価値のある暗黙知を見つけ、形式知化することの価値の大きさ|紺野 登さん
9月11日、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第10回の授業内にて、「構想力方法論」を執筆された紺野教授のお話を聴講しました。
2010年の「流れを経営する」という本を執筆され、その後2018年に「構想力方法論」を執筆されており、イノベーション経営の基盤として、一貫して日本人には構想力が必要であると述べられております。構想力は、主観力・想像力・実践力の3つの力で構成されているが、大きな意味合いとして、個々の局所的な課題にアプローチしすぎたゆえに、大局観的な視点、つまり社会をどのようにしたいのかについての考えがない状態があることがあってはならなない、大局観的な社会としての視点を持った上で事業を構想していくことが重要だとおっしゃられていました。
特に興味深かった点としては、お話の基軸として、《知》がベースにあり、知識をどのように習得してどう活かして事業を構想するのか、ということと結びつけてお話されていたことです。これまでデザインシンキングという位置付けで、発想や観察などの言葉で理解してきたものを、形式ちと暗黙知で整理されておられ、新しい視点での理解に繋がりました。例えば、観察は、暗黙知を暗黙知化すること、発想は暗黙知を形式知化すること、プロトタイピングは形式知を新たな関係性としての形式知にすること、ストーリーテリングは、形式知を身体のリズムに埋め込むかのように暗黙知化するということ。それらを総称して、暗黙知と形式知の相互作用による知識創造プロセスと呼び、《知》で整理されていることが興味深かったポイントです。
実際に日々デザインの考え方でビジネスを実現するようとすると、形式知化されているものにビジネスマンはよく飛びつき、暗黙知であることに一定の価値があることを理解しながらも言葉に落ちないがゆえに伝播する力・説得する力が弱く、価値として低く扱われることをよく目にします。例えば、営業マンの中でベテランの方は、売り上げ成績が高い。これは暗黙知の熟練のスキルがそうさせていることを皆理解している。ただ、暗黙知のスキルを形式知化することにハードルがあり、効率よい作業工程など形式知化しやすいものだけがマニュアル化されて会社内で引き継がれる。このように、暗黙知なものに価値があることを理解しながらも、低く扱われてしまうように感じます。
そう言った観点からも、観察の結果でた暗黙知を形式知にかたちづくっていくことに今後大きな価値があるように考えます。どこに宝のような暗黙知があり、それを伝播する力を持った形式知に変えていくために、自分がどのようなスキルを身につけていくべきか、改めて深く考えさせられる講演でした。
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