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プレーオフ決勝のキーマン、FP皆本晃はどれだけ選手としての価値を示せるか

クラブの代表として、客席の半分が空席のプレーオフにも言及

 わずか2年前のフットサル・ワールドカップ(W杯)の日本代表メンバーなのだから、当然と言えば、当然なのだが、FP皆本晃が抜群に利いている。

 ブルーノ・ガルシア監督から木暮賢一郎監督に、指揮官が後退した日本代表からは離れたものの、今シーズンからは立川に移転したチームの代表を務めながら選手としてプレーを続けている。

 チームの代表として、今シーズンの立飛アリーナの最終戦ではホームに2,122人を集め、クラブ史上初めてのホームゲーム2,000人突破を達成した。数年前、リーグが府中市立総合体育館のキャパシティやピッチサイズを理由に、クラブに対して本拠地の移転を迫った時、すでにFリーグの試合に2,000人が観戦することは稀だった。それだけに『素晴らしい雰囲気の会場を自分たちの手でつぶすとは、なんと本末転倒でバカげた決定をするんだ』と思ったが、見事に前のホームアリーナでは不可能だった動員を成し遂げたのだ。

 これまでイチ選手だった皆本にとって、クラブ経営は初めての連続だった。自分のコンディションに向き合えた時間も、クラブの運営に気を配らないといけなくなった。そうなると、ピッチ上のパフォーマンスは落ちても不思議ではない。だが、選手としてのパフォーマンスを見ていると、あまりチームの代表を務めていることを感じさせないのだ。

 本人には以前、「そんなことない!」と強めに否定されたが、個人的には皆本は、一つのことに向かいすぎると空回りする傾向にあると思っている。日本代表ではなく、チームの代表という立場になったことで、良い意味で力みなく、ピッチでプレーしているように見えるのだ。この状態の時の皆本は、抜群だ。守備では相手のエースをつぶしながら、プレスをかける前の選手のカバーもこなす。攻撃面では、力強い突破を見せることは減ったが、決定的なラストパスやシュートで直接ゴールに絡むことができる。攻撃でも、守備でも、「ここ!」という要所に、徹底的に顔を出すのだ。

 現在の立川アスレティックFCは、プレーオフ準決勝は不在だったFP完山徹一や相手のFKの際に壁として出てきたFPボラのような例外もいるが、多くのベテラン選手がチームを離れて、走れる若い選手たちがそろった。

 似た状況でプレーしていた時がある。2016年のことだ。U-20の選手を中心に組んだタイランド5sの日本代表メンバーに、バサジィ大分のFP仁部屋和弘とともにオーバーエイジのような形で招集されて、若い選手たちを自在に動かしながら、日本が出場を逃したフットサルW杯コロンビア2016に出場する3カ国と戦ったのだ。個人的に、この時の皆本がキャリアで最高のパフォーマンスを見せていたと思っているのだが、まさに今の立川でも走れる若手をうまく動かしながら、自分がやりやすいようにプレーしている印象がある。

 こんなことを書くと、せっかく良い形で力みが取れているのに、再び力が入ってしまうかもしれないが、名古屋を相手に5試合で3勝を挙げるためには、タイランド5sを超える過去最高の皆本晃がいないと難しいと感じる。チームの代表1年生として、クラブ初の2,000人を達成したリーグ戦を、最高の形で締め括ることができるか。過去最高の5番のプレーが見られるかどうかにかかっていると思う。

 そんな皆本のプレーオフ準決勝後のコメント。当初、「5分」と言っていたものの、ほぼ倍の9分間、しゃべってくれました。

FP 皆本晃「5試合あるから、本当の実力が試される」

――今日の取材、何時までに終わればいいですか?

皆本 5分以内でお願いします(笑)。そんなに聞くことがあるか分かりませんけど(笑)。

――まずは感想を聞かせてください。

皆本 良かったなと。明日、休みになったことが一番大きいなと僕自身思っています。みんなそうですよ。申し訳ないですけど、先を見据えての戦いなので。2位でプレーオフに上がった以上は、ここで負けるのはあり得ないというのがあったので、いかに短く終われるかを目標に掲げていたので、良かったなと思います。

――守備からしっかりやっていこうというプラン?

皆本 それは今シーズンを通してずっとそう。今日だからというわけではなく、全試合、そんな戦い方をしているので、いつも通りやったかなと思います。

――相手に退場者が出た後、金澤選手が2本シュートを外しました。その直後に皆本選手が出て、すぐに金澤選手のゴールが決まりましたが、何か影響はあったのですか?

皆本 それは偶然ですね。そもそも僕が(パワープレーで出るはずだったのに)疲れていたので、シュートが強い中村(充)に託していました。ただ、彼には「1分で入らなかったら交代だぞ」と話していたので。そのまま入れば良かったのですが、そういうことで途中から代わりました。もう、おじさんなので(笑)。

――リーグの名古屋戦の時は、自分で決めましたよね。

皆本 あの時は、まだ元気だったので(笑)。試合を通して、まだ体力があったので2分間行けると思ったので。あの時も、もし体力的に疲れていたら、ほかの選手に頼んでいたと思います。

――代表兼選手ですが、ホームゲームが終わったことでプレーオフには選手として専念できる?

皆本 そうですね。経営とかを考えずに挑める試合だったので。そういう意味では、選手としての価値も証明したいなと思っていましたが、今日はとにかく勝たないと次にいけないので、勝つためにできることを考えていました。

――今季は府中から立川に本拠地を移し、激動の一年でした。そのなかで決勝まで進めた手ごたえというのは社長としてどうか?

皆本 ある意味、出来すぎなところもありますが、そんな簡単ではないと思っています。ここから5試合勝ち切らないといけない。ここまで来られたのは、僕だけの力じゃない。確かに僕の思いは、ほかの人より強いかもしれません。でも、その思いにみんなが乗っかってくれて今がある。そういう思いを持って、一緒に頑張ってくれて、引っ張ってくれている仲間がいるので。そのなかで良い結果が出ればいいなと思っています。

――今日も立川のファン・サポーターが多くいました。

皆本 そうですね。傍目に見ても、青い服を着たファン・サポーターの方々が増えてきている。それは今までの経営努力が実ってきた瞬間でもあると思いますし、一方で、試合に勝っていて、良い試合を見せられていることも大きいのかなと。選手たちが頑張ってくれているので。僕一人が経営で頑張っても、スポーツビジネスはうまくいかない。選手たちが頑張って、勝ち負けじゃないけど良い試合を見せたり、最後まで諦めない姿勢を見せたり、みんなを感動させたりする。そういうものを与えていなかったら、絶対に応援はしてくれない。それがうまく今は回り始めている。一つだけでは回らないけれど、それが2つ、3つとなれば回り始めているので、この勢いで回し続けたいと思います。

――5試合やって優勝するつもりで臨む?

皆本 もちろん負けるつもりで試合に挑むつもりはないです。簡単ではないですし、今日も絶対に勝てるというつもりで臨んでいたわけではありません。一方で、自信は持っていく。5試合あるから、運や勢いだけで勝てるわけではなく、本当の実力が試されると思う。1試合だったら、運や勢いで勝てると思いますけど、5試合ですから。そういう部分に関しても自信を持っているので、それをしっかりぶつけたい。

――チームを作ってきた1年間をどう振り返る?

皆本 すべてがうまくいっていたわけではありませんが、結果的にいろんな人の思いが乗っかってチームとして、戦術的に比嘉さんがやってきたことも形になってきている。スポーツは最後、結果が問われるものだと思っているので、そこで良い形にできればと思います。

――会見で比嘉監督はよく「選手たちが大人になってきた」と言っているが?

皆本 それは本当にすごく感じます。ベテラン選手がいっぱいいるわけではないのですが、1試合1試合、積み重ねていくなかで、勝つために何が必要かをみんなが考えてやれるようになってきている。そこがうまくフィットしてきていると思います。

――昔、大分が名古屋との連戦で初戦は善戦して勝っても、2戦目で大敗したことがありました。これまでは連戦になればなるほど名古屋が優位だと思われていました。先ほど「自信を持っている」というコメントもありましたが、現在はその状況が変わったと感じていますか?

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