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短話連作『終末カフェ』6
「CLOSED SATURN」
惑星が次々に消えていくらしい。初めは月。それから火星。金星の消滅が確認されて、近所のスーパーは大騒ぎだった。
「まさか」
いまだに信じていない人もいた。その人たちにして見ればこれはただの悪い冗談で、マスメディアに対して大いに憤った。
「ありえない」
頭を抱える人達もいた。天体が前触れもなく消えるなんてありえない。それでも実際に星は観測できなくなっていた。得体の知れない恐怖があった。
「どうしたらいいの?」
怯える人々は物資調達に走った。或いは祈った。科学か宗教か、信じるものがある人はそれに縋った。
「さようなら」
諦めた人は今日の青空を堪能した。家族と過ごし、笑顔で美味しいものを食べ、美しいものを見た。かけがえのない素晴らしい日に感謝すると、大量の睡眠薬を飲み下して、全てに別れを告げながら夢の世界へと旅立った。
どんなふうに過ごそうと、1日はもう終わる。
今日は土曜日。
土星はひっそりと消えた。