自社のビジネスを地域の仕組みとするための第一ステップは|大橋 磨州さん
7月6日、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論Ⅱ 第8回の授業内にて、アメ横 呑める魚屋「魚草」 代表 大橋磨州さんのお話を聴講しました。
大橋さんは、縁もゆかりもなかったアメ横で、魚屋兼居酒屋を営んでおられます。大橋さんは、この店が従業員さんやお客さんが、ここにいる意味、ここに来る意味を感じ、生きがいと思えるような空間になっているとお話されました。
アメ横は観光やショッピングで行ったことがあります。その時は、見物客から観光客まで国際色豊かに、常時人波が絶えることがなく、沢山の店が雑多に立並び、そこに沢山の人がやってくる様子にいつも驚かされます。「盛り場」といわれるところはまさにそうですが、「お店」や「飲食店」「芝居小屋」や「遊び場」などが有機的につながることで、人を呼び、人が人を呼ぶ。アメ横には芝居小屋こそありませんが、まさにそんな独特な雰囲気をもった商店街という印象でした。
大橋さんのお話を伺っていると、その雰囲気を作り上げている理由がわかりました。それは、誰でもそこで働きたい・いたいと思えば、主役になることができる場が自然とできる仕組みです。その仕組みは、アメ横という雑踏的な雰囲気、さらにはそこで営んできた老舗の方々が知識のない新しい働き手を受け入れモチベートする度量、居場所をすっと作ってくれるような代々続く温かさ等、様々な要因が複合的になって実現されています。本来は、別々のお店なのですが、それらがアメ横でつながって一つの魅力的な地域になるための仕組みがうまくデザインされている場所だったと気づかされました。
大橋さんがそうした考えに至ったエピソードとして「ガイアの夜明け」の話を紹介されていました。ガイアの夜明けで取り上げられた会社は、名前が知られていない魚は、売れないということを問題視し、あえて高く買取し、さらに漁師さんから調理仕方を教えて貰うことで、顧客に新しい文化を伝えようとしていました。一方で、同番組の中で、その会社の対比として、大橋さんが、安く魚を売りさばいている姿が映されていたとのことです。大橋さんは、その番組を見て、卸業者さんや生産者の方含め関係する方々のビジネスがシュリンクするような方向性のビジネスを自分自身がしていることに対して疑問を持ち、そこから、もっとそれらのステークホルダーの方々にとってもビジネスが良くなることをやりたい、自分のやっているビジネスの存在意義を持ちたいということで、業態を転換し直したとのことでした。
重要なポイントとして感じたことは、自身のビジネスだけではなく周りのステークホルダーの方のビジネスも持続的でなければ、自身が営む意味と意義が見いだせなくなるということ、むしろ逆にそこが明確になると、自身のビジネスの存在意義がクリアになっていくということです。これは、ビジネスのエコシステムの考え方です。大橋さんはそれを、「街との【関係性】を持たないとといけない」と表現されていました。改めて、自分のビジネスの社会との関係性、つまりエコシステムを意識し、Whyを認識すること。さらに、その中で自分自身のビジネスがそのエコシステムを動かすドライバーであるために、誰に、何を、どうやって提供していくかを意識することの重要性を感じました。それが、街を作り、社会を作り、そこで働く人や触れる人に生きがいを感じさせることにつながる、そう思いました。
それが、街を作り、社会を作り、そこで働く人や触れる人に生きがいを感じさせることにつながる。自身のビジネスの営む意味と意義をステークホルダーとの関わりから明確にしていくことで結果的にも身近な人に生きがいを与えることができ、今後の地域社会において求められるということだと思います。