国民健康保険の「完全統一」・・・大阪府は「失策」のトップランナー
基礎から学ぶ「統一国保」でよくわかった負担増のしくみ
フューチャーおおさかの学習&交流カフェ「くらし」のなかの「行政」を考える―その1『「大阪府・統一国保料」は、なぜ?全国一高いの・・・』を2024年8月18日(日)タ―ネンビル№2カンファレンスルームで開催しました。
当日は最高気温37.1℃、また「お盆休暇」の最終日。こんな日に寄って集って社会問題を考えるなんてアリ得ない!というわけで、参加が大いに危ぶまれたましたが、協賛2団体(どないする大阪の未来ネット・NPO法人労働と人権サポートセンター大阪)のお力添えを得て、50人をこえるみなさんと学習をともにすることができました。
基礎から学ぶ国保と「統一国保」の問題点
大阪社会保障推進協議会事務局長 寺内順子さんを講師にお迎えして、「統一国保」とはどういう仕組みで、これまでとどう違うのか。また統一国保となったら何が変わるのかという点について、いちからお話しいただきました。
復習をかねて、当日資料(カラー版)をご覧ください。
*寺内順子さん資料:基礎から学ぶ国保と「統一国保」の問題点
「学びの柱その1」は「国保の基本」
「国民健康保険」制度はそもそも健康な兵士(その調達源である農民)をつくるため、日中戦争開戦直後に導入された。いきなり目からウロコ。
戦後、農林水産従事者が人口の半分を占めた時代にはたした社会保障制度としての役割、産業構造が大きく変化するなかでの問題点など、文字通り「イロハ」から説き起こして「学びの柱その2・その3」へ。
ウロコその2 国保「都道府県単位化」イコール「完全統一化」ではない
「部分統一」もあれば、市町村の反対で「都道府県単位化」をしないところも、「政令市」独自のやり方を導入しているところもある。
しかも、大阪府全体の国保会計収支は2017年に黒字に転じ、21年以降は1市を除き42市町村すべてが黒字。「基金」残高を合わせると大黒字。ならば保険料の値上げをする必要などどこにもナイ。それなのに……!
ウロコその3 大阪府の「完全統一」はトップダウンの一刀両断
大阪府下43の自治体が住民のくらしに寄り添って独自に進めてきた制度運用の「良策」を壊滅させ、社会保障の恩恵をもっとも受けるべき人たちを切り捨てる結果をまねいている。当局は声高に「トップランナー」を豪語するが、じつは「失策」のトップランナー。
今後「完全統一」を「良策」として追随する都道府県はないのでないかということです。
当日の資料をもとに具体的にどのように変わり、どれだけ負担増になるかを調べてみました
保険料が際限なく高騰する
大阪府は2018年度から一部の市町村で「統一国保」を導入。この4月(2024年度)には、全国の都道府県にさきがけて国保料水準を「完全統一」としました。それにともなう毎年の上げ幅は大きく、負担は全国一の水準に!
市町村の裁量がなくなり「分権」に逆行
「完全統一」によって、どの市町村に暮らしていても保険料率は一定。市町村がこれまで独自に行なってきた保険料抑制措置や軽減・免除措置もなくなり、弱い立場の人々にきびしく、地方自治が機能不全に。
受益の格差・負担の逆進性に拍車
大阪府の「国保」加入世帯数は全体の約3割。なかには非正規雇用労働者、女性、高齢者などが多く含まれます。国保料はもともと、低所得者ほど所得に占める割合が大きい(逆進性)。これに拍車がかかれば社会基盤の脆弱化がいっそう進みます。
3つの世帯モデルによる2018年度と2024年度の所得別保険料の推移と値上がり率比較
全国一高い「介護保険料」がすべての府民に
もう一つの学びは「介護保険」。
すでに報道でご存じの方も多いと思いますが、全国一「介護保険料の高い大阪市」。
医療・介護・保健従事者が元気になる会代表の岡崎和佳子さんからの報告を聞きました。
まずは、岡崎さんのこれまでの歩みを写真とともにたどりました。
1992年に市民の出資によって開院した「菜の花診療所」や2003年に開設した「菜の花ケアプランセンター・ヘルパーステーション」での経験から、コミュニティーのなかに「支援ネットワーク」を作っていく事例を、映像を使って紹介。ゴミ屋敷のなかから1億円が出てきた事例なども……!
制度はあるだけでは意味がない。それを機能させ、より良いものに改変していくのも人なんだということ、そして、その「初めの一歩」を踏み出すことの大切さをしみじみと考えさせられました。
施行24年。いまや社会にとってなくてはならない制度となった「介護保険」。ですが、これまでの制度改定が一貫して「負担の増加と給付の抑制」をめざしてきたため、高齢化が急速に進展するなかで多くの矛盾や困難に直面。制度の維持・存続にも暗い影をおよぼしているとのこと。
明日はわが身……!