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怪談:20 おまじないの人形

その昔。オカルトやスピリチュアルに興味のない知人が、幸運のおまじない人形の写真をSNSにあげているのを見つけました。

そもそも優等生であった彼女。精神的なことに一切興味はなく、学生時代は教師からの信頼も厚く、社会に出てからは地域の役員をするなど、与えられた仕事を律儀にこなしているような人でした。

また、子育てなど一切の苦にならない・子供を邪険にする人のことは理解しかねると言い、いわゆる潔癖なところも持っていました。

しかしそんな彼女が、ある時からしきりに離婚をしたいと言うようになったのです。

理由は、長年結婚をしていたら誰もがぶつかるような悩み。ご家族は宥めつつも、離婚は考え直すように伝えていたそうです。

そんな状況の中、人形の写真を見た私は違和感を感じたのです。人間の心情として、人生の岐路に立てばいろいろなものに縋りたくなる気持ちが出るというのは分かります。

しかし、世間の枠からはみ出ない・良妻賢母であることを自慢にしていた彼女が、人形に供物としてタバコを捧げていることが不思議に映ったのです。本人とマッチしていなかったんですね。

しばらくして、彼女は離婚をしました。

離婚が成立する少し前から、人が変わってしまったように恋愛を夢見るようになり、子供がいるでしょう・そのために離婚をするのではないでしょうと注意しても聞き入れることはなく。段々と親身になっていた周囲とも疎遠に。

私も、連絡を取り合うことはなくなりました。

それから数年後…彼女が再婚したことを人伝に知りました。子供にも恵まれ一軒家を持ち、絵に描いたような幸せな最初の結婚生活を捨てた末に再婚したのは、子供に暴力を振るう男性でした。

彼女はそれを黙認。詳細は伏せますが、しまいにはお沙汰へと。再び離婚し、今はひっそりと生活しているそうです。


彼女は、あのおまじない人形を、なぜ・どこから…誰から手に入れたのか。そして、何を望んだのか。

30を過ぎた人間が選んだこと。全ては大人の選択の結果でしかありません。

見知った彼女の真面目さも、環境が作っていたもので、恋多き女性というのが本来の姿だったのかもしれません。

でも、時々あの人形のことを思い出します。

もしあの人形が、離婚して幸せな再婚をすることを望む彼女の願いを叶えたのだとしたら。もしあの人形に、彼女が恋愛がしたいと願いをかけていたのだとしたら。

何を願い、何に願うか。叶った願いによって何が起こるのか。

幸運のおまじないをかける人形の類は、どこででも気軽に手に入るからこそ、そこまで深く考えずに望みを伝えてしまうことがあると思います。オカルトの知識がなければ尚更に。

だからこそ、世の中には、タイミングにより不思議なことが起こりうる・叶わなくていい願いもある…ということを知り、実行する前に考え直してみることが大切なのではないでしょうか…と、ここに書き記しておきたいと思います。

足を踏み外したことがない人生を、面白味がないという人がいます。けれど、面白味がないと感じるだけで、価値がないわけではありません。

簡単に手に入らない平凡を。真面目さを。決して手放すことがないように。自分で貶めることがないように。

人生を大切にしてください。というメッセージとして、この怪談を置いていきます。


当方の怪談は、実話であるが故に年代・性別・状況など詳細な部分を変えてお届けすることがございます。今回のような記事は、人生を大切にするキッカケとしてお読みください。








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