親知らずに親を殺された男

朝起きると、なんだか妙な違和感が。
なんかよくわからないけど、顔周辺の間隔が、昨日眠りについた時となんだかちがう。

その違和感の正体はご飯を食べてるときに発覚した。

親知らずだ。
親知らずが成長して、対面の歯茎に突き刺さっているのだ。

なにを隠そう、私は寝てるときに歯ぎしりをしてしまうクセがある。
中学の修学旅行で友達に指摘されて以来、地味にコンプレックスになっている。

寝て起きた時の違和感は、歯ぎしりと親知らずのコンビネーションの賜物だったのだ。

それで、おなかがすきまくっていた私は、筋肉が分解されないうちに急いで昨日炊いたご飯を食べようとした。

お茶碗にコメをよそり、コメを口に運び、いざ噛む瞬間に、歯茎に、親知らずが、突き刺さった!

別にがまんできないほどの痛みではない。
が、咀嚼をするたびにじわじわとボディブローをかまされて、だんだん私の歯茎は疲弊していった。

ついには、お茶碗にコメが残っているのにも関わらず、箸を置いてしまった。まだ空腹状態は脱していない。このままではカタボリックが進行して、せっかく増やした体重が逆戻りしてしまう。
なんとか、食べなければ・・・!

そんな意思に反して歯茎は悲鳴をあげ、ついに口内にタオルが投げ込まれ、私の朝ご飯人生は幕を閉じた・・・。

昼ご飯と夜ご飯も同様に、空腹なのにも関わらず、箸が進まず時計の針だけが進み、講義やバイトに向かわないといけない時間になった。

そして、バイト終わりの今。
歯茎のコンディションは今日一で悪い。
こんな状況ではまともに食事がとれない。
日課のリングフィットも、食事なしでやってしまうと、むしろ逆効果なので、できない。
おなかがすきすぎて夜も眠れない・・・!

おのれ、親知らずめ!
今度、歯医者さんに行って根っこから引っこ抜いて根絶やしにしてやる!
一匹残らず・・・!

親知らずに親を殺されたかのごとく、親知らずを憎む男の物語はまだまだつづく・・・


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