プラモデルの“可能性”を体感できる「Figure-riseLABO」シリーズの話【プラモデルのすゝめ】
このキットを覚えているでしょうか。
BANDAI SPIRITS ホビー事業部が「Figure-riseLABO」という新シリーズの第一弾として、2018年6月にリリースされた「ホシノ・フミナ」です。
こちらはガンプラなどと同じ“プラモデル”、つまり、ランナーにくっついたパーツを切って貼って完成させる必要があります。
有機的なラインを苦手とするプラスチックキットで女の子なんて、ひと昔前なら正気の沙汰じゃなかったのですが、この時期より少し前からコトブキヤのフレームアームズ・ガールが台頭してきて、うまいことできればいけそうだっていう雰囲気があったころ。
予想通り、かなりヒットした商品だったと思います。
ただ、このあとにフミナの色変えが出て、それはそれなりに売れた雰囲気だったんですけど、新作の初音ミクや『ラブライブ!』の南ことり、『エヴァ』のアスカなどはそこまで振るわず、その証拠にアスカのバカシキット以降、新製品が出る気配はありません。
その理由は明らかで、“フィギュア”として見たとき、単純に出来が悪いからなんですね。
それは売れたフミナにしたってそうなんですけど、フミナが売れたのは、キャラクター人気とともにモチーフが性的だったから。
大人っぽい体つきにして露出させた中学生って、今だとなにかのきっかけに炎上しそうなモチーフ。でも、よく見ると顔とか全然似てないですし、表情も本家のフィギュアのクオリティには遠く及びません。
次弾の初音ミクがまさに蝋人形みたいで、いくら初音ミクが人気とはいえ、組み立てる手間もあるし、特別安いわけでもないのに買わないですよね。そもそも初音ミクのカワイイフィギュアはこの世の中に捨てるほどありますし…。
でも、そもそもこの商品は、プラモデルで出来の良いフィギュアを作るという結果ではなくて、その“工程”こそがキモであり、シリーズのテーマでもありました。
トップの写真のフミナは、組んだだけの無塗装。シールすら貼ってません。
各部色分けや、肉体と衣装のツヤ感の違い、目の色分け、赤みを帯びた肌色などをプラスチック成形だけで再現しているんです。
高い成形技術とアイデア次第で、まだまだプラスチック成形の可能性が広がることを指し示めしたシリーズ。
このシリーズに限らず、そういった動きをこの時期にバンダイは結構やっていて、割る感触を再現したプラスチック製のチョコレートであったり、柿の種、化粧品のレプリカ? みたいなのも作ってましたね。
でも、ことごとく滑っていて、特にホビーファンには刺さっていなかった印象だったのは、このジャンルにおいて、プラモデルの出来の良さには敏感でも、その裏側に興味を向けられるファンはまだまだ育っていなかった、ということでしょうか。
「Figure-riseLABO」は、エンタメ向けプラ成型のビックリドッキリ技術をその手で体感できる唯一のシリーズです。これだけ送り手の意図が詰まったプラモデルもないので、市場から姿を消す前にどれか一つ作ってみてほしいです。
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