売春防止法 検挙事例について
⚠扱うテーマの性質上、一部性的な表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
女性が売春することを知りながら、場所を提供した罪に問われている大分県別府市の風俗店の元経営者など2人の男の初公判が、22日開かれ、2人は起訴内容を全面的に認めました。 売春防止法違反の罪に問われているのは、風俗店の元経営者と元店長です。 起訴状などによりますと、2人は2023年1月、別府市のソープランドで従業員の30代の女性に対して、売春する目的と知りながら店の個室を提供したとされています。 大分地裁で開かれた22日の初公判で、2人は起訴内容を認めました。 検察側は「組織的な犯行で、善良な風俗を乱した程度が大きかった」などと指摘し、元経営者に懲役1年8か月、罰金20万円、元店長に懲役1年6か月、罰金15万円を求刑しました。
別府のソープランドが摘発されました。
売春防止法、いわゆる売防(バイボウ)で摘発されてしまいました。
このnoteに目を通してくださっている皆さんは、ソープランド=本番行為アリの風俗店だという認識があるのではないでしょうか。
ソープランドって全ての店舗で売春してない?摘発される店舗とされない店舗の違いは?売春ってなに?場所提供ってあるけどどういうこと?など、ソープランドの運営に携わる皆様の期待にお応えすべく、今回は少し詳しめに解説していきます。
1.そもそもソープランドってなに?
ソープランドといえば風俗というワードがすぐに連想されがちですが、風営法で定める所によると、風俗営業の中の性風俗関連特殊営業に分類されます。風俗と性風俗は分けられているのですね。
さらに、ソープランドは性風俗関連特殊営業の中の店舗型性風俗特殊営業に分類されます。ちなみに店舗型ファッションヘルスもこの分類ですね。
ソープランド(店舗型性風俗特殊営業)では、どのような営業を行うことができるのでしょうか。以下、法の規定を引用します。
法律の条文だけ見てもよくわかりませんが、要は「個室浴場の中で、異性のお客様に接触する」サービスを提供する営業を行うことができます。
条文には売春というワードはもちろん、売春を意味する性行為・本番というワードはどこにも載っていません。
つまり、ソープランドで行われている売春行為は、法律には書かれていないけれど暗黙の了解のもと行われているのですね。
しかし、ソープランドに現在従事されている方や、利用されたことのある方からすればソープランドが本番アリで、ヘルスが本番ナシという認識をお持ちのことでしょう。
警察の方もそうですよ。元ソープランド事業者によると、とある件で警察署に呼び出され、事情聴取の一環で事業内容について問われた際に「個室内で起きていることには一切関知していないです」「飽くまで自由恋愛です」などと説明し続けたそうです。
すると警察の方から「ソープで本番してることなんか誰でもわかってるんだから、もういいよそういうの」と流されて、そのまま話が進んでいったそうです。売春していると説明していたらどうなっていたのでしょうか・・・。
話が逸れてしまいましたが、どうやらソープランドで行われている売春行為は公然の秘密であるようです。
ならばなぜ、摘発される店舗とされない店舗があるのでしょうか。また、どのような行為が売春防止法に抵触する行為となるのでしょうか。
売春防止法から見ていきましょう。
2. 売春防止法って?
売春防止法の第一条、目的規定から見ていきます。
売春は人としての尊厳を害するし性道徳にも反するし、まっとうな暮らしを乱すものなんだと、かなり強い言葉で非難しています。
処罰される対象は、売春を助長する行為等です。
そして、売春をしている又は売春をするおそれのある女性に関して、婦人補導院に収容して更生に必要な措置をとることで、売春を防ぐことを目的として制定された法律です。
売る人も買う人も処罰されません。処罰されるのは、売春を助長する行為等です。例えば「売春する女性」と「売春させるための場所を提供するソープランド経営者」を「仲介したスカウト」がいたとき、処罰されるのは場所を提供したソープランド経営者と仲介したスカウトです。当事者である女性や、女性のお客は処罰されません。
ただし、売春している女性が売春の相手を探して勧誘したり、客待ちをした場合などには処罰されます。また、ソープランドなどでキャスト兼内勤として従事している女性も売春を助長した者として処罰されます。
次に売春という行為について、法律を見てみましょう。
つまり、対償(お金に限らず、物や借金の猶予・免除なども含む)を受けて、又は受ける約束をして不特定の(個性に着目せず、対償を得ることのみを目的としている)男性と性交をすることが売春と規定されているのですね。
性交とは、男性器を女性器に挿入する行為を指すと解されています。
つまり、性交類似行為(フェラ・素股・手コキ・肛門)は性交ではありません。なので、ソープランドと同じ店舗型性風俗特殊営業でもヘルスは売春防止法違反で検挙されないのです(性交していたらもちろん検挙されます)。
また、女性、女性と繰り返し出てきますが、男性は性交をなし得ないため、売春防止法にはいわゆる「男娼」は含まれません。
これより、売春防止法で罰則が規定されているもので代表的な例を見ていきます。
⑴売春の場所提供の罪
本稿TOPでご紹介したニュースは、こちらの場所提供の罪に問われています。ソープランドではこの場所提供で検挙されることが多い印象です。また、無届でアパートの一室などを使用して売春させた者も場所提供の罪に該当します。
ソープランドの場合、言い逃れのしようがないとも言えます。
「情を知つて」とは、提供する場所で売春が行われることを認識していることです。
「提供」とは、売春に利用できる状態に置くことをいいます。なお、建物に限らず自動車や船舶なども含まれます。
3年以下の懲役または10万円以下の罰金刑に処されます。
⑵管理売春の罪
こちらもソープランドでの検挙事例が多い印象ですね。店泊や待機の態様によっては該当する店舗も多いのではないでしょうか。
「居住させ」とは、売春する者を経営者側が用意した部屋に居住させることをいいます。でも住んでないよと思われるかもしれませんが、「日常生活の全部又は相当部分に及ぶ程度に所在場所を拘束すること」と解されています。
どのように判断されるのかというと、勤務時間の短調、待機場所からの出入りの自由の程度、遅刻や欠勤に対する罰金の取り決めはあるのかなど、複数の考慮事項があり、個別具体的に判断されることになります。
10年以下の懲役または30万円以下の罰金刑に処されます。
⑶周旋等の罪
周旋(しゅうせん)と読みます。広告を打ってお客を呼んだり、準備ができたキャストへお客を案内するソープランドの従業員などがこちらに該当します。
「売春の周旋」とは、売春をしようとする女性とその相手方となるお客との間に立って、売春が行われるようにする一切の行為をいいます。
2年以下の懲役または5万円以下の罰金に処されます。
⑷売春をさせる契約の罪
こちらの罪は、経営者が売春をする女性に売春をさせる契約を締結した時点で成立します。
具体的には、不特定の男性と性交すること・性交の対償が決まっていることの2点があげられます。
また、暗黙の合意でも契約は成立したと解されています。
3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処されます。
⑸勧誘等の罪
こちらは、最近話題になっている立ちんぼなどの売春をする女性自身が該当します。一が勧誘、二が客待ち、三が誘引です。
「勧誘」とは、特定の人に対して売春の相手方となるように働きかける行為です。言葉だけでなく、ジェスチャーなども含まれます。
「客待ち」とは、公衆の目に触れるような方法で、売春する女性がお客からの売春の申し込みを待つ行為です。服装や表情、通りすがりの男性にしきりに目を合わせようとするなどの態様で客待ちか否か判断されます。
「誘引」とは、「本番2万円ホテル代別でどうですか」などの文言をSNSやアプリ、掲示板などに書き込み、お客を募集することです。
6月以下の懲役または1万円以下の罰金に処されます。
3.検挙される店舗・されない店舗の違いは?
検挙される店舗・されない店舗の違いという見出しから始まりましたが、店舗型性風俗特殊営業、とりわけソープランドについては、正直どの店舗も
いつ摘発されたとしてもおかしくありません。
⑴売春防止法違反の検挙数とソープランドの数
まずはデータを見ていきましょう。
以下に、警察庁が発表した平成29年から令和3年までの売春防止法違反による検挙件数のデータを抜粋しています。
売春防止法違反の欄をご確認ください。
目安としてここ数年はおよそ400件程度検挙されていることがわかります。
上記のデータには記載されていませんが、平成25年以前の検挙件数は毎年のように1,000件を超えており、そこから減少していきおよそ400件台で推移しています。今後もこの傾向が続くのかは不明ですが、今は年に400件程度検挙されているのだなという認識をお持ちいただければと思います。
続いて、全国にソープランドは何店舗ほどあるのでしょうか。
以下に、警察庁が発表した平成29年から令和3年までの全国の店舗型性風俗特殊営業の届出数(営業所数)のデータを抜粋しています。
令和3年の1号(ソープランド等)をご確認ください。
「えっ全国にソープランドは1185件しかないのに、1年で400件程度も売春防止法で検挙されてるの?」と驚かれたのではないでしょうか。
これは、先ほど解説したとおり売春防止法で検挙されているのはソープランドだけではないからです。スカウトやアパートの一室を使用して売春させた者なども検挙され、検挙件数に含まれています。
とはいえ、売春行為をさせるお仕事であるソープランドが置かれている状況はかなり危険であるとご認識いただけのではないでしょうか。
⑵こんな店舗は検挙されやすい
さて、データを参照したところで筆者が現場で見聞きした経験から私見を述べさせていただくと、以下のような店舗は特に摘発の危険性が高いといえます。
金銭トラブルや労使トラブルを慢性的に抱えており、退店したキャストや辞めさせてもらえない従業員からの通報・相談・苦情が多い店舗
反社会的勢力が運営または関与している店舗
4.最後に
ソープランドや売春防止法について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。少しだけボリュームがあったと感じられたのではないでしょうか。
ソープランドについては、営業の性質上どうしても摘発のリスクは避けられません。これから先の時代、厳しい展開が待ち受けている関係者様も少なからずいらっしゃることと存じます。
そんなときに、弊所の存在を思い出していただけるとお力になれることがあるかもしれません。
行政書士 風営法務共同事務所では夜職専門行政書士が24時間体制にてご相談対応を承っております。
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