〈ククリちゃんとふしぎな町①〉

 僕はある日いつものようにベッドで目覚めたら、なんか変な感じがした。よく見ると部屋の間取りがちょっと違う。


 朝の支度をして家の外の見晴らしのいい高台から町を見下ろす。

「う〜ん、今日もいい天気だな。」

 そう言って伸びをした。


 するとククリちゃんとニケくんが手を振りながら歩いてきた。2人は僕の友だちだった。

「隆弘くん、おはよう!」

 ククリちゃんは僕に挨拶して、駆け寄り、僕と向かい合って両手を繋いでクルクルと回転した。

「おはよう、ククリちゃん、ニケくん。」

「ちょっと暇だから散歩でもしようと思ってな。」

 ニケくんはあくびした。


 そのまま一緒に出かけることにした。けどやっぱり町の様子もいつもと違う。いつも車が走ってるはずなのに走ってなかったり、ホントなら真っ直ぐな道がクネクネ曲がってたりした。


 いつもならないはずの枝道に入る。しばらく歩くとお店のような工房のような所に来た。ドアは開けっぱなしになってて、中にはミシンでカラフルな布を縫ってる人が大勢いた。


 ククリちゃんは看板を読む。

「コスプレショップ、ケラファーム?」

「どんな店だろ? 見てみようぜ。」

 ニケくんは興味を持って入ってみた。

「待って、ニケく〜ん!」

 ククリちゃんも入る。


「勝手に入っていいのかな?」

 僕は戸惑いながら中に入り、ミシンで縫う人たちの間を縫い縫い歩くと西ひつじさんがいた。僕たちの友だちでコスプレイヤー。

「あっ、西ひつじさん!」

「あっ、みんな! どうしたの、こんなトコで?」

「面白そうなお店だなって思って入ってみたの。」

「偶然ね。あたし今、新作のコスプレ作ってるのよ。」

 僕はひつじさんを見て少し安心した。


 ひつじさんは隣にいた同い年位の女の子を紹介してくれた。

「この人は日向(ひむかい)ひなたさん。」

 ひなたちゃんは笑顔を見せた。

「ひなたちゃんはコスプレイヤーで同人作家でもあるのよ。」

 僕は感心した。

「へぇ、コスプレも同人も両方出来るなんてすごいね。」


 しばらくしてひつじさんの作ってたコスプレが完成した。オリジナリティ溢れるデザインの魔法使い風のコスプレだった。

 ひなたさんのコスプレも完成した。実際にはないようなオシャレな学校の制服だった。


 ひなたちゃんの家は近くなので遊びに行くことになった。ひなたちゃんの家はアパートで、3階建ての3階の1室、素朴だけど景色がよかった。

 窓からは大きな川が見えて、対岸のホテルや神社が水鏡に写ってた。


 ひなたちゃんの部屋はグルグルグッズでいっぱいだった。

「これほとんど自分で作ったのよ。グルグルグッズ好きだから自分で作っちゃおうって思ったの。」

 ククリちゃんは興味深げに見回す。

「すご〜い。あっ、ククリのお人形もあったよ。」

 ククリちゃんは自分そっくりの人形を手に取った。

「へぇ、面白いね。」

 僕も感心した。

つづく

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