が喪失するということを表しています。1から6ハウスまでは自我に焦点が当たりますが、7ハウスで他者と自分を同等に扱うことを学び、8ハウスでより包括的な自己へと至るための外部的な力が働きます。これは個人より遥かに大きな力であり、抵抗できるものではありません。心理学的な用語を使えば、自分の影(シャドウ、無意識)によって引き起こされた事柄を認識し、より全体的な自己に取り入れるための段階です。
また12ハウスも死を扱います。こちらは肉体や自我の死ではなく、集団への回帰といった意味合いがあります。自己は溶けてなくなり、自分が属する集団の一部となるのです。
このように見ても死を象徴するハウスは3つもあります。それに加え6ハウスの要求に応えることを通して自分中心の世界を捨てる、11ハウスの個人主義からの脱却、なども間接的な言い回しとして小さな死と呼ぶことができるのではないでしょうか。現代社会とは違い、占星術では肉体が滅びることだけが死ではありません。古いものを壊し新しい何かを生み出すことを”死”と呼ぶのなら、各ハウスを進む度に小さな死が待っている。寧ろハウスの本質とは個人の小さな死であると言えるでしょう。
ちなみに8ハウスは物理的な死を意味するという考え方もあります。4ハウスとの違いについて色々調べてみましたが、はっきりしたことは分かりませんでした。
個人的な推測になりますが、考えられるとすれば4ハウスは自発的な死(老衰、自殺等)を示し、8ハウスは外部からの力による死(殺人、交通事故等)を表すという違いです。しかし近年の心理学研究では、外部からの一方的な力による環境の変化が実は個人の無意識によって引き寄せられているという主張もあります。両者は決して線引きされるものではなく、グラデーションのように混ざり合っていると考えるべきでしょう。
また4ハウスは本人の死、8ハウスは親密な他者の死と考えることもできます。ホロスコープの西半球は他者との関わりが強調され、8ハウスのテーマである外部からの強制的な力による自我の喪失は、現実問題大切な人との別れとなって現れることも多いです。しかしここで強調されるのはあくまで親密な他者との別れそれ自体ではなく、その出来事によって変化せざるを得ない自我の方です。ホロスコープは主観的な個人の意識を反映したものであることからも、この考え方を取り入れる場合、親密な他者の死によって古い自我を壊すと解釈するといいと思います。
まとめ
4ハウスのキーワード
・始まりと終わり
・何故かわからないけれどホッとするもの、環境
・変化のない環境で身動きが取れなくなる
・個人や日々の生活の根っこ
・根源的な心の弱さ、葛藤
具体的な事柄
・無意識、抑圧した影の部分
・無意識にとってしまう行動
・価値観、固定観念
・両親、幼少期の生活環境
・家族、家庭
・隠された才能
・肉体の死、晩年の生活スタイル
△ 不動産、土地、鉱山、石油
いかがだったでしょうか。4ハウスは天底に位置していることからも分かるように、個人に与える影響はとてつもなく大きいと言えるでしょう。
次回は4ハウスに位置する太陽について具体的に見ていこうと思います。
参考文献
リズ・グリーン 土星の心理占星学 青土社,2022
デボラ・ホールディング ハウス 天空の神殿 太玄社,2023
神谷充彦 月の占星術技法大全 説話社,2022