『旧市町村日誌』14岩手県の旅 文・写真 仁科勝介(かつお)
7/16(日)雨
世間は三連休の真ん中、各地で暑そうな時間を感じるけれど、ここでは雨だ。雨ということで、休んでいる。とはいえ出費はかかる。お昼ご飯880円、カフェ代600円、晩御飯900円、宿泊代3300円。何も移動しなくても、生きることにはお金がかかるのです。
7/17(月)雲多め、雨もしくは晴れ
外から情報を得ていると、「夏すぎる」という言葉と真っ青な空の写真や、キラキラとした光を浴びる室内、海辺、いろいろな写真を見る。
一方、岩手県の内陸部は分厚い雲が居座っていて、たまに青空が顔を覗かせてくれたらラッキー、という感じ。
ようやく、散策を終えた北上市で、にわか雨に降られたあと、強烈な西日が届いた。と思ったら、おおきな虹が音を奏でるように颯爽と現れた。
しかし、思いのほか早く日陰になった途端、導火線に点けられた火が紐を焼くようなスピードで、あっという間に虹が消えていくのだった。その間は30秒ほどではないだろうか。通り過ぎた自転車のお兄さんは、その前後に何も気づいていまい。虹が生き物に見えた。そのあともう一度日差しが差し込んで、やはり一瞬虹が掛かった。それが最後。
7/19(水)一日雨
メールの相手から、「暑さには気をつけてください」と何度か言われたけれど、ほんとうに暑いのだろうなあと思う。岩手は、と言っても北上市近辺は、二日連続で雨が降り続けて、暑さは感じない。「岩手」と「北上」も違う。特に昨日は、盛岡ではほとんど雨が降らず、北上や花巻ばかりに雨雲が当たっていたから。「東北」でも「岩手」でも、くくれないのだ。
雨ニモマケズと行きたいところだが、今日も休ませてもらった。明日、雨は止みそうだが、いよいよ暑いのだろうか。夏場でも防具をつけていて一年中長袖なので、実際の夏場ではサウナに入っているように汗をかく。汗臭いので、人とすれ違うのも恥ずかしい。
7/21(金)曇りのち晴れ
昨日、天気が大丈夫だろうと思っていたら、雨、雨、雨。堂々たる土砂降りであった。そして、今日は盛岡から電車で一関市の千厩へ向かった。今までカブで通ってきたルートを、電車の車窓からゆっくり眺めた。それもまたいい時間である。
千厩駅に降りると、ヒグラシが鳴いていた。その後珈琲店のウタさんに行って、美味しいコーヒーをいただく。いろんなお客さんが入れ替わりでやってきて、場が生み出す時間を感じた。
今日はそのウタのマスターのご実家に泊めさせてもらった。お風呂の湯船に浸からせてもらったとき、また、ヒグラシの声が大きくなった。落ち着いていると、聞こえてくる鳴き声だ。
仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。