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初雪の使者
クルマのフロントガラスの向こう、何かが舞っている。
ゴミかしら…
ガラスにふわりと降りてきた。
「雪虫か」
思わず声が漏れる。
いよいよ冬になるんだなあ。
心の中でつぶやいた。
こいつが飛びはじめると、初雪が近い。
小さな頃からそう覚えて来た。
誰に教わった訳でもなく、皆、そうしたものだと自然に理解している。
日が足早に傾き出す時間。
ぽつりぽつりと点灯し始めたヘッドライト。
小さな小さな雪虫が、この北の街をふわりふわりと浮遊する。
幾人もがきっとそれに気が付いていることだろう。
そして、また訪れる冬と、過ぎ去った冬を思い空を見上げる。
異常なほど暑かった今年の夏。
疲れ切ってしまったこの街は、今年の初雪をどう思うだろう。
信号が青に変わり、ゆっくりと前に進む。
フロントガラスの雪虫は、もうどこかに行ってしまった。