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この一手に全てを賭けた夜:花金チェスブリッツ自戦記

2年前にChess.comに登録してから、ほぼ毎月参加している花金ブリッツ。普段、なかなか日本人の方と対局できる機会がないので貴重な時間です。
また、展開次第で自分よりも高レート帯の方と対局できることも魅力です。

ただ、参加人数はやや減少傾向になっており、今回スタートリストは16人でした。しかし、そのような状況でも国内トップ選手のN氏の毎回の参戦は、参加者の励みになっているのではないでしょうか。

今回はT氏との対局を振り返ります。

VS T氏 (私が黒番)

T氏とは花金ブリッツで頻繁に対戦しており、今回が4局目!です。過去は私が全て白番で、戦型も全てオープンシシリアンのナイドルフでした。T氏のパワフルなチェスに過去は3回とも敗れており、今回初勝利を目指します。

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6

ナイドルフを選択。

ちょっと横道にそれますが、花金ブリッツでシシリアンを指すのはわりと珍しいです。というのも、花金ブリッツに参加している日本のプレイヤーは圧倒的にd4が多いからです。今回もこの対局以外の黒番は、全てd4スタートでした。

以前はシシリアンドラゴンを多用していましたが、現在はナイドルフを主軸に据えています。
6. f3 Nc6

ややマイナーなライン。

Nc6ではe5もしくはe6が多く指されていますが、Nc6でも十分戦えると判断しました。
7.Be3 e6 8. Qd2 Be7 9.O-O-O

白はロングキャスリングを選択。

白はキャスリングをして猛攻の準備完了です。黒もキャスリングをしたいのですが、hポーン、gポーンがどんどん伸びてきそうなので判断が悩ましいです。

本譜はキャスリングを保留して、攻め味を見せることにしました。
9. …Nxd4 10. Bxd4 b5 11. g4 e5 12.Be3

ぎりぎりまでキャスリングを保留。

bポーンを伸ばして反撃の味を見せますが、白のgポーンも迫ってきており、忙しくなってきました。ここで次の手がやや疑問でした。
12…Be6?
ビショップの活用の前にすぐb4と突いてプレッシャーをかける方が良かったようです。この手を境に形勢が徐々に白に傾いていきました。
13.Nd5 Rc8 14. Kb1 O-O

キャスリングが悪手になった典型例。

ぎりぎりまで保留していたキャスリングをついに発動させましたが、キング自ら危険地帯にダイビングした悪手。キャスリングをせずに中央で戦うと腹をくくってNxd5としておけば互角を維持できたようです。持ち時間も私の方が少なく、はっきり形勢が悪くなりました。

ただ、持ち時間が少ないのはお互い様ですし、過去に3連敗しているので簡単にあきらめるわけにはいきません。大事なのは、悪くなったときに形勢をさらに悪化させずに粘ることです。サッカーで言えば、先に1点を取られても2点目を与えずに耐える力という感じでしょうか。

こちらとしては、とにかく分かりやすい決め手を与えないように粘りにいきます。
15.h4 Bxd5 16.exd5Qc7 17.h5 e4 18. g5 Nd7 19. f4 Nc5 20.f5

悶絶のポーンストーム。キャスリングをはっきりとがめられた。

「大事なのは、悪くなったときに形勢をさらに悪化させずに粘ることです。サッカーで言えば、先に1点を取られても2点目を与えずに耐える力という感じでしょうか。

こちらとしては、とにかく分かりやすい決め手を与えないように粘りにいきます。」と言っておきながら、連続失点やミスが重なって先ほどよりも形勢は更に悪化orz 言うは易く行うは難し、敗色濃厚になってきました。
20…Na4

キング周りに駒を配置してプレッシャーをかける。

キング周りにプレッシャーを受け続けていた白は、それほど形勢が良いとは思っていなかったのかもしれません。ここで大きな疑問手が出ました。
21.Bd4??
gポーンの利きを減らす大悪手で、ついに黒にチャンスが来ました。Bd4ではh6と突いてポーンの大群で押し潰す順が勝ったようです。
21. f6??

弱気。同点にするチャンスをふいに。

f6が弱気で、ここではBxg5!とポーンを払えば互角でした。白もç2の地点が弱いのでこれなら難しかったでしょう。

変化図。眠っていたビショップが大躍進。形勢互角。

22.gxf6 Bxf6 23. Bxf6 Rxf6 24.Bh3 

局面はほぼ互角だが時間切迫。

お互いもう残り時間がほとんどなく、直感の勝負になっています。形勢は互角になったように感じていました。
24. e3 25. Qe2?

悪手。最後の最後に黒にチャンス到来。

最後の最後に黒にタクティクスが出現しました。
25…Qc3!!

クイーン一閃!女王の舞。

次にQxb2までのチェックメイトがあるので取るしかありませんが、ナイトフォークがかかります。

ナイトフォークさく裂。ただし形勢は微差。

もともと読み切れていたわけではなく、正直なところ偶然タクティクスが落ちていた感じです。しかし、相手の方も時間切迫で対応が難しいと思ったため、決行しました。実戦はここで時間が切れて勝ちとなりました。

最近、タクティクスに関する記事を書きましたが、やはり毎日少しずつタクティクス問題は続けた方が良さそうです。

少し長い記事になりました。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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