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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【10-12月期調査①】緊急事態宣言が解除されたにもかかわらず、家計状況が悪化?その原因は
企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室
このシリーズでは、WEBアンケート定点観測調査(年4回実施)をもとに、日本の消費者の消費・心理・生活がコロナ禍でどのように変化したのかについて、気になるトピックを調査ごとにお届けしています。
当シリーズ投稿の趣旨や出典元の消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。
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緊急事態宣言が解除されたにもかかわらず、家計状況が悪化?
四半期前(3か月前)と比較して、回答者自身が感じる家計状況がどのように変化したかを、「改善した」「やや改善した」「変わらない」「やや悪化した」「悪化した」の5段階で質問し、幸福感と家計状況の動向指数(DI値)を算出した。下図は、その全体の結果を示したものである。
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家計状況DIは、今回の10-12月期調査で、今年の1-3月期以来、3期ぶりに低下した。これまで、順調に右肩上がりで、上昇を続けてきた家計状況DIだが、ここにきて改善の限界が見えてきた可能性がある。
家計状況DIは、コロナ禍が始まって、調査を開始した昨年4-6月期以来、右肩上がりの回復傾向にある。また、今年1-3月期に一度低下した。昨年4-6月期と今年1-3月期に共通しているのは、緊急事態宣言が出されていたことである。すなわち、これまで家計状況DIは、緊急事態宣言が出され、外出の自粛など、行動に制限が欠けられた際に悪化するという傾向があった。
しかし今回の10-12月期、第5波が収束し、緊急事態宣言が解除されているにもかかわらず、再び家計状況DIが低下する結果となった。これまで順調に改善してきたが、ここにきて改善の限界に達してしまった可能性がある。現在の感染状況は、ほとんど気にならないレベルとなっているため、家計状況の改善を阻んでいる要因は、コロナ以外と考えられる。いくつか、その要因と考えられるものを挙げてみたい。
宣言明けでも家計状況が改善しない原因は?
まず一つ目が、8月の第5波の感染拡大の影響が、今回に反映されている可能性があることだ。第5波は9月に入って収束し始めたが、全面的に行動自粛要請が解かれたのは10月に入ってからであり、10月分の収入に影響した可能性がある。
二つ目は、今回外出が活発になったことにより、外出に伴う出費がかさみ、これまでは自粛で意識されてこなかった家計の逼迫状況が、再認識された可能性がある。家計の状況とは、収入の減少だけでなく、支出の増加によっても悪化するという、つい忘れてしまいがちな視点だ。
そして最後は、エネルギー価格高騰に伴う物価の上昇だ。ガソリン価格を中心に、食料品などの値上げが続いている。これにより、家計状況の先行きに対して懸念が広まった可能性がある。
こうした要因により、感染拡大が生じていない今回でも、家計状況の悪化が強まった可能性が考えられる。感染状況が落ち着き、徐々に経済活動が再開されつつある中で、さらに経済の好循環が刺激されれば、今後さらに改善していく余地はあるだろう。
出典:「コロナ禍の消費者心理・消費・生活を捉える定点調査2021」
※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。
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