”閉じない家族”をつくっていく。移住先でうまれたふたりの夫婦の形
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夫婦やカップルの本音をシェアするコミュニティ「フタリノ」です!
今回は、新連載「ふうふのA面・B面」第一回のゲストである
北埜さんご夫妻のB面として、妻のミサさんにお話を伺いました。
▼夫 コウタさんのA面はこちら
今回はB面として、妻のミサさん視点で、別れの危機から結婚を決めた背景や、おふたりが理想とする、”外にひらけた家族”とは? そして移住後の変化や子育てについてお届けします。
ぜひ最後までお楽しみください。
ふたりの出会い
ーーーコウタさんとの馴れ初めを教えてください。
ミサ:
コウタとは、辰野町でのインターンシップで知り合いました。
もともと私は、大学卒業後に地方の中小企業の海外進出を手伝う会社に就職する予定だったのですが、千葉出身であまり”ローカルな暮らし”を知らなかったので、卒業するまでの間に、色んな地域を見ておきたいという気持ちがあったんです。
インターンシップの見本市みたいな場所に行った時、どこも素敵だなあと思う一方、ほとんどの候補先が参加費が全部自費で……。学生の私にとったら厳しいなあと思っていたときに「10万円もらえまーす!」と誰かが叫んでいるブースがあったんです。後から知ったのですが、実はそこにいた男性がコウタでした(笑)
なぜ集客を手伝っていたかというと、彼はその時点ですでに1度インターンを経験していたこともあり、インターンの受け入れ事業者の方に、その場でお願いされたそうで、とっさに出た言葉が「10万円もらえます」だったそうです(笑)
ーーーその無茶振りがなかったら、辰野町に関わることも、2人が出会うこともなかったかもしれないんですね。ちなみにコウタさんの第一印象はどんな感じだったんですか?
コウタさんの第一印象とは?
ミサ:
実は、本人のことは全然覚えてないんです。とりあえず10万円もらえるんだという印象が強くて……。スーツ姿のおじさまたちがいる中で、1人だけ若い人が喋っていたので「何かこのインターンシップは面白そうだな」という印象があったと思います。
いざインターンが始まると、シェアハウスで共同生活していたこともあり、一緒に過ごす時間が多くありました。辰野町は自然豊かな場所だったので、朝ランニングをしたいな思ったときに、コウタがもともと陸上部だったので「一緒に走ろうよ!」と声を掛けました。
走りながら、お互いの家族の話や今まで自分がやってきた話をして、すごく面白い人だな、と。そこでお互いの関係性が、ぐっと近づいたことが交際のキッカケだったと思います。
ーーー今ミサさんから見て、コウタさんはどんな人でしょうか?
ミサ:
掴みどころがないようで、実はすごく心の中で感情の機微がある人。でも決して怒りを表すようなことはない人です。自分自身の感情を表現するのが、あまり得意じゃない部分もありますが、最近はだんだんと感情を表せるようになったと思います。
彼の屋号でもある「間」というコンセプトのように、人の間に立ったり、人と人を繋げたり、人の考えの中で白黒つけるのではなくて、第3解に着地するような、クッションになるような人かなと思います。
当初、結婚はあまり考えていなかった⁉︎
家族観をつくった3つの出会い
ーーーお付き合いをしている時から結婚は意識されていたのでしょうか?
ミサ:
絶対結婚する! とは正直あまり考えていなかったですね。
「2人の関係性において一つの手段が結婚だった」という感じで、結婚という形にはこだわっておらず、将来的にも一緒に入れたらいいね、と話していたくらいです。
ーーー結婚という形にこだわっていなかったのは、なぜだったんでしょうか?
(1)型にハマらない夫婦から学んだ価値観
ミサ:
今までに色んな”家族の形”を知る機会があり、型にはめられる必要はないと思っていました。そのひとつのキッカケが家族留学でした。
ミサ:
コウタの知り合いの方が運営をしていたこともあり、旅行感覚で京都のご夫婦の家にお邪魔しました。誰かの家庭にホームステイする形なのですが、もともと私は家族の形に興味があったし「面白そうだな、行こう」と軽い気持ちで参加しましたね。
そこで出会ったご夫婦は、毎年結婚記念日のタイミングで”婚姻関係の契約を更新していく”考え方のちょっと特殊なおふたりで……!
1年ごとにきちんと緊張感を持って、ダラダラとした結婚生活を続けないご夫婦だったので、彼らと出会ったことで「私たちらしい結婚の形ってなんだろう」と考えるキッカケになりました。
(2)ブラジル留学で出会った理想の家族
ーーーとても素敵な考え方のご夫婦だったんですね。
ミサさんが「家族の形」に興味を持ったキッカケはなんだったのでしょうか?
ミサ:
ポルトガル語を勉強していたこともあり、大学3年生のときにブラジルに1年間留学していました。そのときの経験から”家族”というものに興味を持つようになったんです。
私はトラブルメーカーで、よくハプニングが起きていたのですが、あるとき旅行先からビザの関係でブラジルに帰れなくなってしまったことがあって……。その時に1〜2ヶ月ペルーに滞在していた時期がありました。
その期間、ペルーの友達の家に泊まらせてもらっていたんですが、そのご家庭がすごく素敵な家族関係を築いていたんです。お父さんとお母さんがリスペクトし合って、自分たちの気持ちを伝え合っており「家族ってこういう形があるんだ……!」と衝撃を受けました。そこから”家族”について関心を持つようになりましたね。
(3)新しい家族の形を見せてくれたシェアハウス
ーーー移住の前は、カップルでシェアハウスに住んでいたと聞きました。
とても珍しい形かなと思うのですが、どんな方々と暮らされていたんでしょうか。
ミサ:
同棲中に仲良くなった方がシェアハウスのオーナーをされていて、彼らと一緒に住む前は、コウタと半年間、2人暮らしをしていました。
シェアハウスに住んでいたのは、1組の婦とお子さん、長年シェアハウスに住んでいるシングルの男性の方がいて、みんなで一つの家族みたいな関係性が心地よかったですね。
移住した今でも彼らとまた一緒に住めたらいいなと思うほど、シェアハウスでの暮らしは楽しかったです。
特に奥さんとは一緒に銭湯に行くほど仲良くさせてもらっていて、コウタとの関係についてもよく相談していました。
当時彼は、外にばっかり目が向いていて、2人の関係性を考える余裕もあまりなかったので「何のために一緒にいるんだろう」と私がちょっと嫌になってしまった時期があったんです。シェアハウスでの暮らしがなかったら、もっと早い時期に別れていたかもしれません……。
ミサ:
奥さんに言われて印象に残っているのが「ちょっとドライに聞こえるかもしれないけれど、お互いにとって良いことがあるから一緒にいるのであって、そこはもうちょっとシビアに考えてもいいんじゃない?」という言葉です。
それを聞いて、お互いに支え合うのも大事だけど、やっぱり一緒にいる意味がわかることも大切なんだなと思いました。
「2人でいる意味は何だろう?」というのは、何度かコウタにも問いかけて、一緒にいる意味について何度も話し合いを重ねましたね。
転機となったライター合宿
ーーーおふたりで関係性について話し合っていく中で、”別れではなく、結婚”を選択された理由はなんだったのでしょうか?
ミサ:
シェアハウスのメンバーに「ローカルに滞在しながら文章を書く合宿があるよ」と教えてもらい、勉強もかねて2人で参加したことが、今思うと転機だったと思います。
その合宿では、ライターとして書くことだけじゃなくて、話を聞いたり引き出す対話について学ぶ時間が多くありました。
合宿中「彼と私は別れると思います」とみんなに公言しちゃうくらい、気持ち的にはもう離れてしまっていたんですが、対話することの大切さを学んだ帰りの電車の中で、コウタとじっくり話をするタイミングがありました。
ーーーそのとき、具体的にどういった話をされたんでしょうか?
ミサ:
その時期、私は会社を辞めたばかりで将来に対して不安があったし、コウタも仕事が忙しくて余裕がなくて、二人とも気持ち的にどん底な状態だったんです。
お互い自分のことで精一杯だったから、辛くて家に帰っても話を聞いてもらえる状況ではなくて、それでどんどん相手に対して、気持ちを閉じてしまっている状況でした。
なので、まずは「お互いしんどかったよね」という話をして「辛かったときに気づいてあげられなくてごめんね」と、お互いに弱さを吐き出せた瞬間だったなと思います。
ーーーちょうどいいタイミングで対話する機会があったんですね。
ミサ:
ローカルの電車は、待ち時間も長く本数自体も少ないので、半強制的に”隣に座って話す時間”が持てたこともすごく良かったのかなと思います。
移住も最終的に、「辰野に行きたいんだったら、結婚して一緒に行こうよ!」と私がプッシュして勢いで決めました。合宿があって乗り越えたというか、たまたまお互いを立ち返る良いキッカケになりましたね。
今までの出会いから生まれた
ふたりの共通言語
ーーー今まで出会った様々なご夫婦から「こんなところが私たちの理想だな」という要素を取り入れて、ロールモデルを見つけていったのでしょうか?
ミサ:
「2人の関係性を閉じることはしたくないね」という前提があった上で、私たちが今まで出会った人たちは”外に関係性を開くことで、さらに2人の関係性を深めるような人たち”でした。
自分の親以外の色んなご夫婦に出会って、素敵だなと思うところを真似させていただいたり、自分たちの中でも「あの夫婦のこんなところが理想だよね」と共通言語を持てたことがすごくよかったなと思っています。
移住のビフォーアフター
今まで以上に頼りがいが増したコウタさん
ーーー2人の移住する前と後で、関係性に変化はありましたか?
ミサ:
東京にいた頃は、本をたくさん読んで考えることが好きな彼でしたが、地域に移住してからは、山で木を切る作業や地域のおじいちゃんたちの手伝いをする場面が増えて、リアルな人間関係の中で日々すごく成長してるなと思います。
自分のことをすごく棚に上げて言ってしまうのですが、純粋に日々できることが増えていて、話すことも今まではちょっとフワッとしてたことが、実感値を持った言葉になって、私自身も勉強なるようなことを話してくれたり、頼りになるなと感じています。
東京にいたときは、何か選択するときに私が引っ張ることが多かったかもしれないけれど、移住してからは「コウタに相談してみよう」とか「コウタならなんとかしてくれるんじゃないか」と頼らせてもらう瞬間が増えました。そういう意味でも、私は辰野町にきて本当によかったなと思っています。
お互いの仕事ぶりが見えることで
よりリスペクトする関係に
ミサ:
都内にいたときは、お互いに会社員だったこともあり、話でしか仕事の様子を知ることができませんでしたが、辰野町に来てからは仕事ぶりを直に見れたり、他の人からも話を聞いたりできる分、ダイレクトに相手に対するリスペクトが高まりました。
頑張っている姿を見れたり、「本当に価値のあることやってるんだ」と思える瞬間が増えることは、お互いにとって嬉しいなと感じます。
ーーーミサさんご自身の変化を感じることありますか?
ミサ:
自分自身のことは見えない部分もありますが、辛さや色んな感情を見せやすくなったり、今まで以上に全力でコウタにぶつかれるようになりました。
今までは端的な言葉で「〜〜で今日は疲れた」と、言っていたことを「こういうことがあって〜〜で、だから私はしんどいんだ。〜〜だから私は今嬉しいんだ」と、感情の背景にあるものを伝えるようになりましたね。
車での移動も多いので、一緒に過ごす時間やコミュニケーションの量は、東京にいるときよりは格段に増えたと思います。
移住先での子育てって?
ーーー移住先での子育てはいかがでしょうか?移住前は不安はありましたか?
ミサ:
今ちょうど生まれて9ヶ月になりますが、不安は全然ありませんでした。実家が遠いので、気軽に両親に頼れないのはちょっとつらいですが、行政の支援が手厚いので助かっています。
ファミリーサポートという支援のおかげでベビーシッター代が半額になったり、元々保育士をされていたご高齢の方が、ボランティアで子どもを見てくださったり……。
保育園も9ヶ月で入れたんですが、待機児童もなく0歳児はうちの子1人だけで、すごく恵まれてる環境です。仕事で関わる地域の人たちも、可愛がってくれているので、辰野町で子育てできて幸せだなと感じています。
外にひらけた”家族の形”
ーーーおふたりが頼り先をたくさん持てているのも、家族だけで何とかしようとせずに、外との繋がりを大事にされたからかなと印象を受けました。
ミサ:
本当に日々いろんな方に助けられていて「生かされているな」と感謝の気持ちでいっぱいです。
外との繋がりを意識するようになったのは、お互いのバックグラウンドとして、今まで家族だけの関係性で閉じることで不要な衝突があったり、良くないことがたくさんあったという感覚があったからかなと思います。
せっかく新しく家族をつくるからこそ、価値観でつながる関係性を築きたいなと考えています。
コウタとも「せっかく価値観が合って新しく家族になるのだから、
一緒にいることで2倍、3倍にいいことが起きる人生にしたいね」と話していますね。
また関係性を二人の間だけにせず、外に開いていくことで、たくさんの人たちに頼らせていただいていますし、私たちも周りの人たちの力になれることがあればと思っています。
ーーー意見を持ち寄って衝突する夫婦は、世の中には多くいると思いますが、おふたりの場合は、”家族”に対して「もっとこうだったらいいのに」という感情を持っていたからこそ、ゼロベースで事例を集めたり、自分たちの関係性について話し合いを重ねてこられたという感じなんですね。
ひとりでいるよりも
自分らしくいられる存在
ーーーミサさんにとってコウタさんはどんな存在でしょうか?
ミサ:
自分一人でいるときよりも、自分らしくいられる気がします。
自分では、感情の変化に気づけなかったり、やりたいことや嫌なことに気づくことが遅かったりしますが、コウタは感情を引き出すのが上手なので、一緒にいることで自分の嫌な部分も良い部分も「これは自分なんだ」と受け入れられるような気がします。
私は、”すべての人は価値ある存在だ”と思っているのですが、夫婦だからとかではなく、一人の人として、彼が存在してることは世の中にとってもすごく価値のあることだと思っていて……。
ちょうど昨日ドライブしながら中学時代の話をしていて、「中学のときってお互いすごく自分自身のことを認められなかったし、しんどい時もあったよね」という話をしていたんです。
そのときの彼にも「今あなたは社会にとって意味のあることをしているし、すごく価値がある存在なんだよ」というのを伝えてあげたいと思いますね。
ーーーミサさん、ありがとうございました!
新企画「ふうふのA面・B面」はいかがでしたか?
”結婚を機に、夫婦で移住”の背景には、北埜さんご夫妻ならではの決断やストーリーがありました。
自ら動き、出会うことによって広がっていく価値観。
いろんな形のご夫婦や家族と触れ合い、対話を重ねる中で、”ふたりにとって”大切にしていきたい家族観をつくりだしていった姿が印象的でした。
血のつながりのないパートナーだからこそ、”価値観で繋がっている”北埜さんご夫妻。
きっとこれからも新たな人と出会い、関係性を外へ開いていくことで、”おふたりらしい家族の形”を更新していくように感じます。
▼コウタさん(A面)の記事はこちら
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