カメラにおけるマーケティングとの戦い


はじめに

カメラ界隈の情報に接していると「そんな古い/初級のカメラは捨ててもっと良いカメラを買おう。動画性能の低いカメラはクズだ。え?動画撮ってないの?取り残されるよ?そうそう、レンズももっと新しいもの良いものを買おう。みんな買ってるよ?どうして買わないの?」という謎の声が聞こえていました。(本当に聞こえたわけではありません。比喩です。)

そして1本10万円以上のレンズを買い、一時的に満足するものの、すぐに次のレンズが欲しくなる、ということを繰り返しました。買えた時はよかったのですが、ボーナスがなくなって買えなくなると…上の声は聞こえてくるのに買うことはできず惨めな気持ちだけが残りました。

すると、目の前にある素晴らしいはずのカメラとレンズが醜い物体に見えてくるではありませんか。なんだか気持ち悪くなって、とうとうミラーレス機一式を売却しました。

おかげで心の平穏を取り戻しましたが、何が起こったのか疑問が残りました。この度、一定の答えを得ましたので記録しておきます。

陳腐化によるマーケティング

経済システムに資本主義を採用する以上、利益を最大化するためのマーケティングは避けられません。その際に使われる手法に陳腐化があります。一般的に陳腐化戦略には2種類あるようです。

  • 一定期間で壊れるように、もしくは使い物にならなくなるように設計する。
    (例:いわゆる○ニータイマーw)

  • 問題なく使えるにもかかわらず、それを古臭く感じさせる。
    (例:デジタル一眼レフは古臭い。フルサイズミラーレスにあらずんばカメラにあらず。)

カメラの場合

カメラの世界は耐久性が求められるので前者は当てはまりません。その代わり後者のマーケティングが強力に推進されているようです。

カメラメーカーは、どうしてこの人を?と感じる人を含めてインフルエンサーを大量動員したり、ユーザーがSNSに投稿するのを促したりしています。そこで「前の機種はここがダメだった。新しい機種はこんなに素晴らしい。高かったけれど買って良かった。」と言わせます。ここでのポイントは 「みんな最新の機材を買っている」「新しいものを手に入れないと一人取り残される」と思わせることが大切なので質ではなく量なのでしょう。

この物量作戦は圧倒的で、自分の用途には今の機材で十分以上とわかっていても新機種の魅力に抗うのはかなりの精神力が必要です。やっぱり欲しいんです(笑

陳腐化のマーケティングは仕方がないのか?

上に書いた通り、資本主義と陳腐化のマーケティングはほとんと不可分なのだそうです。そして技術が進歩するのもこの手法のおかげなのでしょう。しかし、このままで良いのでしょうか?

私は貧乏性が幸いしてミラーレス(レンズ交換式カメラ)と縁を切ることができましたが、お金がないのに多重にローンを組んでまで機材を手に入れる人や、それが原因で家庭が崩壊することもあると聞きます。

また、高性能で便利なはずのカメラやレンズに不満タラタラな方も見受けられます。便利さを求めるとかえって不便さが気になるなんて、おかしくないですか?

現状と将来

個人的には今の状態はちょっと行き過ぎで、もう少しゆっくりカメラとレンズを楽しめる状態にする方が良いように思います。技術とマーケティングでメーカーが熾烈な競争が繰り広げていますが、写真の文化ってそんなにガサガサした(ありていに言えば「下品な」)ものなのでしょうか?

また、レンズ交換式カメラの市場は縮小を続けていると聞きます。競争の結果、機能と性能がてんこ盛りになり、高価になって売れなくなる。売れないから単価を上げて、ますます買える人を減らしていないでしょうか。市場の終わりに向かって競争が加速している…のでないことを祈っています。

終わりに:ではどうするか?

ボーナスがでている方はマーケティングのことなど気にせず、どんどん最新の機材を買って良いと思っています。頑張って働いた証に高価な機材を手に入れるこのは尊いことだと思います(本当です)。

でも、それ以外の場合は少し考える必要がありますね。

  • すでに陳腐化したシステムを買う。これ以上陳腐化しません。10年前のデジタル一眼レフでも十分素晴らしい写真が撮れます。そして程度の良いものでも安く手に入るはずです。高級機に50mm/f1.4レンズ一本で相当遊べます。

  • ライフサイクルの長いカメラを買う。私はGRを選びました。かつてコンデジが隆盛を誇っていた時代には3ヶ月や半年ごとに新機種が発売されていました。その頃ですらGRは2年に1回しかモデルチェンジしないという骨太の方針をもっていました。今や5年経っても新機種が出ないぐらいですね。また、デザインも最初から真っ黒で四角いため、新しいのを買っても奥さんにバレないとか言われていました。デザイン上も陳腐化は最小限です。

  • オンリーワンのカメラを買う。SIGMAのfpシリーズがそうかもしれません。お店で触っただけではありますが、出てくる絵の素晴らしさと、恐ろしいほどののんびりさが同居した不思議なカメラのように感じました。

機材に淫することができなくなると、良くも悪くも写真を撮るしかなくなります。写真を撮る気持ちが少し落ち着いてしまうかもしれませんが、肩の力を抜いて写真を楽しめるようになるのでは…と期待しているところです。今後、自分にどのような変化が生じるか、気が向けば記録しようと思っています。

お付き合いありがとうございました。

参考リンク
https://ugreen.io/the-hidden-costs-of-perceived-obsolescence-how-consumer-trends-manipulate-our-spending/

いいなと思ったら応援しよう!