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不適切報道大賞2024 報道加害部門番外編 子宮頸がんワクチン接種率の低さとマスコミの報道加害
2024年12月9日、毎日新聞から「子宮頸がんワクチン接種率低い日本 世界では5カ国が9割越え」という記事が配信されました。
内容をまとめると、「子宮頸(けい)がんを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの最終接種率は0.3%であり、日本は進んでいない状況」との論評が書かれています。
2024年10月3日には、NHKから「子宮頸がんなどを防ぐHPVワクチン 多くの誤情報がSNSに」という記事が配信されています。
記事の中には『このワクチンについて、SNSでは「打つと不妊になる」などといった誤った情報が拡散し、なかにはXで100万回以上閲覧されているものもあります。』との記載があります。
これについて、子宮頸がんワクチンの接種率が低いことについて、マスコミの報道が原因ではないか。との指摘があります。
←2015年の毎日新聞 2024年の毎日新聞→
— ハム速 (@hamusoku) December 10, 2024
昔はあれだけ危険を煽って日本からワクチン追い出して
女性で子宮頸がんになる人は年間1万人 死亡者数は3000人
ワクチンさえ接種していれば救われていたかもしれない
これ何かの犯罪に該当しないの? pic.twitter.com/N5s6lFaTVS
不安を煽ったオールドメディアがいたのでは? pic.twitter.com/ZDHYh41ouf
— ピエトロ (@V0HFg4pfurfbNh4) December 10, 2024
また、毎日新聞のXにおける「子宮頸がんワクチン接種率低い日本 世界では5カ国が9割越え」のポストには、コミュニティーノートが付けられる事態となっています。
子宮頸がんワクチン接種率低い日本 世界では5カ国が9割超え https://t.co/Ev3T5mpV04
— 毎日新聞ニュース (@mainichijpnews) December 9, 2024
この投稿には、日本での子宮頸がんワクチン接種率低下の重要な背景が欠けています。2013年の厚生労働省による積極的勧奨中止後、マスメディアによる副反応強調報道などの影響で接種率は激減し、予防可能なはずの子宮頸がんによる死亡は年間約3000人に及ぶ状況が続いています。「名古屋スタディ」では、ワクチン接種による有意な副反応増加は確認されず、当初懸念されていたほどの副作用リスクがないことが示されています。これらを踏まえ、メディアには報道の影響を議論する責任があります。
【参考資料】 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
名古屋スタディについて: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/advpub/0/advpub_24-053/_pdf/-char/ja
全国がん統計: https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html
こちらはNHKの特集ではありますが、
記事の中で、NHKは、『2013年4月、HPVワクチンは公費で受けられる「定期接種」になりました。その後、接種後に体の痛みなどを訴える女性が相次ぎ、接種との因果関係が定かではなかったものの、「ワクチンの副作用」とする報道が相次ぎました。
こうしたことから接種率は下がり、2019年のデータでは接種率は1.9%にとどまっていました』と記述。
また、子宮頸がんの経験者である「まゆみさん」が、「HPVワクチンの接種が始まった当時、接種後の症状としてけいれんしている女の子などのショッキングな映像がテレビで流れて、怖いワクチンというイメージしかなかったです。メディアがそういう印象を広めた側面があるのだから、最新の知見をもとにこれから正しい知識を広めていくのもメディアの責任だと思います。」と発言しています。
一方、NHK自身が子宮頸がんワクチンに対して怖いワクチンという印象操作を行っていたことが公表されていない。という意見もあります。
いち産婦人科医としては
— たぬきち (@Tanuk_Ichi) October 16, 2024
"NHKによるHPVワクチンと子宮頸がんに関する過去の報道が誤っていた"
という見解を、NHK自身が公表する必要があると思います。… https://t.co/oHNUmcLLrB pic.twitter.com/WEr60D6J42
NHKは、2014年12月16日には「緊急報告 子宮頸がんワクチン接種後の障害」という番組を放送。
https://web.archive.org/web/20150907214155/http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/summary/2014-12/16.html
「ハートネットTV」に18歳の女性から寄せられたメール。
「左側の手足が全く動かす事が出来ず、他にも記憶障害であったり、毎日当たり前の様にある頭痛で寝たきりになってしまい、学校にもなかなか行けずにいます。他にもたくさん日本中で悩み苦しんでいる人達がいます。みんな子宮頸がんワクチンを打ってから体に異常が出ています。そしてみんなは元の体に戻ろうと必死に毎日闘っています」
子宮頸がんの予防効果を期待され、2009年に日本でも承認された「子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)」。これまでに10代の女性を中心に330万人以上が接種しました。しかし、ワクチン接種後、原因不明の体の痛みなどの症状を訴える患者が相次いでいます。難病などの専門家たちは独自の研究チームを立ち上げ調査を開始。ワクチンの副反応の可能性がある症状が全国で1000件以上にのぼり、接種後1年以上が過ぎてから深刻な症状が現れるケースも多いことがわかってきました。こうした状況を受け、厚生労働省も、症状が出たすべての人を対象とした追跡調査の実施を決定。11月には電話相談窓口を開設するなど、実態把握への対応が始まりました。
2016年1月27日にも、クローズアップ現代の特集で、副作用”がわからない? ~信頼できるワクチン行政とは~という放送を配信。
https://archive.vn/2018.01.27-010615/http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3760/1.html
新規ワクチンの導入に消極的だとして「ワクチン後進国」と指摘されてきた日本。ここ数年、迅速な導入を進めてきた。しかし、3年前に定期接種化された子宮頸がんワクチンを巡り、接種した人から“副作用”を訴える声が続出。国は接種勧奨を中止する事態となった。2年以上経った現在でも、勧奨を再開するのかどうか、判断できない状況となっている。見えてきたのが、ワクチン接種後に現れる症状を的確に収集・検証し、因果関係を疫学的に評価する仕組みの脆弱さ。国民が安心してワクチンを接種できるためには何が必要なのか?米国の制度との比較も交え、処方箋を探る。
記事内に出てくる酒井七海さんのように、子宮頸がんワクチンの接種後に、副反応が原因とみられる重度障害となったがいるのは事実です。
だからこそ、副反応の原因をさぐり、適切な情報を公開し報道することが本来のマスコミに求められる役割であると考えます。
しかし実際のマスコミは、患者を利用する形で副反応に対する不安商法を行い、その報道姿勢は結果としてワクチン接種率の低下を起こしたのみならず、患者が反ワクチン・反医療主義であるという偏見を与え、バッシングという二次加害を引き起こす原因にもなりました。
朝日新聞は、2020年11月4日の時点で、「子宮頸がんによる死亡4千人増と推定」する大阪大学の報告を掲載しています。
毎日新聞による、2024年12月9日「子宮頸がんワクチン接種率低い日本 世界では5カ国が9割越え」の記事は、当時のマスコミによる過剰報道、報道加害を知る者にとって、他人事感・反省のなさを感じさせる記事であったと言えます。
子宮頸がんワクチンの副反応を利用した不安商法は、「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」が結成された2013年ごろから続き、その副反応の内容については議論が続く話題でありますが、
上記の点から、不適切報道2024 報道加害部門においても取り扱うべきものとさせていただきました。