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中途半端なライター
副業で、YouTube動画のシナリオライターを始めて、2年と3ヶ月になる。
思えば、最初はフリーランスになりたくて、ライターの仕事を始めようと決意した。いや、正確に言えば、あの時は当時いた職場から逃れたくて「ライターになりたい!」「フリーランスになる!」そう、口先だけで言っていたのだ。
けれど、現実を直視した時、簡単に「フリーランスになる!」と公言した自分を恥じた。甘い。すごく甘かった。私の考えは甘いのに、現実はそう甘くないことを案件をとおして知っていった。
それでも、「副業だろうが、絶対に3年は続けよう」と自分に誓った。今思えば、クラウドソーシングに登録をしてすぐにシナリオの案件をゲットできたあの時は、本当にラッキーだったと思う。
初めてのライターの仕事。分からないことだらけで、それはそれは大変だったが、それ以上にすごく楽しかった。クライアントにも恵まれて、同時にたくさんのライタ―仲間にも恵またことで、日常に彩りができた瞬間でもあった。
『やっぱり、物語を書くことはすごく楽しい』
そんな感情がメキメキと湧きだしたことで、私は過去に一度捨てた、「小説家になりたい」という夢を、もう一度本気で掴もうと決心したのだ。
そして今、最初に決めた「3年」という月日が迫り来ようとしている。
正直、ライターとしてフリーランスになりたいといった願望は、今はもうない。私がなりたいのは、作家であり小説家だ。それはきっと、今後もブレることはないだろう。現に、先日初めて小説の公募に作品を応募したことで、その思いはいっそう強くなった。
私は小説家になりたい。いや、なるんだ絶対に。自分が生きる道は、今はもうそれしか考えられない。
じゃあ、シナリオライターとしての自分はどうしようか。
こんな気持ちなら、3年という月日を待たず、もうスッパリとライターの仕事はやめてしまった方がいいのではないか。生活費は稼がなければいけないから、どうやったって本業はやめられない。本業に副業に、それでいて小説の執筆なんてしていたら、時間に追われる毎日だ。それなら副業でやっているライターの仕事はやめて、その時間を小説の執筆や勉強に費やした方がいい。きっと、誰もがそう思うだろう。私も、そうだ。そう思った。
それに、なんとなく周りにも申し訳なく感じた。
私の周りには、ライターの仕事と真摯に向き合っている人たちがたくさんいる。専業副業関係なく、ライターの仕事をとおして稼ぐこと、叶えたい夢、目標、それらを抱えたうえで、懸命に行動している人がごまんといるのだ。
それなのに、自分は違う。ライターとしての成功を夢見ているわけでもなければ、いくら稼ぐといった目標もない。ライター1本で食べて生きたいとも、もう思わない。なんて中途半端なライターなんだろう。ただたただ、そんな自分を恥じた。
だけどどうしても、ライターをやめることに後ろ髪をひかれる自分がいた。
私は、シナリオライターの仕事が好きなんだ。それに、今の案件もクライアントのことも好きだ。
ありがたいことに、今私はクライアントと、その上にいる代表たちと近い距離で仕事をさせてもらっている。特に、私はその代表2人を心から尊敬している。
当初、こうして成功している人たちは、順風満帆な人生を送ってきたのだろうと私は勝手にそう思っていた。でも、違った。
「学生の時、毎日お弁当を作ってもらえることが当たり前ではない環境にいた」と話す彼の生い立ちは、決して穏やかなものではなかったのだろう。もうお一方も、こうして事業を成功させつつ、自分のもうひとつの夢に向かって動いているような、そんな人だった。そして、その人はただのライターである私にも、いつも親切で丁寧なメッセージをくれる。
すごいなぁと、ただただそう思った。真っ直ぐに生きて、やりたいことをやって、それでいてユーモアと知性まで兼ね備えている彼らの話は、私にとっていつも学びそのものだった。
仕事相手としてはもちろん、ひとりの人間として、私は彼らのことをとても尊敬している。そしてそんな人たちの元で仕事ができている自分を、誇りにも思っているのだ。
*
副業で10万円稼ぐなんて、私には無理だ。ライターとしての生き方や目標も、特にない。シナリオライターとして独立することも、きっとこのままいけばないだろう。
それでも私は、物語を書くことが好きだ。シナリオライターの仕事が好きだ。クライアントのことも大好きで、心から尊敬している。そしてなにより、シナリオライターの仕事をしている自分が好きなのだ。
甘い。やっぱり私は、すごく甘い。
けれど今はまだ、この「好き」の気持ちに忠実に生きたい。もちろん、やるからには誠心誠意、いい作品を作っていくつもりだ。いい作品を作る事に関しては、誰にも負ける気はない。だってそれが唯一、ライターとして自分ができる、周りに対しての恩返しなのだから。
中途半端なまま、私はこれからもシナリオライターの仕事を続けていく。
【今日の独り言】
最近はもう「小説家になる!」「芥川賞をとる!」と言いすぎているせいか、そうなるもんだと信じて疑わない自分がいる。
そのせいで、YouTubeで過去の芥川賞作家さんの受賞会見を見漁って、「自分の時は何を言おうかしら?」みたいなシュミレーションまでしてるの。そんな自分が怖い。ところで受賞会見て、あれやっぱり顔出し必須なのかしら?
【74/100】