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脳の影の支配者

 「天才と凡人の違いは、どこにあるのだろうか?」

 一人の病理学者が、この謎の答えを知りたいがために、禁断の行動をとってしまった。

 それは、「天才物理学者 アインシュタイン」の脳を遺体から無断で取り出し、標本として保管してしまったのだ。そして、その標本の一部は、世界中の脳科学者にサンプルとして配布され、分析された。

 その結果分り得たことは、天才の脳も普通の人の脳も、何一つ差異は見られないことだった。ニューロンの数、大きさにも変わりはなかった。

 ただ一つ違ったのは、ニューロンではない細胞、つまり「グリア細胞」の数が、一般人の2倍存在したのだ。

 グリア細胞は、脳内の神経組織の80%以上を占める。しかしその働きは、「ニューロンとニューロンの間を埋める梱包材や接着剤のようなもの」とみなされ、長年軽視され続けてきた。

 電気的活動を行わないグリア細胞の役割は、本当にたったそれだけなのだろうか?

 近年、グリア細胞に対する研究手法が大きく発展し、その機能を垣間見ることが可能になってきた。

 そこで得られた知見は、既存の脳科学者の理解を覆すものであり、グリア細胞が「脳の影の支配者」として、ニューロンの活動を監視し、制御していることだった。

 グリア細胞に関する新たな発見は、神経生理学の発展のみならず、様々な神経系疾病の解明や治療に、希望の光をもたらすであろう(脳腫瘍、脊髄損傷、アルツハイマー病、うつ病、統合失調症など)

 果たして、「グリア細胞の真の役割」とは?…


 (紹介図書)

BLUE BACKS 「もうひとつの脳」 R・ダグラス・フィールズ著 講談社

 

 


 


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