ホラー日記『電灯』

残業が長引いて終電で帰ってきた。駅から出て住宅街に入ると、電灯の灯りが道を照らす以外は真っ暗だ。人の気配もなく、音もしない。
《変質者出ませんように》
そう願っていたのに、家の方角の電灯下に誰か立っている。気持ち悪い。
(道変えようかな)
その時、ぱちぱち音が鳴ると共に光が明滅した。電灯が切れかかっているようだ。
(え?)
次々と道に並ぶ電灯が明滅していき、消えていく。ひとつ、ふたつと明かりが消え、そしてついに全てが消えて真っ暗になった。
「うっそ……」
ねっとりとした風が吹く。何にも見えなくなった今、なんでもないはずの道が何かの生き物の体内みたいに得体がしれなかった。
仕方なく、スマホの灯りで道を照らした。

誰か、いた。

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