
なぜ少年は駆け出したのか?
父と少年。
「ねえ、今日は友達と遊びたいよ~」
「ダメだ!
家の手伝いをしなさい!」
……。
「今日はいいでしょ?
友達が人が足りないから、
どうしてもって言うんだ~」
「ダメと言ったらダメだ!
これはお前の仕事だ!」
……。
「釣りに誘われたんだ~。
今日は父さん休みだから、
行ってきてもいいよね」
「父さんは休みでも、
寄り合いがあるんだ!
何度言ったら分かるんだ!
これはお前の仕事だ!」
「ただいま…あれ?
なんで父さん、家にいるの?
寄り合いは?」
「今日は急に中止になったんだ」
「だったら途中で、
僕と変わってくれたら、
よかったのに~」
「何度も言わすな!
お前の仕事だ!
自分の仕事を投げ出すな!
ほんとに、うるさいヤツだな!」
……。
「父さん!
僕も急に友達から、
手伝い頼まれたんだ!
行ってもいいでしょ?」
「……」
「ねえ!父さん!」
「……」
……。
「父さん!
学校で集まりがあるんだ。
全員参加なんだって。
だから、父さん変わって」
「……」
「じゃあ、母さん!
お願い!」
「……」
「二人とも!
ねえ~!
ねえってばあ~!」
「……」 「……」
今日も少年は…
トボトボと重い足取りで…
森を抜け広大な牧草地へとやってきます。
羊と共に…。
少年は小高い場所に座り込み…
羊たちを眺めています。
とても…
それはとても悲しい顔で…。
ガサガサッ
少年が咄嗟に身をひるがえすと、
そこには野生の鹿がいました。
「なんだよ…脅かすなよ。
オオカミかと思ったじゃないか…。
あっ痛っ!
ほら~今ので手の皮擦りむいたよ。
あ~あ、血が出ちゃって…
怪我したじゃないか…
怪我?…血?」
そして…
急に立ち上がると…
全速力で街へと駆け下ります!
「オオカミが出たぞ~!
オオカミが出たぞ~!
ほら見て!
血が出てるでしょ!
オオカミにやられたんだ!
ほんとだよ!
オオカミにやられたんだって!
だから僕の両親に知らせて!」
このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。
いいなと思ったら応援しよう!
