〈ククリちゃんとふしぎな町④〉
「さぁ、その人形を渡すデシ。」
「絶対ニケくんは渡さないモン!」
チクリ魔ちゃんとククリちゃんはニケくんの人形を取り合う。
人形はククリちゃんの手を離れて宙に浮いた。
「ほ〜ら、この人形には魔法がかかってるデシから1人でにアタイの所に飛んでくるデシ。」
人形はチクリ魔ちゃんの手元に降りてきた。
「この人形はアタイのものとしてカワイがるデシ。」
「ニケくんを好きになっちゃダメよ。」
ところが人形はチクリ魔ちゃんの手から離れ、お店の外に飛び出した。
「なぜデシ?」
「待って、ニケくん。」
2人は空飛ぶ人形を追いかける。みんなもそれを追いかけた。
人形はセントラルコートで宙に浮いたまま止まる。僕は人形に呼びかける。
「人形くん、こっちだよ。」
人形はわずかに反応して動いた。
「人形くん、回って。」
人形は回った。
「僕の声に反応してる。声は聴こえてるんだ。」
僕はいいことを思い付いた。
「じゃあ、人形がどっちの所に行きたいか人形に選ばせようよ。」
「分かったよ。」
「いいデシ。」
「ニケくん、こっちに来て。」
「アタイの所に来るデシ。」
2人は呼びかける。ニケくんの人形はククリちゃんの所に飛んできた。
「わ~ぃ、ニケくん、おかえり。」
人形は喋り出した。
「ピンクボム、オレの燃え盛る炎は全てを焼き尽くし、火もまた涼し、飛んで火に入る夏の虫。」
人形の声を聴いてひつじさんは怪訝に思った。
「この子何か変。」
アルカナイが気付いた。
「ククリちゃんのことをピンクボムと呼ぶ君はもしかしてレイドくん?」
「はーっはっはっ。レイド様登場だーっ!」
「何だ、レイドくんか。」
ククリちゃんはガッカリした。
「レイド様、何で人形になったデシか?」
レイドくんはチクリ魔ちゃんと同じく、ククリちゃんたちの敵モンスターだった。
「ラッキースターに呪いをかけて人形に変えるつもりが間違って自分が人形になってしまったのだ。
ピンクボム、オレを元に戻してくれたら、オレのカッチョイイ魔法を使ってラッキースターをやっつけてやるから、さぁ、戻してくれ。」
ピンクボムはレイドくんが付けたククリちゃんのあだ名、ラッキースターはニケくんのあだ名だった。
「ニケくんをやっつけるなんてダメ!」
ククリちゃんは叫ぶ。僕は言った。
「この人形は姿形はニケくんに似てるけど魂はレイドくんだから間抜けなんだ。」
ククリちゃんは疑問に思った。
「それよりニケくんはどこにいるの?」
するとチクリ魔ちゃんが言った。
「ニケくんは今、中心街にあるレイド様の仮のお城に幽閉されてるはずデシ。そこで喜びのダンスを踊れば、ニケくんもレイド様も呪いが解けて元に戻るはずデシ。」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう。」
ククリちゃんは感謝した。
「しまったデシ。敵に情報を教えちゃったデシ。」
僕は思ったことを言った。
「でもそんなレイドくんの人形を欲しがったってことはチクリ魔ちゃん、レイドくんのこと……。」
「それ以上言うなデシ。もういいデシ。人形はやるからレイド様を元に戻すデシ。」
チクリ魔ちゃんは照れてそっぽ向いた。ククリちゃんは平和な店に戻ってお金を払って人形を買った。
つづく