
一瞬
現在、広島市の平和公園があるところは、かつては中島地区といって賑わいのある町であった。そのことは、ドラマや小説によって知っていたが1年下の同僚は、広島の平和公園にかつて人が住んでいたことを知らなかったという。何かの広場だと思っていたということだ。
そこには、かつて1500世帯が住んでいたといわれている。そして8月6日爆心地の同心円500m内の人たちは消えてしまったという。
消えしまうとはどういうことであろうか?一瞬の閃光で消滅してしまうとは?
私は映画やドラマで知ることができた。
映画「母と暮らせば」の主人公の息子は長崎の爆心地近くにいたので一瞬のうちに消えてしまった。私はそのシーンがと強く記憶に残っている。
主人公の息子は、いつものように家を出て、長崎の大学で医学の講義を受けている。ふと教室の窓から空を見上げたときに、パラシュートのようなものがゆっくりと落ちてくる。なんだろうと思いながら視線を移した瞬間、彼の視界は閃光につつまれる。「あっ」という声とともに、自分の前にある机の上のインクとともに己自身が消滅してしまう。
広島の中島地区を舞台にしたテレビドラマで松たか子演じる主人公もまたあとかたもなく消えてしまった。あの日、いつものように朝を迎える。朝から飼っている犬がやたらと吠えるので外に出てたしなめる。外は暑い夏。陽射しが強いので、空を見上げたときにパラシュートがゆっくり落ちてくるのを見る。なんだろうと怪訝に思った瞬間、側にいた犬とともに閃光にのまれてしまう。その後、彼女を探しにきた恋人が見つけるのは彼が彼女にプレゼントした懐中時計らしきのものが溶けてこびりついている石である。その石には彼女らしき影が黒い影がある。彼は、その影が彼女であること、消えてしまったことを気づく。
架空の話でしか知らなかった中島地区を写真で知る機会があった。昨年、ネットニュースで、ありしの日中島地区の写真が掲載されたおかげである。
そこには、水浴びする少年たち、父親に連れられビアホールに来ている少女、2600年の幕が垂れ下がっている商店街入り口などなど。賑わっていた町の様子が伺えた。そこには、戦時下とはいえ、今の私と変わらない生活をしていた。それぞれの喜怒哀楽があり、さまざまな夢や希望があった。
、、、
今年も黙祷をしようと思う。
ここまで読んでくださりありがとうございました。