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【連載第10回】オンライン講師の選び方

山口たく(やまぐち・たく)1972年生まれ。都内大手名門進学塾やプロの家庭教師として、15年以上に渡り御三家中や最難関国公私立高校受験を指導。
その後、理想の教育を求めてニュージーランドに教育移住し、Ties. JNZ(Terra International Education Services. JNZ)を設立。これまでに国内外で教えた生徒は数千人にのぼる。オンライン講師歴はすでに10年超え。
現在は『望む場所で、望む仕事をしながら、世界に貢献できる喜びを実感できる未来を与えられる教育』をモットーに、日本人留学生や現地在住日本人子女に指導を行っている。また、10年近い海外子育て・教育の経験を活かし、『ニュージーランド教育&国際バカロレア受験コンサルタント』としてさまざまなメディアに出、教育相談はもちろんのこと、留学や国際バカロレア教育に関するコンサルティングを行っている。二児を子育て中。


次に、オンライン講師の選び方と、プライベートレッスンを受ける際の先生の選び方についてお話ししたいと思います。

家庭教師やプライベートレッスンは集団授業と異なり、自分で先生を選べることが1番の魅力です。子供の性格や学力に合わせられることはもちろん、費用や志望校に合わせて細かく選択できるのは、とてもありがたいことですよね。  

いうまでもないことですが、家庭教師やプライベートレッスンは一対一でのレッスンになるので、子供との相性はとても重要です。そしてそれはオンラインレッスンでも全く変わりません。  

ただ対面レッスンとオンラインでのレッスンでは、集団授業の時と同様、多少違った視点が重要になります。つまり対面でこれまで大きな実績を上げてきた先生が、オンラインレッスンでも同じ結果を残せるかどうかは未知数だということです。  

私もオンラインでのプライベートレッスンをするまで、対面でマンツーマンのレッスンを行なってきました。家庭教師はもちろん、個別指導も行い、その中でトップ校への合格者も輩出してきました。しかしオンラインレッスンを開始したばかりの頃は、なかなか生徒の実力を思うように伸ばせず、自分でもかなり焦燥感を持って指導していたことを昨日のように思い出します。

それは当時自分が、オンラインレッスンを単に、対面からスクリーン越しに変わっただけと認識していたことに原因がありました。これまでもお伝えしてきましたが、オンラインでの授業には対面とは異なる様々な特殊性があります。その点をしっかり理解している先生かどうかということを、親はきちんと見抜いて選択しなければならないのです。  

そこでここでは先生のどんな点をチェックすればいいか、簡単なチェックリストをお伝えしましょう。このリスト内容をより多く満たせば満たすほど、オンラインレッスンの先生としては信頼できると言えます。

【チェックリスト】
1)端末操作に詳しい
2)オンラインシステムに詳しい
3)観察力が高い
4)説明能力が高い
5)コミュニケーション力が高い
6)エンターテイメント性がある(面白い)
7)レッスンが単調でない
 

ではこのリストをひとつずつ簡単に説明していきましょう。

ただ一点、先にお断りしておきますが、しっかり合格に導ける授業ができることであったり、礼儀やマナーがしっかりしていたりといった、そもそも講師としての最低限のスキルがあるということは言うまでもありません。

ここではそうしたスキルを持っていることを前提と、その上でオンラインレッスン講師としての適性をチェックするという視点でご説明するということをご理解の上、読み進めて下さい。

1) 端末操作に詳しい  
オンラインレッスンは言うまでもなく、パソコンやタブレットといった端末を使い、スクリーンを通して行う授業です。そのため、こうした端末操作に慣れていることが講師には必須の要件です。  家でお父さんしかパソコン関係には詳しくないというご家庭は、今でも思いの外多いように思います。そのような場合にもし講師が端末について最低限のことしか知らなかったら、レッスン中に何かあった場合、対応は困難になるでしょう。それでなくともオンラインレッスンは、子供の集中力が対面に比べるとどうしても落ちやすいので、たとえ小さなトラブルでも何度も起こるとそれだけで子供の学習意欲に影響が出る恐れがあります。  

また残念なことですが、日本の講師のデジタルリテラシーは、他の先進国と比べてまだまだ遅れているのが現状です。つまり親が思っているほど、講師側のデジタルスキルが高くないということは十分に起こり得ます。無用なトラブルを避けるためにも、講師の端末操作スキルが十分であることは、事前にしっかり確認しましょう。

2) オンラインシステムに詳しい  
2つ目のチェックポイントは、授業内で駆使するコンテンツシステムを十分に使いこなせるかということです。
オンライン家庭教師やプライベートレッスンは、通常双方向ライブ配信で行われると思います。その際は、ZoomやGoogle meet、Teamといったシステムが使われることでしょう。  既にお話ししましたが、こうしたオンラインライブ配信システムには、チャットや画面共有、オンラインホワイトボードなど、様々な機能がついています。これらのシステムを有効活用することにより、オンラインレッスンのデメリットである集中力の低下を防ぎ、魅力ある授業が可能となるのです。しかし残念ながら実際のオンライン授業を見ると、こうした機能をほとんど活用せず、先生が一方的に話し続けたり、生徒とフリートークのような授業になったりしているケースも散見されます。これではオンラインレッスンは対面以下の効果しか発揮しないことでしょう。  

繰り返しになりますが、オンラインレッスンはその独自のシステムの活用を前提として初めて、対面を超える品質を維持できます。そのためこうしたシステムを講師がしっかり活用できるかを、親は必ず確認する必要があるのです。

3) 観察力が高い  
3つ目のチェックポイントは、先生の観察力です。オンラインレッスンでどうして先生の観察力をチェックするの?と思われたかもしれませんね。その理由は、オンラインレッスンがスクリーン越しに行われるという点にあります。  

対面授業であれば、面と向かって子供を見られるので、生徒の変化に気づきやすいものです。しかしオンラインレッスンではカメラ越しの視覚情報に頼ることになるので、対面よりもよりしっかり生徒の表情や声色などを観察しないと、生徒の授業中の様子を正確に把握できません。  

中には自分からなかなか質問できなかったり、自分が理解できていないことや間違えていることを口にできない生徒もいます。そんな生徒の状態を正しく把握せずに先に進んでしまうと、理解度も下がりますし、生徒の学習意欲やひいては成績にも大きな影響が出るでしょう。  

そこでオンラインレッスンでは講師が子供の様子を対面授業以上に丁寧に細かく観察し、必要に応じてこまめな声がけや質問をすることが必須になります。そのために、講師の観察力の高さを必ずチェックして欲しいのです。

4) 説明能力が高い  
4つ目は、先生の説明能力です。先ほどお話しした観察力の内容と重複する部分もあるのですが、これもスクリーン越しのレッスンという、オンラインレッスンの特徴にその理由があります。  

スクリーン越しの授業はどうしても、対面に比べるとリアル感は落ちます。それは実際に会って話すのと、ビデオ通話で話す違いを考えると、簡単にイメージできると思います。私たちは相手の話を聞く時、単に視覚と聴覚だけに頼るのではなく、他の感覚も総動員して聞いているものです。だからこそ視覚と聴覚にしか訴えかけられないオンラインレッスンでは、生徒に対して対面よりもよりわかりやすく説明する必要があるのです。  

こう考えると対面と同じクオリティで、ホワイトボードに向かって淡々と説明するだけの先生は選んではいけないことが簡単におわかりいただけると思います。ちょっとくどいかなと思うくらい、正確で丁寧に説明できるスキルがある先生が、オンラインレッスンでは適任です。

5) コミュニケーション力が高い  
5つ目のチェックポイントは、コミュニケーション力の高さです。これは生徒のみならず、保護者とのコミュニケーション力も含みます。  

オンラインレッスンは直接顔を合わせない分、対面授業と比べて親しみが伝わりにくく、その分信頼関係を気づくのも簡単ではない傾向にあります。そのギャップを埋めるために必要なのが、先生のコミュニケーションスキルです。  

一度も直接会ったことがない先生に対して、生徒が信頼を寄せるためには、先生の説明能力に加えて、傾聴力もとても大切です。塾の先生は生徒にとってはとても不思議な存在で、子供は一度信頼を寄せると、学校の先生にも親にも言えないことを打ち明けてくれたりします。私も家庭や学校での悩み、進路の悩み、将来の夢などについて、生徒から相談を受け続けてきました。それはオンラインレッスンの生徒でも同じですが、そうした信頼関係を築くことができたのは、常に生徒の声に耳を傾け、深いコミュニケーションを心がけてきたからだと思います。  

また保護者とのコミュニケーション力も重要です。子供の学力状況や学習計画、授業中に感じた子供の様子などをどの程度、言葉で正確に伝えられるかは、スクリーン越しの会話ではとても大切になります。そしてその情報が正確に伝われば伝わるほど、家庭と講師との生徒サポートにおける二人三脚がうまく機能し、ひいては受験の成否にも大きく関わります。こうした点からも、講師のコミュニケーションスキルチェックは必須だと思います。

6) エンターテイメント性がある(面白い)  
最後のチェックポイントは、授業のエンタメ性です。授業にエンタメ性なんて不要だというお叱りの声を頂きそうですが、それでも私はオンラインレッスンには、どうしてもエンタメ性は重要だと考えています。その理由もまた、スクリーン越しの授業故、子供の集中力維持が、対面授業より困難だからです。  

エンタメ性と言っても、雑談や冗談を授業内でたくさんすべきだと言っている訳ではありません(一言付け加えると、適度な雑談や冗談は子供の学習効率向上には「必須」の要素だと私は考えています)。ここでのエンタメ性とは、子供を惹きつける先生のアプローチのことです。  

同じ内容を説明しても、ただ教科書をなぞるだけだったり、知識を詳しく紹介するだけでは子供は飽きてしまいます。ましてや家庭教師やプライベートレッスンはマンツーマン指導なのですから、説明時には生徒の性格に合わせて、いかに生徒が興味を持って聞けるかを意識して説明する必要があります。  

この点、スクリーン越しのオンラインレッスンは集中力が落ちやすいので、このエンタメ性は極めて重要な要素と言えます。ただ性格に淡々と説明するタイプの先生では、よほど集中力の高い子でないとオンラインでは厳しいですので、保護者はしっかりこの点をチェックしたいものです。  

さて、いかがでしたでしょうか。先生を選ぶときに注目すべき6つの視点、ご理解いただけたでしょうか。ひょっとしたら、基準はなんとなく分かったけれど、実際にどんな点に注意すればいいか、イメージがわかない方もいるかもしれませんね。  

ご安心ください。次の項では、そうした方のためにより掘り下げて、トライアルでの具体的なチェック方法をお伝えしていきます。


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