MAU2.5億人の中国No.1音声アプリXimalayaから読みとく音声プラットフォームの未来のヒント
こんにちは、こうみくです!
中国最大の音声プラットフォームXimalayaがIPO上場するするにあたっての目論見書をGW中に発表しました。本日は、目論見書内に書かれた情報をもとに、
・Ximalayaが中国オンラインオーディオ市場の王者となった3つのKey Factor
・Ximalayaに潜む2つの脅威とリスク
・音声プラットフォームの未来のヒント
に関して読み解いていきたいと思います。
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<Ximalayaの概要>
✔︎総ダウンロード数6億+、2021年平均MAU2.5億人、平均使用時間141分の中国国内最大級の音声プラットフォーム ✔︎老若男女と全方向の属性の大衆をターゲットとし、365日24時間人々のライフスタイルの中に溶け込み、「耳の経済」を活発化させることがミッション
✔︎ 課金ユーザーは全体の13.3%の1390万人。昨年比+70%と、課金ユーザー比率も年々上昇中。また、自動更新支払いメンバーと年間支払いメンバーは、合計約64.5%と継続率も高い。
✔︎ 収益は、2018年の249億円から2019年には451億円へと81.4%増加し、2020年にはさらに51.3%増加して683億円と躍進。まだ黒転していないが、営業損失は2019年129億円、2020年109億円と縮小傾向にあり、好調。 ✔︎ 収益の軸は、サブスクリクション、広告、ライブ配信、そして教育。教育は2019年にスタートした新規事業だが、全体収益の13%を担う規模までに成長。
✔︎ Ximalayaのもっとも強い優位性となっているのが、優良なコンテンツの継続確保である。「PGC+PUGC+UGC戦略」とプロが作成したトップクラスのコンテンツから、ユーザーが作成したロングテールコンテンツまですべて高いレベルで網羅し、健全でバランスの取れた活気のあるコンテンツエコシステムを確立。
Key Factor①:Third Party Deviceを拡充して、面を取る
Ximalayaの目論見書によると、彼らの2021年の平均MAUは2.5億人を記録しました。中国の全人口は14億人のため、全国民の20%程度が毎月同APPを触っていることになります。
そして、注目すべきは、このMAU2.5億円の内、Ximalayaのスマホアプリのユーザーは1.04億人のみだということ。残り1.46億人はどこから?ということですが、
・V2X(テスラ、アウディ、BMWなどの車体にプリインストールされている分。MAU4680万程度)
・スマートデバイス
・スマート冷蔵庫といったスマート家電
といったスマホ以外のデバイスを経由した獲得したユーザーなのです。「インターネットのプロダクトを作る!」というと、ついついモバイルか、Webか、という発想になりがちですが、テスラやアウディをはじめとする他社とのアライアンスを組んだりと、ユーザーと接触する面を広げたことがXimalayaが音声界最大の王者となった所以です。
(抜粋:Ximalayaの目論見書)
同様の例として、Netflixが日本に上陸した際に、主要なテレビメーカーに働きかけて、リモコンの製造費の10%負担するかわりに、リモコンにNetflixのボタンを入れてもらうよう申し込んだことをご存知でしょうか。
このように、大衆向けサービスの場合、スマホとPCを通じてアクセスできる自社APPのみならず、Third Party Devicesにまで範囲を広げて、ユーザーとの接触面を広げることができるか否かが、成長の大きなドライバーとなるのです。
Key Factor②:ユーザーからの課金モデルを主軸とし、顧客満足度を徹底的に磨き上げる
Ximalayaの収益源は、主にユーザーからのサブスクリプション(VIP会員制):、広告、ライブ配信(生放送)、教育サービス(0〜12歳を対象とした教育系コンテンツ)と4つに分かれています。
(引用:https://note.com/mcromance/n/n999b1e10e9e7)
上記決算表からわかるように、Ximalayaは2018年〜2021年まで、常にBtoCのエンドユーザーからのサブスク課金がメイン(43〜46%程度)がいちばんの収入軸となっています。翻って、BtoBの法人からの収益、広告事業の売上割合は25%前後で推移しています。
通常、ユーザー数が多いプラットフォーム且つ広告事業を導入している、且つ営業損失が続いているとなれば、「投資家からのプレッシャーもあるし、一旦、広告売上を最大化させて黒字化させよう」といった発想に陥入りがちになります。(何せ、直近3年間で累計300億円以上の赤字を垂れ出しているわけで…)
実際に、皆さんおおなじみのTikTokやYouTubeといった大衆向けの動画プラットフォームでは、広告売上が全体の50%を超えるメインの収益軸です。
しかし。
Ximalayaは頑なに広告に頼らず、エンドユーザーからの課金モデル(サブスクリプション、教育コンテンツ)を主軸に据え続けているのです。
なぜか?それは、広告モデル比重が高すぎると、顧客体験が損なわれるからです。そして、顧客体験が損なわれると、カスタマーロイヤリティーが毀損され、ユーザーの離脱及び長期的な視点から見たプラットフォームの価値毀損に繋がります。
TikTokは、広告がコンテンツに溶け込む形で挿入されている形式のため、顧客体験が損なわれない形で共存できているので、あまりユーザーに煩わしさを感じさせることはありません。一方で、皆さんTV広告やYouTubeの広告が煩わしいな・・・とうんざりしたことはありませんか?コンテンツに溶け込むような広告が作れるのは短尺動画だけで、音声も長尺動画も性質上、顧客体験を損なわないように広告設計をすることは非常に難しいのです。
よって、あくまでも長期的な目線のプラットフォームの発展を見据えて、エンドユーザーの満足度を高めて課金してもらうこと、課金単価をあげることで収益を伸ばすという戦略をXimalayaは選びました。その結果、ユーザーの有料課金率は2018年から今まで、ずっと右肩上がりを続けています。
Key Factor③:高品質なコンテンツを確保し続ける仕組みを磨き上げる
現在Ximalayaでは520万人のアクティブなクリエイテーがいます。その中でのPGC(Professionally Generated Contents、プロが手掛けるコンテンツ)、UGC(User Generated Content、アマチュアが手掛けるコンテンツ)、PUGC(PGCとUGCの中間)の割合はこのようになっています。
映像にせよ、音声にせよ、優れたコンテンツが供給され続けなければ、当然ユーザーを引き付けることはできません。XimalayaはPGC、PUGCに関して、下記のような工夫をしてきました。
✔︎ PGC:創業以来、一流とのコラボレーション戦略を策定。2021年3月31日までの3か月間で、トップ100タイトルの約71.0%の独占著作権ライセンスを取得。
✔︎ PUGC:PUGCクリエーターを注意深く観察し、成功の可能性が最も高いクリエーターを特定。その後、定期的なトレーニングを提供し、協力してプロ品質のコンテンツを作成し、プラットフォームでコンテンツを積極的に宣伝することで成長を加速させる。
特に、プラットフォームをキャズムを超える大きなKey Factorのひとつとして、そのプラットフォームからスターを生み出せるかどうかという点が挙げられます。いわば、YouTubeにとってのヒカキン、Instagramの渡辺直美といった大成功事例を作ることができれば、自然に、あとが続くのです。Ximalayaは、アマチュアのクリエーターの育成に多くの労力と資金補助を行い、さまざまな音声界の大スターを生み出しました。
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さて、ここまでXimalayaが如何に中国の音声界の王者となったのかという点に関して解説しました。しかし、そんなXimalayaでさえ、王者の地位が盤石であるというわけでは決してありません。後半では、Ximalayaに潜む3つのリスクと脅威に関して解説していきます。
Risk Factor①:音声市場の成長スピード>Ximalayaの成長スピード。結果、業界シェアが低下。
Ximalayaはユーザー、売上ともに成長していますが、実は中国の音声市場はそれを上回るスピードで成長しています。Ximalayaのライバルとなる音声プラットフォームもどんどん台頭しており、競争が激化。
(Ximalayaを含めた中国の4大音声プラットフォーム)
その結果、第3機間のCICによると、2020年の平均MAUで測定した場合、Ximalayaの市場シェアは2019年の70%から2020年には56%に低下してしまっています。
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