やられちゃった一言
たった一言にやられちゃう。
音楽を聴いてい、そんなことがたまにある。
そのワンセンテンス。若しくは幾つかの言葉の連なりに、すっかりやられてしまうのだ。
その一言だけで、その曲が好きになっちゃう。そのアーティストの全曲が好きになってしまうことすらある。
あの日あの時の心を、これ以上ない表現で言葉として紡ぎだしてくれている。自分が漠然と思い感じていたことを、じつに見事に言い表してくれた言葉たち。大して意味のない語呂合わせの様な言葉でも、そのセンスが抜群に良い、ってこともあるかな。
兎に角、その一つの言葉に心を射抜かれるのだ。
おれが好きになるパターンは、ほぼこの「一言」によるノックアウトパターンのように思う。その一言でその人が好きになり、好きになることで更に読み込み、また違った一言に出会う。
「なんなんだこの人は、なぜこんな素敵な言葉たちを見つけられるのだ」
そしてどんどん好きになって行く。
曲を好きになる時、メロディーなのか、詩が勝るのかをたまに友人達と話すことがある。おれは、お分かりかと思うが、そこで歌われる「詩」重視派。もちろんメロディーにも感動するけど、そこに素敵な詩がのっていないと少し冷める。
以前、TV番組で偶然観たのだが、井上陽水が語った話が面白かった。
その番組の中、進行役がこんな質問を陽水に投げかける。その返答がなんだか上手で得心したのだ。
進行役 「陽水さんが曲を創るとき、詩とメロディーとどちらを大切にしますか」
陽水 「それは本当に難しい質問だね。ん〜、お笑いでいうと、ツカミが重要かオチの方が重要か、なかなか言えないよね。まあしいて言えば詩の方なのかな…」
そんなやり取りだったと記憶している。
言い得て妙だ。流石は陽水、と唸ってしまった。ますます陽水の曲が好きになっちゃった。
こうした一言を紡ぎ出せるのは、もちろん才能もあると思うのだけれど、その言葉に出会う運もあるのではないだろうか。苦しんで苦しんで辿り着いた一言。それは当然あるだろう。同時に、本人も予期せぬかたちでその一言に出会ってしまう。そんなこともあるのではないか。それにしたって、いつも詩に向き合っているからこその出会いなのだとは思うけど。
自分にも、いつかそんな言葉との出会いが訪れてくれないものだろうか。偶然の出会いでもなければ、そんな言葉を見つけられそうにないから。
洋楽は、またちょっと違った聴き方をするのだけれど、それはまた次の機会に。