017話:革を自分で作ってみるということ
紳士靴好きであることは、革好き。
この傾向に自分も洩れずに、いろいろな革を集める中、自作をしてみることになりました。一つやったのはアウトソールの自作。
目指したのは、よくタンニンの鞣し成分が充填され、繊維がギュッと詰まったソール革。繊維が詰まっているとその分、力がスムーズに伝達されなおかつ磨耗しにくい特徴がでます。
2010年当時に試してみたのは、アウトソールの革に再なめし処理をほどこすことでソールをさらに強靭にしました。当時やった工程はこんな感じ。
1:再なめし処理(写真左側)
(1)渋柿の醗酵液を使用
なめし液にある程度タンニン成分をもたせるのが目的
(2)杉木の樹皮を煮出した液を煮詰めたものを混ぜる。樹皮はそのまま
日がたつにつれ、タンニン成分が液に溶け出します
これをいくつかの濃度に分け、日が経つごとに、タンニン成分を濃くしていきました。タンニンは、うすいと奥まで浸透し、濃いと表面のみに作用する
性質があります。杉樹皮をなめし槽につめることで、すこしずつ
タンニン濃度を増幅し、ソールの奥はゆるやかに、表面は強力にタンニン作用させようという試み。
2:乾燥工程1
オイルを塗りこみ、完全な硬化を防ぎます
3:鍛造工程
半乾きのときに、強力な力でプレスして革の繊維を凝縮させます。
これにより、薄く・強靭なソールになります。
4:熱乾燥工程
鍛えたソールに熱風をあて、熱収縮を革に起こします。
そのことで、ソールの鍛造された繊維が定着します
5:自然乾燥
完成(写真右側)
で、結果なのですが。柔らかく強靭なソールができました。。
左が加工前の状態(つまり、革靴に普段使用されるソール)
右が加工後
覚えておいてほしいこと:
ただ。。こんな手間を否定してしまうようですが、今となって感じた事は、いくら良い部材を使っても、足に合った靴でなければ全てが無駄ということ。
自分の足に完全にフィットした靴は、安いアウトソール革を使っても、英国ビスポークメーカーが使う最高級のアウトソール革の2倍近く持ちました。
つまりは、そういうこと。部材や革について探す前に、自分の足と靴との関係を見直すことが、なにより大切だと思います。
あと、革についての知識は本を読むより、自分で作って試すほうがよくわかるし楽しい。。。これはこれでワクワクできる世界。そんなにコストもかからないしオススメです。