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「男子宝石」

 私、夢咲ゆうがデビューして二年、マネージャーが昔のつてを頼りに取ってきてくれた仕事が、とある演歌の歌番組での司会だった。それがきっかけで私の知名度はようやく全国に少しずつ浸透していった。私の歌も、番組のお蔭で皆さまに聴いていただく機会が増えた。
 私の司会は出演者の方からも好評を頂き、三月経つ頃には大御所の方のご自宅でのパーティーにも呼ばれるようになった。そして今日も所作に気を配り、楽しく場を盛り上げていた。
──ピンポーン
 チャイムが鳴った。今日の参加者はもうここに揃っているはずなのにおかしいな。
 私は真剣な面持ちでインターホンに出た。
「はい◯◯です。代理の者ですけど、どなたでしょうか?」
『こちらは週刊「男子宝石」です。その声は夢咲さんですね?お二人は一月ほど前からお付き合いをされてますよね?今日もパーティーではなく、二人だけの密会ですよね?』
 私たちのことがどこから漏れたのか──。
 私は右の拳(こぶし)を怒りで震わせると、玄関にわざと並べて出している知人から譲り受けた大小様々な種類の靴を眺め、なんとかごまかせないかと暫しの間思いを巡らせた──。
                 (了)


このお話はこちらの企画に参加していますφ(..)💡

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