〈鈴々ちゃんと人形の旅③〉
隆弘くんの住んでるシェアハウスのルームメイトまほろちゃんとアンジュちゃんも仲間に加わって、町案内してもらうことになった。
「私、素朴な田舎の風景が好きだなぁ。」
私がそう言ったので、隆弘くんは私が喜びそうな所はどこだろう?と考えた。アンジュちゃんの提案で、どんぐり村に連れて行ってもらった。
「私、前に町案内してもらったことあるから今度は案内する役よ。」
どんぐり村は南フランスの村を再現したテーマパーク。石造りの家やお店にチーズやワインが売られていて、丘の上には馬の親子が日向ぼっこしてたり、小川が流れていた。
「わぁ、素敵。」
私は感激した。
「でしょ!?」
アンジュちゃんは満足気な顔で微笑んだ。乗馬体験したり、山羊(やぎ)と触れ合う体験もした。
「次はどこ行く?」
隆弘くんは質問した。そこで私は、
「雰囲気のいいお寺か神社ないかな? 仏像があったりするトコ。」
「えっ!? そんな所に行きたいの?」
隆弘くんは意外そうな顔で驚いた。するとまほろちゃんは、
「星巖寺(せいげんじ)がいいと思う。」
と提案した。
そこでまた移動して行ってみた。星巖寺には五百羅漢(ごひゃくらかん)という石仏が沢山並んでた。私の目には五百羅漢が踊り出してるように見えた。
私の空想の中で羅漢たちは動き出す。手を繋いで輪になって踊ったり、はしゃいで走り回ったり、中には昼寝したり座ってお喋りしてる羅漢もいた。
ところがそこに変なイメージがやってきた。学生の頃のクラスメートが現れて、
「鈴々ちゃんってこんな仏像が好きなの? あなたにはお似合いね。」
と皮肉っぽく笑った。
私は一瞬、嫌な気持ちになったけど、頭を振ってそのイメージを振り払った。
しばらくそこで羅漢たちと一緒に遊んだ。
隆弘くんは自作の小説を私たちに語って聴かせてくれた。
「そのあとコン太くんはどうしたの?」
「それはねぇ。」
私はシェアハウスに1泊泊めてもらった。
つづく
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