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"そして でんせつが はじまった"(エンドロールを覆せ/NARLOW 楽曲考察)

はじめに

2024年1月27日、アイドルグループ"NARLOW"が、メンバーが作詞、振り付け等を行った新曲5曲をひっさげ、新体制お披露目単独公演『鼓動』を開催しました。

NARLOWについて全く知らないという方にとって、
それに対して驚くことではないと思いますが、
同日の昼公演にて、現体制楽曲終了公演『絶唱』も開催されており、
一日の公演でデビューから大切に歌い続けてきた、いわばグループの"武器"ともいえる楽曲を封印したわけです。

今回は新たに披露された中の"エンドロールを覆せ"という楽曲に関しての楽曲考察をしてみようと思います。
(※NARLOWを知らないという方のためにもある程度のグループとしての背景等は説明しますので、ドキュメンタリーを読むような感覚で読んでもらえると幸いです。)

それでは。

物語のあらすじ

『どう為ろうとも私たちの最終回はこの場所だから』というコンセプトのもと、パン・ルナリーフィ、イケダナナ、河野奈々帆、乃井りこ、山下うみ、円周律、ムロ葉菜子の7人で結成されたアイドルグループNARLOW。
2023年6月3日、Zepp YOKOHAMAでデビューライブを飾り、
同年10月24日、新宿BLAZEにて行われた単独公演では、チケットをsold outさせる等、徐々に人気を広げていた。
そんな順調に思えた中で、
2023年12月15日、腰の治療で一時活動休止をしていたメンバー、円周律の
『真義を裏切る行為が発覚した為』脱退。
12月25日には、プロデューサーANCHORの『規約違反』により解任、
今後については、『より一層メンバーを中心とした楽曲・作品づくり』を行い、
現体制楽曲終了公演と新体制お披露目公演を2024年1月27日に行うことを発表した――。

簡潔に、ちょっとカッコつけてライブまでのNARLOWの状況を書いてみました。
それでは次に、"エンドロールを覆せ"の歌詞の中身を見ていきましょう。

エンドロールを覆せ

覆せエンドロールを

楽曲の作詞を務めたムロ葉菜子が歌うパートから始まります。
その後に続くイントロも、"夜明け"のような何かがまた始まることをイメージさせるようなメロディで、今日からこの曲がNARLOWの新たな"アンセム"になるのだなとすぐにわかりました。

埃被った憂鬱だって別れ告げられる気がした
幸せ患う支度しなきゃ
四角い夜だった
その麓で語った
終電は諦めた

また始める夢の続き
諦められるわけなくて

馬鹿でもいい ただ一途

ここの歌詞は、個人的に上述の脱退騒動について歌った歌詞だと私は感じました。

"埃被った憂鬱だって別れ告げられる気がした"という箇所は、
メンバー全員、グループの解散や脱退を経験していることとも関連があると感じます。
メンバーそれぞれ何かしらの未練があって"今度こそは"という気持ちでNARLOWを始め、とても順調に、正しい道を進んで行っていた。
それこそ幸せ過ぎて心配になっちゃうほどに。。
("幸せ患う"は、恐らく恋煩いから派生した造語だと思われますが、とてもステキな表現だなと思います。)

"四角い夜"は、脱退騒動についてかなと。
四角形は、すべての角が直角だということもあり、個人的にはどこか無機物的なイメージがあります。
問題を起こす=クビ になることは、全くもって当たり前のことではある。当たり前なのだけれどその"="を認めたくないけれど、そうせざる得ない無常さが表現されていると感じました。

"終電は諦めた"という箇所は、NARLOWを続けることを決めたことを指していると思います。
正直、メンバーやプロデューサーが抜けたということは、グループが解散する要因に十分なり得るし、原因を作った人間が明らかに存在するわけだから、グループが解散する責任をその人たちに押し付けることだって可能だし、それをしても誰も責めることはできないと思います。
いわばその自己防衛の妥協点というか、安全策を、
乗ってしまえば家に帰れる"終電"に例えたのではないかなと感じました。

また、"馬鹿でもいい"というパートを歌う、山下うみさんは、
旧体制のいわばアンセムともいえる楽曲"こんな世界に為ろうと"でも
同様の歌詞パートがあったのでそういった、
旧体制を踏まえた歌詞を残してくれた点も非常に良いなと感じた点です。

最終回がここにあるからやってきたんだ
ハッピーエンドじゃなくちゃ許さない

覆せエンドロールを
今も音を掻き鳴らす

ここでの"最終回"とは、明らかにNARLOWが本来のコンセプトである
"どう為ろうとも私たちの最終回はこの場所だから"という言葉からの
引用だと思われます。

乃井りこさんがここの歌詞を歌うのもとても惹かれるものがあります。
いわば王道アイドル系で、普段もそれほど感情をぶつけるということをしないであろう彼女に、最もストレートで感情的な言葉を全力で歌う姿は個人的にとても心を打たれました。

泣いた方が強くなるとかいうけど
痛みを価値にして謳うより
煌めく言葉で踊らせたいの
ねえ音楽ってそうでしょ?

新体制のNARLOWがメンバーの作詞した楽曲を歌うと聞いたとき、
正直、あまり期待していなかったです。
理由は、楽曲のテイストが、『どんな逆境にも負けない、やるしかない』といったものばかりになりそうだなと想像がついたからです。(まさに"痛みを価値にして謳う"ということですね。)

もちろん、メンバーとプロデューサーが脱退するという前代未聞の出来事のあとに
歌詞を書き始めるわけですから、そのような気持ちになるのは当然だし、
それ自体がダメという訳ではないけれど、
そればかりになると言葉の重みがなくなってしまうような気がしてしまっていました。

実際、新体制の楽曲は、そのような旨の歌詞が含まれていたものも多かったと個人的に感じており、お披露目ライブを観ている最中も、「まぁそうなるよな。。」と思っていた矢先、"痛みを価値にして謳うより 煌めく言葉で踊らせたいの ねえ音楽ってそうでしょ?"という歌詞が飛び込んできて本当に心を見透かされたような気持ちになり鳥肌が止まりませんでした。

恐らく作詞のムロ葉菜子さんも、私と同じようなことを考え、
自分にとっての憧れていた音楽とは何か??と改めて考え直して
この歌詞になったのだろうなと推測されます。

上手くやろうと思えば
綺麗なとこだけ見せれるけど
賢くあざとく欺く不幸

あいつら笑ってるうちに
アイスが溶けるその前に
野次も罵倒も音に乗ろうよ
惹き連れていくから

また始めた夢の話
叶え方は気づいてる
馬鹿でもいい 止められないよ

"あいつら笑ってるうちに  アイスが溶ける"
という歌詞は、"あいつ"と"アイス"で韻を踏みつつ、
ここの歌詞を歌うパン・ルナリーフィさんがアイスをツイートする際に
用いるハッシュタグである、『#アイスを溶かすな』
にも掛かっているのかなと。
とてもワードセンスを感じつつも、メンバー愛も感じられる良い歌詞だと感じます。

"野次も罵倒も音に乗ろうよ 惹き連れていくから"
"惹き連れていく"という造語を用いた表現もとてもNARLOWらしいなと感じます。
ネガティブなことを言われるかもしれないけど、それを音楽に変えて、
転生者(NARLOWのファンの総称)に魅せることで、NARLOWは進んで行くという意思を感じます。

"また始めた夢の話
叶え方は気づいてる
馬鹿でもいい 止められないよ"
という箇所は、一度グループの脱退や解散を経験したメンバーで結成されたNARLOWだからこそ深みが増す言葉だと思います。

特に自分としては、ムロ葉菜子さんと、パン・ルナリーフィさんが所属していた2期BiSのことが頭に浮かびました。
過程は違えど、メンバーが中心の活動を迫られているという面では同じ状況と言えると思うし、2期BiSはグループを解散するという決断に至ったわけですが、最期までその決断に反対していたムロ葉菜子さんの姿がとても記憶に残っています。(詳しく知りたい方は、「IDOL-あゝ無情-」をご覧ください。)

流すこともできない
無数の涙を数えてきた
負け戦の這い上がり方はもう知ってる
派手に幅利かせ
落ちても翔け
偶像なんかじゃ無い
痛みも強さも嘘じゃない
鼓動も 心も 言葉も

"流すこともできない無数の涙"という言葉からも、
恐らく公にできない、グループ内での葛藤等があったのだろうなということが読み取れます。

"派手に幅利かせ 落ちても翔け 偶像なんかじゃ無い"
ここのパートを歌うのは、乃井りこさんですが、やはり普段パフォーマンスで感情をそれほど見せない乃井りこさんが歌うことでグッと引き込まれると思います。

(追記)
書いてる内にムロ葉菜子さん本人がここの歌詞についての
ツイートをされていたので、念のため貼り付けておきます(詳しくはこちら)。

"痛みも強さも嘘じゃない  鼓動も 心も 言葉も"
NARLOWとして魅せていることに何一つ嘘はなく、ただありのままの私たちを魅せてるだけなんだ、というメッセージが伝わってきます。

蠢く生き様が 聴こえるか?
変わらない為に変わっていく
覆せエンドロールを
今も言葉吐き叫ぶ

作詞のムロ葉菜子さんが歌う落ちサビパート。
"蠢く生き様"とは上述のありのままを魅せることの言い換えかなと。

"変わらない為に変わっていく"
思えば、作詞のムロ葉菜子さんは、元プロデューサーのANCHORさんが作るNARLOWの楽曲を人一倍愛していたように記憶しています。
ライブ当日のMCでも話されていましたが、
今までの曲を封印し、新たに自分が歌を作らなければならない状況になったことは、本当に尋常じゃないプレッシャーだったと思います。

その中で、旧体制と決別するような方向に行くのではなく、
それらを経て、ムロ葉菜子さんと今のNARLOWにしか作れないモノが出来上がって本当に良かったなと感じます。

最終回がここにあるから
初期衝動越えて
煌めく灯し火に為ろうか

"初期衝動"の意味を調べてみるとロックバンド等を評する際に使われる専門用語のようで、"ただ無我夢中で音楽にのめり込んでいるような、内から溢れ出る激情、これから何かが始まるという期待に満ち溢れたワクワク感"といった意味なのではないかなと私は解釈しています。
(※余談ですが、ムロ葉菜子さんの2期BiS在籍時、“そして でんせつが はじまった”担当だったこととも繋がりがあるのかなとかも少し考えてみたりしましたが、さすがに考えすぎかな。。)

"煌めく灯し火に為ろうか"の部分は、
明らかに旧体制のアンセム曲である『こんな世界に為ろうと』のラストの歌詞、"さぁ、何に為ろうか"に対するムロ葉菜子さんなりのアンサーということでしょう。そして"煌めく灯し火"とは、初期から一貫して使用されているNARLOWのロゴを指しているのかなと。

また、"為る"ではなく"為ろうか"で留めている点も良いですね。
これが正解ではなく、これから先また違うアンサーが出てくることも期待させる、とても素晴らしい歌詞だと思います。

同じ歩幅で もがいて何度も
ねぇ、音楽ってそうでしょう?
また逢おう音楽で

1番の"痛みを価値にして謳うより 煌めく言葉で踊らせたいの ねえ、音楽ってそうでしょ?"という歌詞との対比というか、続きなのかなと思います。
ピカピカした言葉で観る人の心を躍らせたいと思っているけれど、中々上手くいかずにもがき苦しむ様それこそ音楽であり、私たちNARLOWなのだというメッセージを感じました。

"また逢おう音楽で"
いつしかのNARLOWのライブのMCで、(確か)イケダナナさんが
「転生者のみんなが何か嫌なことがあっても、ライブに来るだけで笑顔になれる、そんな場所をNARLOWは作りたい」と仰っていたのがとても印象的でした。恐らくそういった意味がここの歌詞にも含まれているのかなと感じました。

終わりに

さて、いかがだったでしょうか。
あれよあれよと5000字まで来てしまいましたが、ちゃんと全文読んでくれた人はいるのでしょうか。。(笑)

私個人としては、脱退してしまった円周律推しだったので、
NARLOWへの熱が冷めてしまうのかなと感じていましたが、新体制のライブを見てその考えは180度変わりました。

"エンドロールを覆せ"を作詞したムロ葉菜子さんには、正直ここまでの歌詞が書けるとは思っていませんでした。
洒落た言い回しや、造語も多く、それでいて、前任のANCHORさんよりも歌詞が転生者寄りというか、とてもストレートで伝わりやすい印象を感じました。

ムロ葉菜子さんは、本当に良くも悪くもまっすぐで素直な性格だと思います。そのせいで、人から少し距離を置かれてしまうことが多いようにも正直感じますが、その性格だからこそ、このような素晴らしい歌詞が出来上がったと思いますし、その不器用な性格も愛している転生者も沢山いると思います。

これからのNARLOWに幸あれ。

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