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Caro-Kann Defense: Advance, Tal Variation Qxd4の変化について

カロカンディフェンスの以前の記事で、Tal Variationに対する強敵として、単に黒がQxd4とポーンを取ってくる変化を研究しました。

Qxd4は絶妙手の評価。Tal Variationに対する有力策。

これは手強い変化だな、と感じた読者の方もいるかもしれません。
「もし、Qxd4と取ってきたらどのように対処すればよいのだろう?」「Qxd4と黒が踏み込んできた実戦例を見てみたい」

そこで今回、初めて実戦で黒がQxd4と踏み込んできたので紹介します。
参考にしてみてください。


実戦紹介:対局背景と局面図

今回もChess.comラピッド戦からの取材で、私が白番です。相手の方のレートは2000点台です。初手から手順を紹介します。

1.e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. h4 h5 5. Bg5 Qb6 6. Bd3 Qxd4

再掲。Qxd4まで。ずっと対戦を待ち望んでいた局面。

最近はカロカンディフェンスとの対戦が少ないうえに、Caro-Kann Defense: Advance, Botvinnik-Carls Defenseの形に進むことが多いです。

久しぶりのTal Variation、しかも初めての Qxd4の変化に突入。楽しみすぎてモチベーションが爆上がりしました。
7. Nf3 Qg4

g2ポーンの処理をどうするか。白にとって早くも悩ましい局面。

Nf3のところでBxf5と取るのは、Qxe5+とされてポーンを回収されながらチェックをされて、その後にビショップを取られるので成立しません。

変化図。要のポーンを回収されてビショップも取られる。黒良し。

そこでNf3を選択したのですが、Qg4と指された局面は白にとって悩ましいです。
研究での結論は、Qg4と指された局面で白に有力な手が2つとあると考えていました。

再掲。Qg4まで。
  1. Bxf5

  2. O-O

Chess.comのデータベースを調べたところ、マスター間では1.Bxf5が多く指されていて、白がわずかに勝ち越していました。2.O-Oは少数派で、黒が大幅に勝ち越しています。

しかし、いざ実戦で盤面を目の前にしてみると、Bxf5を保留するのも含みがあって有力そうに感じてきました。

ここが研究と実戦の違いで、心理面やそのときによって感じ方も変わってくるので面白いところです。

1.Bxf5と2.O-Oを比較検討して、今回は2.O-Oを採用することにしました。

8.O-O e6 2 9. Nc3

自然に見えるNc3が中悪手判定。これが中悪手とは厳しい。

Nc3は中央に活用しながらa1ルークの利きを通した手ですが、あまり良くなかったようです。
Nc3に変えてBxf5をエンジンは推奨していましたが、Bxf5を保留する組み立てなので考えませんでした。
9. …Be7

ビショップ交換を迫る。本局の急所の局面。

黒は白の急所の黒マスビショップとの交換を狙ってきました。ここで、白に重大なポジショナルエラーが出てしまいました。
10. Bxe7??

悪手。黒のお手伝い。黒がリードを奪った。

ビショップを白から交換したのが悪手で、黒の模様が良くなりました。

黒は手順にナイトを活用できることが大きいです。時間も少なくなっており、局面を改善したいという焦りが悪手につながりました。

Bxe7に変えて、Qd2と力をためておくのが最善だったようです。

変化図。g5を厚くしながらルークを連結させる構想。

10.Nxe7 11. Re1 Nd7 12. Be2 Qg6 Nd4??

ブランダー。e5ポーンが落ちてしまった。

Nd4はe5のポーンが落ちるのをうっかりした悪手。ç2のポーンを守ることばかり考えていて、局面を広く見ることができませんでした。

ここでは持ち時間にも大差がついており、相手の方が実力、経験値共に上でした。
13... Nxe5 14.Nxf5 Nxf5 15. Bxh5 Rxh5 16. Rxe5

玉砕。最後までチャンスは訪れなかった。

ここで黒にきれいな決め手があります。
Nxh4 0-1

美しい決め手。白はa1ルークとナイトが取り残されたまま終局。

ルークの利きを通しながら、次にQg2+のチェックメイトを狙っています。白は受けがありません。ここで白はリザインしました。

10手目のBxe7からはずっと形勢が悪く、チェスの難しさと厳しさを痛感しました。

第3の選択肢

再掲。ここで第3のアイデアがあった。

対局終了後、チェス動画投稿で活躍されているものぽ氏の動画で再度勉強していたところ、新しい発見がありました。3年前に視聴者の方がコメントを残してくれていて、ここでBe2!というアイデアがあるとのことでした。

gポーンを守らない驚きの構想。

データベースで検索してもヒットしません。隠れた有力手のようです。

chess.comより引用。Be2のアイデアはデータベース上に見当たらなかった。

盤に並べてさっそく研究してみたのですが、個人的には本譜よりも白に希望がありそうに感じました。次回の対局で採用してみます。

今回の対局で敗れはしましたが、チェスのモチベーションという意味では自分にとって大きかったです。

やはり未知の局面を考えるのはワクワクして楽しいですね。ますますチェスが大好きになりました。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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