〈①ロボット・ルートくんの成長物語〉

 ルートくんの話1/3


「ボク、ルートくん。かわいいロボットだよ。」


 ルートくんは成長するロボット。見た目は人間そっくりだけど、産まれたころは人間の赤ちゃんのように小さかった。フィリップさんが大切に育ててきた。

 アンジュたちはルートくんを紹介されて、話を聴いた。


「最初はゴミ捨て場に捨ててあった所を拾われたんだ。そして僕が引き取ることにした。」

 フィリップさんは遠い目で語り出した。

「初めて見た時はホントに死んでるんじゃないかと思ったよ。病院で必死で治療をして、少しづつ元気になっていったんだ。」


 フィリップさんはちいさいルートくんを公園で遊ばせた。この頃から人間の子どもと遊ぶのが好きだった。


 少し大きくなると、家のお手伝いもするようになった。

「ボク、おそうじ、ニガテ。でも、がんばる。」

 ルートくんは頑張り屋だった。


 フィリップさんの友だちの家のお手伝いもした。

「悪いね、掃除も洗濯も、子どもの送り迎えまで頼んじゃって。でもルートくんにもお金いっぱい払ったから、まあいいか。」

 その家の男性はソファーでくつろぎながら、のんきにそう言った。

 そんな男性を見るルートくんの目の中にある心が生まれつつあった。それは自我だった。ルートくんは自分の存在を認識し始めた。


 ルートくんに自我があると早くから気付いていたフィリップさんは、ルートくんに所有権も与えることにした。

 お金が稼げるようになったルートくんはますます働き者になった。テープ起こしの仕事や粉の重さを量る仕事など、どんどん出来るようになった。テープ起こしは、テープに保存された人の声を文章に打つ仕事。高度な言語能力を必要とした。

 ルートくんの能力はみるみる上達していった。


 また友だちともよく遊んだ。笑いのセンスもあった。

 勉強は完璧だった。語学も算数も音楽もデータチップを入力すれば一瞬で覚えることができた。

 走るのも早く、力も強かった。

「駆けっこはボクにまかせて。」


 照りつける太陽が眩しいある夏の日、ルートくんは海で遊んでいて、溺れてる女の子を助けた。その子はヒトミちゃんと言った。ルートくんはヒトミちゃんに恋をした。

 2人は付き合うようになった。だけど親は反対した。

「ロボットなんて只の物質。心なんてないのよ。」

 ヒトミちゃんはそれを信じなかった。


 2人はデートするようになった。ルートくんは蝶ネクタイを首元に付けた。花をプレゼントした。デート中花を手で持っていなくていいように、胸に取り付けた。


「これからはロボットが働く時代よ。」

 ヒトミちゃんは周りの友だちにそう言って自慢した。


 つづく


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