縁は異なもの味なもの-キューピットは意外な人物だった
ここの所、嫁さんとの馴れ初めを書いている。
前回の記事はこちら。
付き合い始めて、いきなり長野と東京の遠距離になって、僕は仕事の関係などいろいろ重なってうつになって、遠距離が辛くなって一度別れたんだけど、メンタル崩壊した僕は彼女に甘えて頻繁に電話するようになってしまった。というところまで書いた。
その後どうなったのか、というと、僕としてはメンタルが崩壊しているので、彼女とよりを戻すとか、そういうことを考えるのが極端に億劫になっていて、というか、考えられない状態だったんだよね。
で、そういう話はずっと避けていた。
ずるいとは思うけれど、自分を守るで精いっぱいだったので、できないものはできないという状態だったんだ。
再び東京へ
これは後から聞いた話なのだけれど、彼女は悩んでいたらしく、お母さんに相談した。(どんなふうに悩んで、どう相談したのか。僕にはわからない)
そうしたら、お母さんは彼女を知り合いの占い師のところに連れて行った。
で、その占い師の答えが。
このまま遠距離を続けるとその男性との縁は切れる。
東京に出れば、縁はつながる。
というものだったらしい。
(これも伝聞なので、実際はわからない)
(考えてみれば当たり前のことだよね。占い師じゃなくても、そう答えるんじゃないかな。)
それで彼女は、再び東京へ出てくることを決意したんだ。
仕事も何も決まっていない状態で、再び東京に出るという。
すごいよね。考えてみると。
この決定に僕はビビったよね。
普通の精神状態なら、「ちょとまて、あわてるな、ちゃんと話し合おう。」というところだと思う。
だってさ、責任があるじゃない、一応。
でも、メンタルが崩壊している状態の僕は、
好きにすればいい。俺の人生じゃないし。申し訳ないけど、今の俺には責任は取れないけどね。
という無責任なスタンスだった。
それくらいでないと、僕のメンタルが持たなかったんだ。
それでも、彼女が行動を起こしたのは僕が会社を辞めた後だったから、時間が有り余っていた僕は、部屋探しや引っ越しの手伝いなんかもした。
そうこうしているうちに、僕の母親が脳出血で倒れて入院してしまった。
それを機に、僕は実家に戻って、父親の食事の用意やら家事やら、母が経営していた塾の切り盛りなどをやるようになった。
その時の話はこちらに書いた↓
そして、あの事件が起きたのは、母が入院しているまさにその時のことだった。
まるでドラマのような展開
僕が実家で家事をしているときに、携帯電話が鳴った。
僕がその電話に出ると、彼女がいきなり「助けて!」と言った。
よく、ドラマなんかであるよね。
「助けて!」っていう電話がかかってくるシーン。
いや、こんなことが実際に起こるものなんだ。
と思って、一瞬、頭が真っ白になった。
でも、ここで僕がパニックになっていても仕方がない。
冷静にならなくちゃ、と思い。
「どうした!?」と訊いた。
彼女「隣のおじさんがドアの外で怒鳴ってる!出てこい!殺してやる!って!」
確かに電話の向こうから、ドアをけり上げるような物音が聴こえている。
彼女「助けて!今すぐ来て!」
今すぐと言われても、実家から彼女のアパートまで、車でどんなに頑張っても40分はかかる。それでは時間がかかりすぎる。
(どうする、どうする。あわてるな、落ち着け。こんな時どうする。)
(そうだ、警察だ!警察のほうがはるかに早い!)
僕「警察だ、警察に電話しろ!」
彼女「そうか、何番だッ?」
僕「110番、110!」
彼女「そうか!(ぷぷぷぷ⇒ダイヤル回る音)」
僕「受話器を置け!一度切らないとつながらないぞ!」
彼女「そうか! ブチッ、プープープー…(切れた)」
さて、どうしたもんか。
隣のおじさんが暴れたとなると、警察としてもアパートに返すわけにもいかないだろう。
かといって、東京に引っ越してきたばかりの彼女にとって、行く当てを探すのも大変なことだ。
部屋を探すの手伝い、引っ越しも手伝ったし、ここは放っておけるはずもなかった。
だけど、僕は実家にいるし、父の面倒も見なければいけない。
いやいや、もうそんなことを言っている場合ではない。
これはもう、実家に連れてくるしかない。
僕は再び彼女に電話をして、警察に着いたら電話をくれるように言った。
そして、「とりあえず家に来ればいい、迎えに行くから」と伝えた。
そして僕は、彼女が保護された警察署に迎えに行った。
彼女は着の身着のままで、サンダル履きで、貴重品だけを持って我が家にやってきたのだった。
彼女の存在が明らかになった
それまで、僕の家族には、彼女の存在について一言も話をしていなかった。
それなのに、いきなり女性が転がり込んできたのだから、父もそれから姉たちも相当驚いたに違ない。
さらに、僕にとって鬼門であった母が入院中で不在、というタイミングでこのような事件が起こるとは、もうこれはご縁としか言いようがない。
父は、会社を辞めてしまった息子がいきなり女性を連れてきたもんだから、かなり嬉しかったのではないだろうか。
普段は寡黙な父が、彼女相手によくしゃべってくれた。
彼女も緊張していただろうけれど、おかげで和やかに過ごすことができたと思う。
こうなってしまったからには、僕としても腹をくくるしかないと思った。
しばらくして、母が入院している病院へ彼女を連れて行った。
事情を話して、今は家でかくまっているという話をした。
事情が事情だけに、母も驚いただろうけれども、それに対して異を唱えることはなかった。
こうして、僕の親族の間で、彼女が僕の正式な彼女であるということが知れることになったのだ。
そういう背景があるから、この後、姉が僕を実家から追い出したのだ。
実家から追い出せば、僕の行くところは彼女のところしかないことを知っていたからだ。
煮え切らない僕の尻を叩いたのは隣のおじさんだった
結局、煮え切らないでいた僕の尻を叩き、既成事実を作り上げたのは彼女の部屋の隣のおじさんだったのだ。
ただの酔っぱらいだったらしいのだけれど。
なんとも物騒なキューピットだった。
これはもう、ご縁としか言いようがない。
あの占い師は、ここまで予見していたのだろうか?
だとすれば、凄腕の占い師だということだ。
縁とはかくも不思議なものだと思う。
当人たちの気持ちよりも、周りの状況のほうが早く動いていく感じがした。
(つづく)