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Nd7が命取り!e6ブレイクでCaro-Kann崩壊【Advance, Tal Variation対h6型】」
今回は Caro-Kann Defense: Advance, Tal Variation対h6型の対局を紹介します。
このオープニングは攻撃的な変化で、h4からの速攻が特徴的です。今回は、黒の6手目が悪手で形勢を損ねる原因となりました。
その場面を中心に対局を振り返っていきましょう。
序盤:Caro-Kann Tal Variationの攻めが炸裂
1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 Bf5 4.h4
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いつもどおり、Caro-KannのTal Variationを採用。白はh4でスペースを広げながら、黒のビショップに圧力をかけます。
前回の記事では黒のビショップがトラップされてしまいましたが、今回は…h6とビショップの可動域を広げます。
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個人的には黒のh6が最も手強いと感じていて、lichessのマスターデータベースでも黒がほぼ互角の戦績を残しています。
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5.Bd3 Bxd3 6.Qxd3
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白はビショップを交換する穏やかな形を選択しました。黒のh6に対してはg4が最も多く指されていて勝率も高いです。
しかし、自分で実際に試してみたところ、バランスを取るのが難しく指しこなすことができませんでした。
そのため、今はBd3の形を採用しています。実際に実戦で試してみて、自分のスタイルにあっている型を使ってみましょう。
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本譜はこの後ゆっくりした展開になるかと思われましたが、黒の次の手が敗着となりました。
…Nd7??
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黒は落ち着いて駒組みを進めていましたが、形で指したNd7が大悪手でした。そして、ここから白のe6突破作戦が発動します。
中盤:e6ブレイクでキングを引きずり出すことに成功
7.e6!
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白のe6のポーンブレイクが急所中の急所です。一見、このポーンはただのようですが、黒はこのポーンを取ることができません。
仮にfxe6??とポーンを取ると、Qg6+でいきなりチェックメイトになります。
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…Ndf6 8.exf7+ Kxf7
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白のポーンが一気に前進し、黒のキングを引っ張り出す形に成功しました。黒はキングが露出してまとめにくい形になっています。
9.Nf3 e6 10.Ne5+ Ke8
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黒はどうにかして逃げようとしますが、白の攻撃の手が止まりません。白が勝勢になりました。
終盤:クイーンとナイトの連携でチェックメイト
11.Qg6+ Ke7 12.Qf7+ Kd6 13.Bf4
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Bf5は悪手でした。エンジンによるとNc4+から白の猛攻が決まっていたようです。しかし、白のリードが大きく形勢に影響がなかったのは幸いでした。
13... c5 14.Qxb7 Nh5 15.Nf7+1-0
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Nd7以降は黒にチャンスらしいチャンスがなく、終局を迎えました。
最後に
黒のNd6では…e6が正着で、これなら白の攻撃を防ぐことができました。
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黒がe6と指すことで得られる利点は次の3つです。
白のe6ブレイクを防いでいる
黒マスビショップの利きを広げている
ポーンが美しく連携して強い形になっている。
序盤はなんとなく形で指す(Nd7)のではなく、狙いをもって指す(e6)のが大事ですね。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。