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学習会 「自治体でできる『気候変動』対策」
2024.11.17
(文責・フューチャーおおさか)
講師:「気候ネットワーク」京都事務局長の田浦健朗さん
気候変動と地球温暖化のしくみ
近年、世界各地で熱波や干ばつ、山火事や洪水など、気候変動による災害が激甚化しています。気候変動とは、地球温暖化の進行によって地球全体の気候が大きく変わることを指しており、自然の変動によるものでなく、人類の活動によって、地表付近の平均気温が上昇している状況のことです。この地球温暖化によって、気候が変化し、様々な影響が起こる現象を気候変動といいます。
地球の気温は、熱帯から極域の氷の世界までかなりの差がありますが、平均すると約15℃で、地球全体を見ると多様な生き物にとって暮らしやすい環境となっています。この環境を維持するために大きな役割を果たしているのが、大気中に含まれている水蒸気・二酸化炭素(CO2)・メタンなどの「温室効果ガス」と呼ばれる気体です。太陽から届くエネルギーは、地表面に達して海や陸を温めるほか、暖められた地表面からは赤外線が大気中に放射されます。この赤外線の一部を温室効果ガスが吸収し、その一部を再び地表に放射し、地表を温めることを「温室効果」と言います。この温室効果がなければ、地球の平均気温はマイナス19℃もの低温になり、今日のように動植物に適した環境にはなっていなかったと考えられています。
しかし、大気中に温室効果ガスが増え続けることで、熱の吸収量が増えて、地表面を温めることによって、「地球温暖化」を引き起こしてしまいます。 地球温暖化により、海面上昇や異常気象の増加などが起こり、生態系への影響があります。また、気候が変化することで、食糧・水・健康・経済などへの被害も拡大し、取り返しのつかない状況まで地球環境を悪化させてしまう可能性もあります。
気候の危機と脱炭素に向かう世界
工業化前から気温1.5℃上昇に抑えるには、CO₂累積排出量を約800GtCに制限する必要があるが、このままではおよそ30年でそれに達する。
COP21(2015年)のパリ協定以降、各国は再生可能エネルギーのメインストリーム化(普及実施と100%宣言)による脱炭素化をめざし着実に努力を重ねているが、日本ではまだ火力発電や原子力(最終的にはペイしない)発電への依存を残し、国としては自然エネルギーへの転換が進まない(なぜか進めない)現状にある。
国内・地域・自治体の気候変動対策
2020年にパリ協実施がスタートし、日本は同年10月に「2050年カーボンニュートラル(排出を全体としてゼロ)」を目指すことを宣言した。
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 (METI/経済産業省)
日本は我慢して省エネするという意識が根強い。住宅政策も気候変動に対応していない。
一方、ZEH(ゼッチ)住宅など断熱性能の向上した住宅にするだけでも、ヒートショックなどの有病率も改善する。例えば「とっとり健康省エネ住宅」は、単に脱炭素対策のためだけでなく、健康な生活など「トータルコスト」で考えた取り組み。また教育現場では、長野県の白馬高校などでは、生徒たちが教室の断熱改修を自らすることで学んでいる。
知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~新しい省エネの家「ZEH」|エネこれ|資源エネルギー庁
白馬高校断熱改修ワークショップ | Hakuba SDGs Lab
日本各地域では再エネの大幅な促進が必要だが、初期投資の財源不足など課題がある
「気候ネットワーク」事務局のある京都では、2004年に日本初の京都市地球温暖化対策条例が制定され、以降、次々と他の自治体でも「2050年CO₂排出実質ゼロ宣言」などが続いているが、政策の中身は伴っていない自治体が多いのが実際で、環境省は政策推進のため、「地域脱炭素ロードマップ」に基づき、2025年度までに少なくとも100か所の脱炭素先行地域を選定し、脱炭素に向かう地域特性等に応じた先行的な取組実施の道筋をつけ、2030年度までの実行をめざし、地域課題を同時解決し、住民の暮らしの質の向上を実現しながら脱炭素に向かう取組の方向性を示すとしている。
大阪府下では大阪市と堺市が選定されている。
京都市では、再生可能エネルギーを生み出す太陽光発電設備等の普及拡大のため、「市民協働発電制度」を実施し、京都市が選定した市内の団体が、市民の出資をもとに、市内の公共施設において市民協働発電所を稼働している。
PPAシステム(事業者と契約することで太陽光発電システム設備を初期費用ゼロで導入できる)による例として、京都では、地域貢献型電力小売り会社「たんたんエナジー」(丹後・丹波を始めとする地域の自然エネルギーを活用し、環境も経済も社会も絡み合い好循環を生み出す持続可能な京都の地域社会をめざす)がある。
京都には他にも、『おてらのでんき』や『市民共同発電所きょうとグリーンファンド』、『市民エネルギー京都』などの電気事業法人がある。
東京都ではカーボンハーフ実現に向けた条例制度改正などが実施されている。
今後に向けてのまとめ
今の国内のエネルギー政策は矛盾だらけで、エネルギー輸入を継続し続けることで、社会の疲弊、産業競争力の低下を招いている。温暖化対策が生活の向上、雇用の促進、地域の活性化につながることを知り、持続可能な社会経済くらしへの大転換の希望と展望をもちたい。 ※再エネ普及政策は雇用を創出する効果もあり、また、省エネ関連の職場では女性が多く働いており、ジェンダー問題解消にも貢献している。
※参考: 冊子『気候アクションガイド』と『太陽光発電のギモン解決!よくある質問15選』のHPです。気候変動に関し個人でなにができるかなどが書かれています。
【パンフレット】太陽光発電のギモン解決!よくある質問15選 | 自然エネルギー100%プラットフォーム