〈ダンシングニューフェイス〉

 ビルに住むノゾミという女の子。アンジュやカイと同じ13才。ノゾミはちょっと恥ずかしがり屋で自信が持てなくて、そのため今までおしゃれとか恋とかしたことなく、人前で歌ったこともなかった。
 そんなノゾミがエリンにお願い事をした。エリンはこの町のアイドル。ノゾミはエリンみたいになりたいと憧れていた。
「あたしをかわいくコーディネートしてくれない? そしたらイメチェンできると思うの。」
「いいよ。まかせて。」
 エリンは快くOKし、アンジュとカイと一緒にノゾミをファッション街に連れて行くことにした。
 
 エリンはまずティンカーマジックというお店に連れて行った。
「紹介するネ。このお店の店長マギくん。」
 マギくんは男の子の職人。誰が見てもカッコいいファッションが似合うのに、いつもカワイイ系の服を着ていた。
「じゃあ、あいさつ代わりに面白い物見せてあげる。例の物持ってきた?」
 エリンがあらかじめ用意してもらっていたノゾミの要らなくなった赤いバッグをマギくんに手渡す。マギくんはそれをテーブルに置き、シーツをかぶせた。そしてすぐにシーツをパッと取り去ると赤いバッグは一瞬で赤い靴に変わっていた。飾りのフリフリが左右についていた。
「すご~い。一瞬で変わっちゃった。しかもカワイイ靴。」ノゾミは心底ビックリして手に取る。
「マジックの技術を応用した見せる物作り。それがティンカーマジックだよ。」

「マジックも面白いんだけど、これって未来メルヘンのやりとり、材料払いだね。材料をあげて、完成品をもらうやりとり。」
 カイが興味を持つ。
「ってことはさっきのバッグを材料に靴を作ったの?」
 アンジュは驚いた。
「ちょっと違うんだけど、秘密の技を使ってるよ。」
 やっぱり物作りは魔法だったんだなとアンジュはウキウキした。

 マギくんは赤い靴をノゾミに履かせ、オレンジ色のリップを口に塗り、アヒル口にして、それを自慢のカメラで撮影した。ノゾミのいろんな表情を引き出した。
「このカメラにはプリクラ機能もついてるんだよ。」
 
 その後エリンはみんなをステージに連れて行った。エリンがいつも歌っているステージ。
「ミンナ!今日は友だちを連れて来たよ。」
 大勢の観客に向かってそう言いながら、エリンはノゾミ、アンジュ、カイをステージに上げた。
「じゃあ、ダンスが始まるよ。ミンナ一緒に踊ってね。曲はもちろんアタシの新曲『ダンシングニューフェイス』ダヨ。」
 エリンはステージの上から叫ぶ。すごく明るいアップテンポの曲が流れ、エリンは踊りだした。
「クルっと回って1,2,3,ハイ、決めポーズ!」
 本来の歌詞じゃなく踊り方を歌いながら説明した。ノゾミやアンジュ、カイも見よう見まねで踊りだす。最初は下手で、会場からクスクス笑いが起きていたが、何度も繰り返すうちにみんなだんだんうまく踊れるようになった。
 観客もみんな踊りだす。
「ノゾミちゃん、私たち注目浴びてるよ。」
 踊りながらそう言われ、やっぱりエリンに頼んでよかったなと思った。

 ダンスが終わり、ノゾミは聞いた。
「エリンちゃん、私イメチェンできてたかな?」
「ノゾミちゃんは今のままで十分魅力的ダヨ。ただ自信がなかったダケ。アタシはノゾミちゃんに女の子らしいことして欲しかったノ。これからもこのステージで踊ろーヨ。世界が広がるヨ。」
「あたしがステージに?」
「うん。」エリンは笑顔で誘った。
 ノゾミは一歩前に出た。
「あたし今まで自分に自信が持てなかったんです。例えば洋服やさんで店員さんに『お似合いですよ。』って言われてもホントに似合ってるのか、お世辞なのか分からない。」
 会場に笑いが巻き起こった。
「でも、そんな自分を変えたい。あたしアイドルになります。」
「ミンナ、ノゾミちゃんが今日から仲間に加わったヨ。よろしくネ!」
 観客から拍手と歓声をもらった。


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