「いじめ」には「法律」
いじめに悩んでいる方へ。
こんにちは。
名古屋で社会保障制度の調査代行をしている社会福祉士の稲山です。
一億円欲しいです、でも一億円もらって明日死ぬとしたら…いらない。それって明日は一億円より価値があるってこと?
「いじめ」は「犯罪」
(身体的、精神的、性的な)暴力、(万引きさせる、使い走りなどの)強要、物を隠したり汚す、ネットを使った誹謗中傷etc…。一般社会で「犯罪」とされる行為も、学校の中で起きると「いじめ」と呼ばれ、まるで別のもののように扱われます。
場所が変わったからといって、その行為の本質が変わるわけではありません。「いじめ」は「犯罪」です。
今回の記事は、いじめにあった時の一つの考え方として「犯罪が法律で対応されるように、いじめも法律で対応したほうがいいんじゃない?」という内容です。
「いじめ」には「法律」という観点を持ってみると、いじめにあった時の考え方や行動がとてもスッキリすると思います。
「いじめ」の事実は学校に伝えなくてはいけない
子どもがいじめられていることを学校に伝えるべきか…迷う必要はありません、いじめの事実を学校に伝えることは法律上の義務です。
いじめ対策推進法第23条
学校(教師を含む)は「いじめ」のない環境づくりをしなくてはいけない
学校及び教師(以下、学校)は、子どもが心身ともに健やかに学校生活を送るための環境づくりをする義務があります。そうした環境が作れない原因が学校にある場合は、その責任を追及する法律があります。
国公立学校と、そこで勤務する教師の場合
国や公立の学校で働く教師は公務員です。そのため、そこで働く教師が責任を果たせなかった場合、国立の学校では国、それ以外の学校では都道府県や市町村が、その教師の代わりに責任を取ることになります。その根拠は、国家賠償法1条です。この法律によれば、教師の行為について国または地方公共団体が責任を負うことになります。
国家賠償法1条
私立学校と、そこで勤務する教師の場合
私立学校の場合、責任を取るのは学校を運営している「学校法人」という組織です。その根拠は、民法715条です。この法律によれば、教師の行為について、その教師を雇っている学校法人が責任を持たなければならない、ということになっています。
また、私立学校の場合、教師自身に対して責任を追及することもできます。その根拠は、民法709条、415条です。
民法
それ「いじめ」じゃなくて「犯罪」です
たたく、蹴る、押し倒すetc…ケガをさせなくても痛みや恐怖を与えるような行為→(暴行)刑法208条
「殴るぞ」「学校に来るな」など相手を脅したり怖がらせたりする行為→(脅迫)刑法222条
「あの子は泥棒だ」といった嘘の情報を言ったり、SNSなどで悪口を書いたりするなど、相手の悪い噂を広めたり、事実でないことを言って相手の評価を下げるような行為→(名誉棄損)刑法230条
殴ったり蹴ったりして体に傷や痛みを与えたり、病院に行く必要があるような状態にするなど、暴力を振るってケガをさせる行為→(傷害)刑法204条
「お金を払え」「何かをしろ」といった形で嫌なことをさせるために脅したり、無理やり要求する行為→(強要)刑法223条
相手をバカにしたり、見下すような発言や行動→(侮辱)刑法231条
遊び半分で押したり引っ張ったりして相手が転んでケガをするなど、相手を傷つけるつもりはなかったけれど、不注意やふざけた行動によって相手にケガをさせてしまった→(過失傷害)刑法209条1項
先生がいじめを止めるべき立場にありながら、それを見逃したり無視した結果、生徒がケガをした、亡くなった→(業務上過失致死傷等)刑法211条
刑法
さいごに
大阪府寝屋川市では、通称「寝屋川方式」と呼ばれる積極的ないじめ対策をとっています。特長は
①条例を定め市長が加害者の出席停止や学級替えを勧告できる。
②いじめの解決に必要な場合、訴訟や転校費用の一部を負担する。
③いじめの解決に向けて刑事告訴や損害賠償など法的な対応も想定している。
「いじめ」は「犯罪」です。私自身も被害者の一人です。くれぐれも怒りや悲しみといった感情に任せた行動ではなく、法律や(寝屋川市のような)社会保障制度を根拠にした対策をとられることをお勧めします。