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【連載第3回】広がる様々なオンライン学習の形

山口たく(やまぐち・たく)1972年生まれ。都内大手名門進学塾やプロの家庭教師として、15年以上に渡り御三家中や最難関国公私立高校受験を指導。
その後、理想の教育を求めてニュージーランドに教育移住し、Ties. JNZ(Terra International Education Services. JNZ)を設立。これまでに国内外で教えた生徒は数千人にのぼる。
現在は『望む場所で、望む仕事をしながら、世界に貢献できる喜びを実感できる未来を与えられる教育』をモットーに、日本人留学生や現地在住日本人子女に指導を行っている。また、10年近い海外子育て・教育の経験を活かし、『ニュージーランド教育&国際バカロレア受験コンサルタント』としてさまざまなメディアに出、教育相談はもちろんのこと、留学や国際バカロレア教育に関するコンサルティングを行っている。2児の父。

オンライン学習には大きく分けて3つのタイプがある

 ここからは、中学受験におけるオンライン学習の様々な形についてみていきたいと思います。すでに受験塾などでもオンラインのシステムが導入され始めており、それぞれが工夫を凝らして学習効率を上げようと努力しています。その形は塾によってそれぞれで、百花騒乱的なイメージを持っている方も少なくないのではないでしょうか。
 でもオンライン学習は大きく分けて3つのタイプに分類でき、現在導入が始まっている各塾のシステムも、そのいずれかに過ぎません。逆に言えば、この3つのタイプの基本的な機能や利用法さえ理解できれば、塾のシステムについてももっとクリアになってくるはずです。

自宅での学習画像


 このオンライン学習の3つのタイプとは、以下のものになります。


 ① 双方向のライブ配信
 ② 動画配信
 ③ チャット対応


 では順にその概要をお話ししましょう。

1)双方向のライブ配信
 双方向のライブ配信は、イメージとしては以前から大手予備校が実施してきた「サテライト授業」が一番近い気がします。実際に教室で実施されている授業を、離れた場所からスクリーンを通して受講できる、そんなイメージです。でもこのサテライト授業は基本先生の授業を生徒が一方的に聞くだけで、生徒側から質問をしたりすることはできません。


 この点、双方向ライブ配信は、その名の通り「双方向」ですので、先生の授業を聞くだけでなく、生徒側からも授業に参加でき、インタラクティブな活動が可能になることが特徴です。それは言ってみれば教室がスクリーンの中にそのまま現れたと言っても過言ではありません。そしてそれはいうまでもなく、先生も生徒も場所に一切制約されることなく、いつでもスクリーン上で授業が開催できることを意味します。

いつでもどこでも受講継続
 私もオンラインで授業を行なっていますが、生徒が数カ国から参加することもあります。例えば生徒が日本に一時帰国していたり、家族旅行で他国へ行っていた時なども、双方ライブ配信の授業ならインターネット環境さえあれば、いつでも問題なく参加可能です。

既存の塾の教室に通っていたら、何か予定が入る度に授業との調整が必要となりますし、急用で通塾が困難となり、一定期間休まなければいけなくなった場合でも、オンラインなら遅れることなく受講継続ができるでしょう。

 ではこの双方向ライブ配信では、具体的にどのように行うのでしょうか。オンラインというと、何か設定などが難しく、少し敷居が高い気がしてしましませんか。実際に私がオンラインの授業をお勧めすると、多くの保護者の方はそうおっしゃいます。でも最低限のパソコン操作(サイトの閲覧や検索、ソフトやアプリのダウンロードなど)ができれば、実際にやってみると思いの外簡単なものです。

ビデオチャットサービス
 双方向ライブ配信をするためには、パソコン上で使用できるビデオチャットサービスのダウンロードが必要です。かつてはMicrosoftが運営しているSkypeがとても有名でしたが、最近のオンライン教育の拡大に伴って、Zoomというシステムも急速に広がりました。他にもGoogleが運営しているHangoutなども広く普及し始めていますし、先述したMicrosoftも最近、Teamという新しいシステムを充実させ始めています。

また、手軽なものではLineやMessenger、Instagramなどでも実施が可能です。こう考えると、双方向ライブ配信などが少しは身近に感じられるのではないでしょうか。もちろんより充実したコンテンツの授業を求めるのであれば、LineやInstagramなどでは不十分ですが、こうしたものを試しておくことで、敷居はとても低く感じると思いますよ。


 こうしたビデオチャットサービスは、アプリさえ一度ダウンロードしてしまえば、その後は簡単に使用可能です。サービスによって多少の違いはありますが、基本はサービス提供者(塾や家庭教師など)からメールで「ID」と呼ばれるクラス入場用のリンクとパスワードが送られてきますので、授業時間になったらそのリンクをクリックし、パスワードを入力して入場するだけで、すぐ授業が受けられるようになります。


 双方向ライブ配信では、プライベート授業はもちろんのこと、集団授業にも対応可能です。システムによっては100人近い人が一斉に参加可能なものまであります。この双方向ライブ配信を使えば、家庭教師や個別指導のような「プライベートレッスン再現型」はもちろんのこと、通常の塾と同じように黒板やホワイトボードの前に先生が立って説明する「集団授業再現型」も可能ですし、先生がオンラインホワイトボードを使って説明する「少人数グループ授業再現型」にも対応できます。  


 また双方向ライブ配信は、質問対応にも活用できます。言ってみれば「バーチャル質問室」ですね。オンライン上の質問室に入室し、先生にわからないところを自由に質問する。自分の質問だけを聞くのもいいですが、他の生徒の質問を聞くことで新しい発見があるのも、通常の塾の質問室と同じです。


 さらに保護者向けのイベントや塾の定期的な報告会、さらに個別の保護者とのカウンセリングや面談も可能です。オンラインなら通常忙しくて参加できないお父さんも、仕事の合間にスマホから参加、なんてことも可能になります。また直接で向くことも不要ですので、時間もお金も節約できる。こう考えると、こうした保護者向けの対応は今後全て双方向ライブ配信形式に切り替えたほうがいいのではないかと、心から思ってしまいます。

2)動画配信
 続いては動画配信ですが、こちらはすっかりお馴染みになったYoutubeなどの動画学習が一番イメージを持ちやすいと思います。一番シンプルなものは、塾の授業を録画し、それを生徒に配信して視聴させるパターン。品質にこだわり過ぎなければ、カメラとマイクさえあれば簡単に実行できるので、多くの塾で導入されているのではないでしょうか。


 この動画配信では、こうした通常の教室授業配信のほかにも、様々な活用法があります。特に有効だと私が考えるのは、理科の実験など実際に塾の授業では気軽にできないものや、地理や歴史など実際にその場所を見た方が効果が上がるもの、そして単調になりがちな暗記分野などへの導入です。詳しい使用方法は、後ほど項を改めて説明しますね。

動画配信サービスは時間に縛られることがない
 動画配信の最大の特徴は、時間に縛られることなく自分のペースで学べるということです。ライブ配信の授業では、授業中に聞き落とした部分があってもどんどん進んでしまいますが、動画であれば一旦一時停止して、聞き逃したところを再度聞き直すことができます。また分かりにくい部分を集中的に何度も聞くと言った利用法もでき、特に苦手科目の学習には効果的です。


 さらにライブ配信と違って決まった時間に見る必要もありませんし、授業もまとめて見る必要がないので、ご飯前の時間や就寝食前、あるいは移動時間などの細切れ時間を有効に活用できるのも魅力的な点と言えるでしょう。


 最近では塾が配信しているもの以外にも、Youtubeなどの無料動画コンテンツ内に優れた内容のものもたくさん見つけられます。Youtubeというと娯楽コンテンツというイメージが強い方もいると思いますが、最近では塾講師の方や大手の塾なども、多くの動画をYoutube上に配信しており、中には優良顔負けの高品質な授業動画も少なくありません。こうしたコンテンツをどんどん活用することで、リーズナブルでかつ楽しみながら中学受験をしていけば、子供にとっても親にとってもストレスの少ない受験生活が遅れるのではないでしょうか。


 Youtubeは海外の教育機関でも積極的に活用されるようになってきています。こうした動きに遅れていかないためにも、まず親自身が新しい教育の形への偏見を持たず、柔軟にどんどん取り入れていく姿勢を持ちたいものですね。

3)チャット対応
 最後にご紹介するのが、オンライン上のチャット機能を使った学習法です。これはコロナウイルス拡大以前から、ニュージーランドの学校で広く普及していたシステムで、他の欧米各国でも使用されています。ここでは一例を挙げて、そのシステムがどう機能するのか、イメージを持っていただきたいと思います。

Google document
 一番メジャーなシステムは、Google documentでしょう。これはビジネスシーンはもちろんのこと、学校でも広く使用されているシステムです。マイクロソフトの「Word」のオンライン版と言えば、少しはイメージが湧くでしょうか。


 ニュージーランドの学校では、このGoogle documentを使って様々な課題が出されます。これらはメールやGoogle classroomなどのオンライン生徒管理システムを通じて、生徒に配信されることが多いです。

このGoogle documentの優れている点は、その課題を先生と生徒がリアルタイムで共有できる点にあります。そのため生徒の進捗を先生はリアルタイムで把握でき、コメント機能を使ってアドバイスも簡単にできます。一方の生徒もコメント機能で質問が可能なので、実に効率的に課題を進めていくことが可能です。生徒の質問に対しては、コメントで返信も出来ますし、動画で説明したもののリンクを貼り付けることも可能なので、生徒は先生の説明動画を見て理解することもできます。


 また最近は動画を使ったチャット機能を持つシステムもあります。すでに日本の学校でも使用されているようですが、スマホさえあれば簡単にできるので、とても気軽に使えます。

例えば算数で分からない問題を参考書やノートをスマホで質問する動画を撮ってそれを先生におり、それに先生が動画で解説したものを返信すると言った具合です。これも動画に親しんでいる子供たちには、とてもスムーズに受け入れられる方法ではないかと思います。私も実際に授業で取り入れていますが、子供たちはとても喜んで使ってくれています。

 いかがでしたでしょうか。少しはオンライン学習のイメージが掴めてきたでしょうか。こうしたオンライン学習は中学受験にも非常に有効であるだけでなく、受験後にも大きなアドバンテージがあります。

次の項では、中学受験をオンラインで実施することで、受験後にどんなメリットが生じるのかについて説明したいと思います。

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