〈26.ジェームズブラウンを知らない?〉

 僕はニューヨークの高校生たちに「慎吾ママのオハロック」という曲のPVを見せてみた。SMAPの香取慎吾さんが歌ってる曲だった。実はこの曲のPVの中にジェームズブラウンも出てくる。

 ジェームズブラウンが出てきた所で教室に歓声が巻き起こった。

「スゲェ!」

 予想通りみんな驚いてるみたいだった。と思いきや、ハックくんから意外な発言が出た。

「J-POPのPVに出れるなんてこの黒人すごいね。」

 僕は説明した。

「えっ!? 何言ってるの? この人ジェームズブラウンだよ」

「ジェームズブラウンって誰? 名前だけはどっかで聴いたことあるけど」

「最近のニューヨーカーはジェームズブラウンを知らないのか!」

 僕は驚いた。


 ハックくんはこう言った。

「アメリカにもニューヨークにも日本好きな人は大勢いるものの、すごくバカにされて「ダセェ」って言われる。特に黒人社会で日本好きって言ったら大変だ。もう身の危険を感じるくらいバカにされる」


 ダイアナさんはこう言った。

「黒人社会では黒人が白人らしく振る舞うのもバカにされるのよね」

「白人らしい振る舞いって何?」

 アンジュちゃんが聞いた。

「普通のビジネスマンみたいに礼儀正しくしたりビジネス用語使ったりっていうことよ。私のママは私がビジネス界で成功するようにそういう立ち振舞いを教えてくれたけど、黒人社会ではそういう振る舞い普通はしないから白人かぶれしてるって思われるの」


 ラテン系の女の子ムジカちゃんがこういった。

「私はキティが好き。サンリオが好き。私は街中あちこちでサンリオグッズを買い集めて、パーティーを開いて転売してるの」

 僕は感心した。

「へぇ、稼いでるなんてすごいね」

「でも大人の人からは私たちが乱痴気騒ぎしてると思われてる」

 それに対してダイアナさんはこう言った。

「ムジカは頭がよくて、ビジネスの才能があるの。この子にまともなビジネスチャンスを与えたらすごく成功すると思うの」


 メキシコ人のロドリゲスくんはこう言った。

「アメリカでは男がサンリオ好きだったら間違いなくゲイだと思われるね」

 これに対してダイアナさんはこう付け加えた。

「LGBTQの人権を守ろうなんて言ってるのは真面目な知識人や活動家だけよ。一般の若者の恋愛や流行の感覚からするとゲイやオネェはダサいと思われてる」


 アラブ人のラクシュミくんは聞いた。

「日本ではみんな礼儀正しいってホント?」

 僕は答えた。

「日本では礼儀正しいのが当たり前だよ。礼儀正しくしていればちゃんとリスペクトされる。街で何か買ったりしてゴミが出たら街を散らかさないために捨てずに持ち帰る。エスカレーターでは歩いて登り降りする人のためにスペースを開けておく」

「へぇ」

 ラクシュミくんは感心して、また聞いた。

「日本人はみんな文字を書けるってホント?」

「日本人で文字を書けない人はほとんどいない。そんな人は小さい子供か障害者ぐらいしかいないよ」

「へぇ、日本人ってみんな文字書けるんだ。スゲェ!」

 ハックくんは感心した。


つづく

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